風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

沖縄

2010-05-05 10:41:13 | 時事放談
 昨日、鳩山首相は就任後初めて沖縄を訪問されました。遅きに失していると誰もが思っていることでしょう。政府案の詳細は明かされませんでしたが、衆議院選前に「最低でも県外」と大見得を切ったにも関わらず、「全てを県外にということは現実的に難しい」と、お詫びの行脚で、何をいまさらと誰もが思っていることでしょう。地元の人からは、アメリカに対して、住民と対話した体裁を整えて言い訳にしたいだけだと難じる厳しい声も挙がっています。
 圧巻とも言える鳩山さんらしさは、自らの認識不足を素直に曝け出したところでしょう。本当にこの方は素直過ぎますね(首相でなければ、人がいい、ちょっと変わったオヤジ、で愛されるでしょうに)。「(首相就任前は)海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった。学べば学ぶほど(海兵隊の各部隊が)連携し抑止力を維持していることが分かった」 まさかとは思いつつ、ここまで来たら正面突破するしかないだろうと思っていたら、期待通りの行動で、こぶしを振り上げる気にもなりません。首相就任前も、野党とは言えれっきとした政治家であったはずですが、一体、政治家としてどういう思いで「沖縄の人の思い」を口にしていたのか、やっぱりこの人の思いはただの思いつきなのかと、相変わらず常人には計り知れないものを感じます。
 もう一つ鳩山さんらしいと思ったのは、スーツ姿で沖縄入りしながら、仲井真県知事と会談する時には、シーサーの柄が入った黄色い「かりゆしウエア」に着替えて現れたところです。地元の服装に合せるのは、和やかな雰囲気を演出する、地元への友好の証と考えるのが常人の感覚で、今回のように地元に負担を求めるお詫び行脚では、スーツで通すだろうと思うのもまた常人の感覚です。ところがこの方ときたら・・・。黄色は「県内移設反対」の象徴であるとは知らなかったとしても、場の雰囲気への配慮のなさ加減、沖縄の人の思いに対する配慮のなさ加減もまた、常人には計り知れません。
 かれこれ二十年以上前に沖縄に遊びに行ったことがありますが、美しい海とともに、島を移動するバスの窓から、延々と基地が続くのを見せつけられ、それが島の三分の一をも占めると言われたのが、私にとって沖縄の原風景になっています。辻堂に住んでいた頃、厚木基地から発着する戦闘機の通り道になっていて、湾岸戦争の時に慌ただしく鳴り響く爆音はただごとではありませんでした。それが日常だとすれば、想像を絶します。沖縄は、私たち日本人が背負う業のようなもので、沖縄の人々の思い、などと軽々しく口にするべきではありませんでした(経済効果から基地を望む少数意見があることも含めて)。鳩山首相の発言の軽さは今更言うまでもありませんが、今回ばかりは、沖縄の人の気持ちをさんざん弄び、最後は踏みにじった、この軽さだけは罪ですらあり、政治家として致命的、良識あるオトナの発言として絶対に許されません。
 どうやら腹案などと大見得を切ったものの実態は、かつて自民党が検討した案の一つでしかなさそうです。沖縄・名護市辺野古の浅瀬にくい打ち桟橋方式で新たな滑走路を建設する案は、テロの危険性が高いためにアメリカ側から却下され、その工法が難しいため地元の建築業者では対応できず、地元に金が落ちないため、地元からも却下されて、自民党も諦めていたものです。鹿児島・徳之島にヘリコプター部隊の一部か訓練を移転させる案は、沖縄の海兵隊陸上部隊との距離が離れ過ぎているため、運用上、受け入れ難いと、これもまたアメリカ側から却下される可能性が高い。
 いよいよ追い詰められた鳩山さんの周辺からは、決着を先送りする案も浮上していると言いますが、鳩山さんのことですから、そこまで執着することはないでしょう。むしろ「公約とは、選挙での民主党の考え方。(「最低でも県外」は)党としての発言ではなく、私自身の党代表としての発言だ」と、党の公約ではないとの認識まで示したと言いますから、民主党政権を守るために、首相の座をあっさり投げ出すのではないでしょうか。またしても一年と続かないとなれば、民主党と言わず自民党と言わず、日本の政治が世界の恥さらしものになりかねませんが・・・これ以上の醜態を晒し続けるよりはマシでしょうね・・・。
コメント
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