我が家のルーフガーデンに1本の金木犀の鉢植えがある。運動会の頃になると必ず花を咲かせ、甘い匂いが漂ってくる。私はこの香りを嗅ぐといよいよ運動会だという思いが強い。この頃では9月半ば過ぎから運動会が始まるが、私の子どもの頃は10月10日前後が多かったのではないかと思う。
我が家の金木犀には思い出がある。私が始めて高校の教員になったのは22歳、この時1年生だった彼は15歳だ。彼は留年し、翌年私は彼の担任となった。1つ年上だからみんなと馴染めないかなと心配したけれど、同級生ともそして2年生の連中ともこだわりなく付き合っていたように思う。もちろんナイーブな男だったから、心の中ではいろいろあったかもしれない。
私は学校の近くに部屋を借りて住んでいたが、彼はいつの間にか私の部屋に入り浸るようになっていた。私がいなくてもひとりで上がりこんで、本棚から好きな本を取り出して読んでいた。大江健三郎を好んでいたように思う。私も彼から教えてもらうことが多かった。彼の部屋にあったマンガ本で、私の知らなかった2・26事件の歴史を知ったし、米軍基地の問題も知った。ビートルズの次の音楽はこれだと言う彼の勧めで、原子音楽の「ピンクフロイド」を初めて知った。
私が結婚してからは、新居の公団住宅へよく遊びに来た。忘れられない出来事もある。公団のトイレは洋式で、男は蓋だけでなく便座も上げて小便をするのだが、まだそんな便所がなかった頃だったので、彼は蓋だけ上げて用をした。当然うまく出来なくて恐縮していた。説明しなかった私がいけなかったのに、彼に恥をかかせることになった。
彼は念願の会社に就職し、結婚式では仲人をさせてもらった。静岡の御殿場に赴任となり、私が毎年夏に家族を連れて富士山周辺に行っていたので、彼はぜひ泊まりに来いといってくれた。我が家では次女が生まれて1歳になったばかりだったと思う。彼の住居は会社の社宅で、3Kのかなり狭いアパートだった。丁度夏祭りの最中で、植木市もあり、そこで2本の金木犀を買った。
金木犀は私の小学校にもたくさん植えられていたし、私が住んでいる「市の木」にもなっている。花の香りは私に昔を思い出させてくれるから、ぜひ庭に植えておきたいと思っていた。買ってきたうちの1本はカミさんの実家の庭に植えた。我が家の鉢植えと違って、結構大きくなったが家を建て替えた時に抜き取られた。
我が家の金木犀はやせて弱々しいけれど、今年も花を咲かせている。私と兄弟のように行き来してくれた彼は今一人暮らしだ。身体もよくないようで心配だけれど、何かをしてあげられるわけではないから余計に気が重い。
我が家の金木犀には思い出がある。私が始めて高校の教員になったのは22歳、この時1年生だった彼は15歳だ。彼は留年し、翌年私は彼の担任となった。1つ年上だからみんなと馴染めないかなと心配したけれど、同級生ともそして2年生の連中ともこだわりなく付き合っていたように思う。もちろんナイーブな男だったから、心の中ではいろいろあったかもしれない。
私は学校の近くに部屋を借りて住んでいたが、彼はいつの間にか私の部屋に入り浸るようになっていた。私がいなくてもひとりで上がりこんで、本棚から好きな本を取り出して読んでいた。大江健三郎を好んでいたように思う。私も彼から教えてもらうことが多かった。彼の部屋にあったマンガ本で、私の知らなかった2・26事件の歴史を知ったし、米軍基地の問題も知った。ビートルズの次の音楽はこれだと言う彼の勧めで、原子音楽の「ピンクフロイド」を初めて知った。
私が結婚してからは、新居の公団住宅へよく遊びに来た。忘れられない出来事もある。公団のトイレは洋式で、男は蓋だけでなく便座も上げて小便をするのだが、まだそんな便所がなかった頃だったので、彼は蓋だけ上げて用をした。当然うまく出来なくて恐縮していた。説明しなかった私がいけなかったのに、彼に恥をかかせることになった。
彼は念願の会社に就職し、結婚式では仲人をさせてもらった。静岡の御殿場に赴任となり、私が毎年夏に家族を連れて富士山周辺に行っていたので、彼はぜひ泊まりに来いといってくれた。我が家では次女が生まれて1歳になったばかりだったと思う。彼の住居は会社の社宅で、3Kのかなり狭いアパートだった。丁度夏祭りの最中で、植木市もあり、そこで2本の金木犀を買った。
金木犀は私の小学校にもたくさん植えられていたし、私が住んでいる「市の木」にもなっている。花の香りは私に昔を思い出させてくれるから、ぜひ庭に植えておきたいと思っていた。買ってきたうちの1本はカミさんの実家の庭に植えた。我が家の鉢植えと違って、結構大きくなったが家を建て替えた時に抜き取られた。
我が家の金木犀はやせて弱々しいけれど、今年も花を咲かせている。私と兄弟のように行き来してくれた彼は今一人暮らしだ。身体もよくないようで心配だけれど、何かをしてあげられるわけではないから余計に気が重い。