前々回、そして前回の続きで、今回はいよいよ食の話です。
今回の出張では、シンガポールに三泊したので、シンガポール料理を堪能しました。実は私が入社した頃、当時の上司や先輩は、シンガポール料理が美味くないとさんざんこぼしていたもので、今から思うとそれはニョニャ料理(ニョニャは娘惹と書いて、海峡中国人の意、ニョニャ料理は中華料理の食材とマレー料理のスパイスとを掛け合わせたマレーシアやシンガポールに特有のローカル中華料理で、味にクセがあります)だったからではないかと思うのですが、今となっては究明する術はありません。しかし明らかに言えることは、その後、シンガポールの地位が向上するとともに、新たな移民がもたらした中華料理は、遥かに洗練されており、今では九大(Best Nine)チャイナタウンの一つに挙げられるほどの活況を呈しています(因みに、残りの8つは、横浜、ニューヨーク、サンフランシスコ、ホノルル、バンクーバー、ロンドン、シドニー、バンコクだそうで、私はこの内、ホノルルとバンクーバーのみ行ったことがありません)。
初日は現地駐在員とともに、オーソドックスな庶民的広東料理を食し、二日目は我が社のCFO殿もたまたまシンガポールに出張で来られていて、ペーパーチキンとやらをご一緒し、三日目は同行した上司と二人だけで中華街の奥深くに分け入って怪しげな湖南料理をトライしました(これは四川料理以上に辛くて翌朝苦労しました、毒を食らわば皿までの心境・・・)。
そもそもシンガポールを代表する中華料理は何かと聞かれると、答えるのはなかなか難しい。もともと福建省や広東省などの貧しい農村から出稼ぎに来た人が多かったので、私の知る限り、福建麺を使ったバリエーション料理や海南チキンライス(鶏飯、日本人がイメージするものとは違って、蒸し鶏がどてっとご飯の上に載っています)、またマレー料理をもとにした肉骨茶(バクテー)やシンガポール・ラクサ、そして先ほどのニョニャ料理を思い浮かべますが、いずれも庶民的な屋台(ホーカーセンター)料理であり、個室で食するようなオーソドックスな料理となると、土地柄、広東料理が一番人気でしょうが、今では四川や北京や上海など、何でもありと言えるのではないかと思います(が、このあたりの話になると私も自信がありません)。
そんな中、現地法人社長が連れて行ってくれたのは、ペーパーチキンのお店でした。かつてマレーシア駐在の間、何度かシンガポールで遊びましたが、全く知りませんでした。ペッパー・チキンではありません、タレに漬け込んだ鶏肉をペーパー(油紙)に包んで揚げたもので、その油紙を破いて鶏肉だけを食べます(当たり前ですね)。油紙に包んでいるので、肉汁も逃さず、なかなか美味ですが、そんなに驚くほどではありません。しかし、訪れたレストラン・ヒルマン(嘉臨門大飯店)は、「世界的に有名なフランス人シェフ、ポール・ボキューズ氏が、シンガポールを訪れた時に、この店のペーパーチキンを食べて『このペーパーチキンにミシュラン3ツ星を進呈したい』と評したことから、一気にシンガポール中に評判が広がり、有名店となったという逸話を持つ」(All Aboutの稲嶺さん)というのですから、驚きです。実際に、訪れた日も多くの日本人客で賑わっていました。
むしろ、私にとって嬉しかったのは、ローカル・フードの代表である肉骨茶(バクテーと発音します、福建語由来)の食べ比べが出来たことです。マレーシアでは、ベスト100が話題を呼ぶほど、それぞれのお店が個性ある味を競うもので、韓国のキムチに相当すると言ってもよいのでしょう。そして、マレーシアのそれは、ぶつ切りの豚あばら肉や内臓を、漢方薬に用いるスパイスと中国醤油で煮込むため、どす黒く濁って、見た目には味付けが濃いとつい思ってしまいがちですが、勿論コクはありますが、意外にあっさりしていて、ぶっかけご飯にするとご飯が進んでクセになる味です。他方、シンガポールでは、その国柄のユニバーサル性と相俟って、クリア・スープで、どちらかと言うと胡椒による味付けが中心で、万人受けする美味しさは、実は私には物足りないのですが、美味いことは間違いない。
そして最後に、今、マレーシアではラマダンの時期にあたり(ムスリムのヒジュラ暦の第9月、日の出から日の入りまで断食をします。今年は6月28日~7月27日)、日中、マレー人の生産性が落ちたりするわけですが(苦笑)、ホテルの朝食のバッフェでは、日没とともに食するクエと呼ばれるマレー菓子やスイーツが並んでいて、とても懐かしく思いました。毎日ならちょっとご勘弁・・・とも思いますが、やはり欧米と違ってアジアは私たち日本人には感覚が近く、なかなか飽きることはありません。
なお、上の写真は、現地法人のオフィス玄関にあった飾り付けです。Selamatは「おめでとう!」の意。
