午後2時10分くらいだった。何かがきしむ音がして家具が揺れた。地震だ。強くなるのか、収まるのか、待った。3秒くらいのように思ったが、実際はもう少し長かったのかも知れない。テレビを点けると鳥取県中部を震源地とする地震だった。鳥取で起きた地震で遠い愛知まで揺れるのか。時間も同じ昼間だった3・11東北大地震を思い出す。
「もうジジババだから、会っても分からないわよ」と言われたが、実際分からなかった。1つの高校に新任が7人というのは珍しいことだろうが、伝統のある職員数100人近いマンモス校だったからだろう。50年前に新任だった7人が揃って再会できるのも奇跡に近い。確かに50年前に比べれば年老いたから体形が随分変わった人もいる。待ち合わせ場所でウロウロしていると何となく気になる人がいる。ひとり、ふたりと集まって来て、ああ、やっぱりそうかと思い出せた。
予約してある居酒屋へ行く。スタスタと歩ける人もいるが、歩幅が狭く遅い人もいる。席に着いてまずカンパイ。それから途切れることなく思い出話に花が咲く。なんだ、全然変わっていないじゃーないか。大人しく、無口な人は相変わらず口数が少ないし、声の大きい男は今も大声で話す。7人の中で一番ハムサムで運動もできて、すぐに女性が好きになってしまう男は「絶対深入りしない」と決めてやって来たと言う。いくつかのロマンスがあってもよさそうなのに、「好きだ、好きだ」と言うだけで何もしない男だったが、そういうことだったのかと納得する。
一番大きく変わったのは大声の男で、カミさんをガンで亡くし、90キロ近くあった体重が60キロ代にまで落ちた。ショックから立ち直るために心理学を勉強し、資格も取得し、今では若者たちのカウンセラーをしている。顔つきも穏やかで優しい。「奥さんを亡くされたのか」と誰かが言えば、「若くて可愛いカミさんをもらった」とのろける。生き生きしているのはそのせいだったのか。「結婚は何度やってもいいものよ」と再婚したもうひとりが煽る。あっという間に4時間近く過ぎた。みんなちゃんと帰ったのだろうか。