風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

今年の箱根駅伝

2015-01-07 01:17:20 | スポーツ・芸能好き
 もうチャラいとは言わせない!?ことでしょう。今年の箱根を制したのは、意外だったと言っては失礼かも知れませんが、青山学院大学でした。下馬評では、駒大を筆頭に東洋大、早稲田、明治、青学の5強の争いと言われ、その一角を占めてはいたものの、それでも、昨年11月の全日本大学駅伝で4連覇を果たした駒大の総合優勝が濃厚と見られていました。ところが、ふたを開けたら、青学が全10区間のうち、5区間で区間賞を輩出したのをはじめ、区間2位が3人、3位が2人と、産経Webは「歴史的圧勝」と称え、全走者10人のうち4年生2人、3年生5人、2年生2人、1年生1人と、選手層の厚さだけでなく伸びしろも感じさせて、スポンサーでもある読売は「黄金期の予感」と持ち上げました。
 私自身は、昨年までとはうって変わって、テレビにかじりついて見ていたわけではなく、斜め読みならぬ斜め鑑賞で、結果だけ追っていたので、あらためて青学のこの強さは一体何故だろうと、いろいろ記事検索してみると、最近は甲子園(高校野球)並みにドラマ仕立てで報じてくれていて、必ずしも意外ではなかったのかも知れない・・・などと、なんとなく思わせられました。カギの一つに、原監督の育成法を挙げることが出来そうです。中京大のランナーとして箱根駅伝とは無縁だったものの、日本学生対校5000メートル3位の実績をひっさげ、大学卒業後は中国電力で競技を続けましたが、足の故障もあって5年で引退、その悔しさをバネに営業マンとして精進し、「物事の進め方、準備の大切さを学んだ」と、産経Webは伝えます。私は「準備」という言葉に注目しました。マラソンや駅伝などの長距離は、スタート地点に立った時点で、8~9割方は結果が決まったようなものだと言われるほど、スタート地点に立つまでの「準備」が大切だからです。それでは、原監督は学生たちにどんな「準備」を仕向けたのでしょうか。
 2004年の監督就任当初は専用グラウンドもなく、箱根駅伝では予選落ちが続き、2007年には廃部の危機に瀕しました。33年ぶりに箱根路に戻った2009年は最下位でしたが、翌年から5年連続でシード権を獲得し、2012年には三大駅伝の一つ「出雲駅伝」でついに初優勝するまでに成長し、監督就任11年目にして箱根制覇の快挙です。
 「複数の小さな変化が“化学反応”を起したからだ」と産経Webは伝えます。「半歩先を見つめながら、こつこつ積み上げた」・・・高校生にチームの夢と、その生徒自身の未来像を語って勧誘、徐々に戦力を整えていき、テレビを見ていた時間をストレッチに割き、好きなお菓子を食べることを我慢し、今季からはトレーナーを拡充し、新たな体幹トレーニングを導入し、体のケアのため寮に水風呂を完備し、選手たちには「目標管理の徹底」を課したのだそうです。「昨季まで不定期だったものを月1度にして」「選手は記録会や練習、生活面などの目標を細かく書き込み提出し、結果を過程も含めて振り返ることを繰り返した」と言います。
 ここで「目標管理」と言っているのは、かつてセールスマンの業績評価によく使われた「目標による管理(MBO:Management By Objectives)」のようで、セールスマンの経験がある監督らしい発想です。1950年代にピーター・ドラッカーが提唱したとされ、今では成果主義とかノルマ主義が連想されて、余り評判はよろしくないようですが、「本人の自主性に任せることで、主体性が発揮されて結果として大きな成果が得られるという人間観/組織観に基づくもの」(Wikipedia)で、監督自身、指導の信念は「人間として、男として自立させること」だと言い、「去年ぐらいからチームの5000メートルや1万メートルのタイムが上がって、自信につながった」そうです。こういった手法は、トヨタのカンバン方式と同じで、誰でも出来るかに見えて決してそんな生易しいことではなく、要は使われ方の問題であり、ごく当たり前な地味なことを地道に徹底してやっていけるかどうかがポイントのように思いますが、青学は見事に結果を出しました。
 冒頭の「チャラい」に戻ると、周囲に「いい意味でチャラい」と評される雰囲気は残ったままだと読売は書きます。「走り出す直前まで笑顔が絶えず、髪形も自由なら、整列もどこかそろわない」。なんとなくこれまでの体育会系とは一味違って、来年の箱根が楽しみになってきました。
コメント
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