中国が、北京オリンピックに引き続き、国家の威信をかけて「改革開放三十余年の成功を示す」(胡錦濤国家主席)政治イベント、上海万博が開幕しました。参加国・地域・国際機関は246にのぼり、来場者は半年間で7千万人と予想されるなど、万博史上最大規模を誇ります。
思い起こせば40年前、大阪万博が開かれた1970年の2年前に、日本はGDPでドイツを抜いて世界第二位に躍り出ました。そんな優越感のカケラもなく、ただ、世界の国からこんにちは・・・と、世界中から人々を招待できる緊張感と晴れがましさに日本中が沸いていたことを思い出します。当時、大阪に住んでいた私は、半年間の会期中に会場を4度訪れ、アメリカ館の名物「月の石」も確かに見ましたが、宇宙は遠過ぎたのか、宇宙への夢よりも、「すばらしい世界旅行」という30分番組と相俟って、アジアやアフリカといった異国への夢を大いにかきたてられたものでした。外国料理のレストランが街にお目見えし始めたのもこの頃からでした。
同じように中国は今年、GDPで日本を抜いて世界第二位に躍り出ようとしています。まさに時代の流れを感じさせます。しかし当時とは違う時代相あるいは国民性を、始まる前から数々の話題の形で提供してくれました。PR曲のメロディーが、岡本真夜さんのヒット曲「そのままの君でいて」にそっくりだと指摘されたのをはじめ、公式マスコット「海宝」のデザインも、1950年代にアメリカで発売されたキャラクター「ガンビー」に似ていると指摘され、更に国家パビリオン「中国館」の外観デザインも、1992年のセビリア万博の「日本館」など、安藤忠雄さんが手がけた作品に似ていると指摘されました。またか・・・と呆れた方も多かったことでしょう。
この「中国館」設計者の反論が振るっています。「中国館のスタイルは建築デザインの世界で広く使われているもの。安藤氏が創造したものではない。」 別の設計士に至っては「ともに伝統的な中国の建築技法から影響を受けている。盗作というのならば、最初にコピーしたのは日本の方だ。」などと、悪いのは安藤氏と言わんばかりの強弁です。面子を守りたい一心か、はたまた中華思想の根本にそうした奢りが潜んでいるのか、いずれにしてもこうした論評が平気でマスコミに出てしまうところが、相変わらず想像を絶する異形と言えます。
また、アフリカの43の国と国際機関が共同出展するアフリカ館において販売される各国の名産品は、デザインはアフリカながら、製造はすべて中国なのだと言います。世界の工場、おそるべし。しかし・・・
中国では「蟻族」という若者が、大都市郊外の農村部に溢れていることが、しばしば話題になります。かつて日本でも、大学は出たけれど、と言われた時代がありましたが、それは不景気な年のことでした。中国では、2000年以降、大学進学枠が増えて大学進学者が増えた割りに、ホワイトカラーの職が増えず、低賃金やアルバイトに身をやつす大卒の若者が増えていることが社会問題化しています。中国という国が、工場労働者のブルーカラーの国から抜け出ていない証と見る向きもあります。一方で自信喪失の日本が出展する日本館は、中国の若者にはハイテクを見たいと人気があるようです。良くも悪くも、今の中国の諸相を映し出して興味深いイベントです。
さて中国の若者は、万博を見ながら、どんな夢をかきたてられているでしょうか。
思い起こせば40年前、大阪万博が開かれた1970年の2年前に、日本はGDPでドイツを抜いて世界第二位に躍り出ました。そんな優越感のカケラもなく、ただ、世界の国からこんにちは・・・と、世界中から人々を招待できる緊張感と晴れがましさに日本中が沸いていたことを思い出します。当時、大阪に住んでいた私は、半年間の会期中に会場を4度訪れ、アメリカ館の名物「月の石」も確かに見ましたが、宇宙は遠過ぎたのか、宇宙への夢よりも、「すばらしい世界旅行」という30分番組と相俟って、アジアやアフリカといった異国への夢を大いにかきたてられたものでした。外国料理のレストランが街にお目見えし始めたのもこの頃からでした。
同じように中国は今年、GDPで日本を抜いて世界第二位に躍り出ようとしています。まさに時代の流れを感じさせます。しかし当時とは違う時代相あるいは国民性を、始まる前から数々の話題の形で提供してくれました。PR曲のメロディーが、岡本真夜さんのヒット曲「そのままの君でいて」にそっくりだと指摘されたのをはじめ、公式マスコット「海宝」のデザインも、1950年代にアメリカで発売されたキャラクター「ガンビー」に似ていると指摘され、更に国家パビリオン「中国館」の外観デザインも、1992年のセビリア万博の「日本館」など、安藤忠雄さんが手がけた作品に似ていると指摘されました。またか・・・と呆れた方も多かったことでしょう。
この「中国館」設計者の反論が振るっています。「中国館のスタイルは建築デザインの世界で広く使われているもの。安藤氏が創造したものではない。」 別の設計士に至っては「ともに伝統的な中国の建築技法から影響を受けている。盗作というのならば、最初にコピーしたのは日本の方だ。」などと、悪いのは安藤氏と言わんばかりの強弁です。面子を守りたい一心か、はたまた中華思想の根本にそうした奢りが潜んでいるのか、いずれにしてもこうした論評が平気でマスコミに出てしまうところが、相変わらず想像を絶する異形と言えます。
また、アフリカの43の国と国際機関が共同出展するアフリカ館において販売される各国の名産品は、デザインはアフリカながら、製造はすべて中国なのだと言います。世界の工場、おそるべし。しかし・・・
中国では「蟻族」という若者が、大都市郊外の農村部に溢れていることが、しばしば話題になります。かつて日本でも、大学は出たけれど、と言われた時代がありましたが、それは不景気な年のことでした。中国では、2000年以降、大学進学枠が増えて大学進学者が増えた割りに、ホワイトカラーの職が増えず、低賃金やアルバイトに身をやつす大卒の若者が増えていることが社会問題化しています。中国という国が、工場労働者のブルーカラーの国から抜け出ていない証と見る向きもあります。一方で自信喪失の日本が出展する日本館は、中国の若者にはハイテクを見たいと人気があるようです。良くも悪くも、今の中国の諸相を映し出して興味深いイベントです。
さて中国の若者は、万博を見ながら、どんな夢をかきたてられているでしょうか。