風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

タイガー復活

2019-04-16 00:10:11 | スポーツ・芸能好き
 この人は笑顔が、そしてグリーンジャケットが、よく似合う。ゴルフの祭典マスターズの勝者に贈られる栄光のジャケットだ。昨年のツアー最終戦(ツアー選手権)で5季ぶりの優勝を果たしていたタイガー・ウッズだったが、メジャー制覇は11年振り、マスターズに至っては2005年以来14年振り(5度目)、ついでに初優勝から22年ぶりで、43歳3ヶ月でのマスターズ制覇は、46歳2ヶ月で大会6勝目を挙げたニクラウスに次ぐ年長優勝だそうだ。
 誰がグリーンジャケットを羽織ったこの満面の笑顔を想像できただろう。膝の故障に始まり、私生活のトラブルを引き起こし、スポンサーを次々と失い、いったん第一線に復帰したものの、今度は腰痛に見舞われ、一時は歩くことすら出来ず、何度も手術を受けた。抗不安薬などの影響下で車を運転して、よろめきながら逮捕される姿を晒したのはほんの2年前のことだ。落ちぶれたかつてのスーパースターを誰もが憐れみ、メジャー通算18勝のジャック・ニクラウスの記録(タイガーはこのマスターズで歴代2位の15勝目)も、米ツアー通算82勝のサム・スニードの記録(タイガーは同81勝目)も、軽々と塗り替えるものと目されながら、ついに手が届かないだろうと諦められたものだった。
 マスターズという大舞台で華々しく復活したのは、しかし、かつての豪快なタイガーではない。パーオン率80・56%(72ホール中58ホールで成功)こそ全選手でトップながら、ドライバーショットの平均飛距離は294.5ヤードで44位と、飛ばし屋だったのがウソのようだ。「(最終日は)自分のゴルフに集中できたのが大きい。冷静さを保つことができたのが一番の理由」と語ったように、さながら獲物を狙う豹のような精悍さが戻ったように見えたのは見間違いではなかったが、人間的にはひと回りもふた回りも成長したのだろう。
 それにしてもゴルフの神様は、気紛れに劇的なことを演じなされるものだ。
 こうして思うのは、実は水泳の神様のことだったりする。池江璃花子さんに過酷な試練を与えて弱冠20歳にも満たない18歳の運命を弄び、それでも気紛れに微笑んで劇的なことを演じなされるだろうか、と。
コメント
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