今回の出張では、シンガポールに三泊したので、シンガポール料理を堪能しました。実は私が入社した頃、当時の上司や先輩は、シンガポール料理が美味くないとさんざんこぼしていたもので、今から思うとそれはニョニャ料理(ニョニャは娘惹と書いて、海峡中国人の意、ニョニャ料理は中華料理の食材とマレー料理のスパイスとを掛け合わせたマレーシアやシンガポールに特有のローカル中華料理で、味にクセがあります)だったからではないかと思うのですが、今となっては究明する術はありません。しかし明らかに言えることは、その後、シンガポールの地位が向上するとともに、新たな移民がもたらした中華料理は、遥かに洗練されており、今では九大(Best Nine)チャイナタウンの一つに挙げられるほどの活況を呈しています(因みに、残りの8つは、横浜、ニューヨーク、サンフランシスコ、ホノルル、バンクーバー、ロンドン、シドニー、バンコクだそうで、私はこの内、ホノルルとバンクーバーのみ行ったことがありません)。
初日は現地駐在員とともに、オーソドックスな庶民的広東料理を食し、二日目は我が社のCFO殿もたまたまシンガポールに出張で来られていて、ペーパーチキンとやらをご一緒し、三日目は同行した上司と二人だけで中華街の奥深くに分け入って怪しげな湖南料理をトライしました(これは四川料理以上に辛くて翌朝苦労しました、毒を食らわば皿までの心境・・・)。
そもそもシンガポールを代表する中華料理は何かと聞かれると、答えるのはなかなか難しい。もともと福建省や広東省などの貧しい農村から出稼ぎに来た人が多かったので、私の知る限り、福建麺を使ったバリエーション料理や海南チキンライス(鶏飯、日本人がイメージするものとは違って、蒸し鶏がどてっとご飯の上に載っています)、またマレー料理をもとにした肉骨茶(バクテー)やシンガポール・ラクサ、そして先ほどのニョニャ料理を思い浮かべますが、いずれも庶民的な屋台(ホーカーセンター)料理であり、個室で食するようなオーソドックスな料理となると、土地柄、広東料理が一番人気でしょうが、今では四川や北京や上海など、何でもありと言えるのではないかと思います(が、このあたりの話になると私も自信がありません)。
そんな中、現地法人社長が連れて行ってくれたのは、ペーパーチキンのお店でした。かつてマレーシア駐在の間、何度かシンガポールで遊びましたが、全く知りませんでした。ペッパー・チキンではありません、タレに漬け込んだ鶏肉をペーパー(油紙)に包んで揚げたもので、その油紙を破いて鶏肉だけを食べます(当たり前ですね)。油紙に包んでいるので、肉汁も逃さず、なかなか美味ですが、そんなに驚くほどではありません。しかし、訪れたレストラン・ヒルマン(嘉臨門大飯店)は、「世界的に有名なフランス人シェフ、ポール・ボキューズ氏が、シンガポールを訪れた時に、この店のペーパーチキンを食べて『このペーパーチキンにミシュラン3ツ星を進呈したい』と評したことから、一気にシンガポール中に評判が広がり、有名店となったという逸話を持つ」(All Aboutの稲嶺さん)というのですから、驚きです。実際に、訪れた日も多くの日本人客で賑わっていました。
むしろ、私にとって嬉しかったのは、ローカル・フードの代表である肉骨茶(バクテーと発音します、福建語由来)の食べ比べが出来たことです。マレーシアでは、ベスト100が話題を呼ぶほど、それぞれのお店が個性ある味を競うもので、韓国のキムチに相当すると言ってもよいのでしょう。そして、マレーシアのそれは、ぶつ切りの豚あばら肉や内臓を、漢方薬に用いるスパイスと中国醤油で煮込むため、どす黒く濁って、見た目には味付けが濃いとつい思ってしまいがちですが、勿論コクはありますが、意外にあっさりしていて、ぶっかけご飯にするとご飯が進んでクセになる味です。他方、シンガポールでは、その国柄のユニバーサル性と相俟って、クリア・スープで、どちらかと言うと胡椒による味付けが中心で、万人受けする美味しさは、実は私には物足りないのですが、美味いことは間違いない。
そして最後に、今、マレーシアではラマダンの時期にあたり(ムスリムのヒジュラ暦の第9月、日の出から日の入りまで断食をします。今年は6月28日~7月27日)、日中、マレー人の生産性が落ちたりするわけですが(苦笑)、ホテルの朝食のバッフェでは、日没とともに食するクエと呼ばれるマレー菓子やスイーツが並んでいて、とても懐かしく思いました。毎日ならちょっとご勘弁・・・とも思いますが、やはり欧米と違ってアジアは私たち日本人には感覚が近く、なかなか飽きることはありません。
なお、上の写真は、現地法人のオフィス玄関にあった飾り付けです。Selamatは「おめでとう!」の意。