個人的なことになるが、在宅勤務に入ってほぼ三週間が経過した。幸いにも、東京オリパラに向けたテレワーク実証実験なるものを何度か繰り返し、それなりに要領は分かっていたつもりだが、さすがに長期にわたって・・・三週間以上に及ぶことまで想定しておらず、根本的に仕事の進め方や評価の仕方など、覚悟があったわけではないし準備が十分だったわけでもない。いきなり明日から全員テレワーク、のサプライズ指示だった。
こうして手探りでやって来て、在宅勤務の何たるかが朧気ながら見えてきた。先ず、やってやれないことはなさそうだという発見は、予想できたこととは言えちょっとした驚きだった。まあ、兎にも角にもやらざるを得ないのが実態なのだが。そして仕事の何たるか、巷には日常不可欠な小売りや流通や生産の方々が頑張っていることを頼もしく思うとともに、オフィスにいるだけでは仕事したことにはならないという当たり前の事実を突きつけられ、あらためて立ち尽くす。リモートでオフィスのパソコンに繋いで、反応が鈍いのはイライラするが、今や社会全体がスローダウンしなければならないとき、なのだろう。顔を合わせられなくても、テレビ会議システムのZoomは便利だし、チャットのTeamsもある。それでも、ZoomをやるほどではないがTeamsでは物足りない、隙間に陥るもどかしさは、やはり残る。オフィスにいれば気軽に声を掛けて、立ち話や、聞かれたくない話は会議室に籠ったり場所を移したりすることができたところだ。さらに一日中、無駄話もなく押し黙ったまま、一人ポツ然とパソコンに向かっていると、息抜きのタイミングを逸してしまいがちになる。今、コロナ禍後の話をするのは時期尚早だが、在宅勤務は当たり前にかなり広まるだろうが、オフィスで顔を合わせることのメリットも再認識されたことだろう。腕時計型の活動量計を数多く販売し現在は米グーグル傘下の米フィットビット(Fitbit)が発表した、全世界3000万人のアクティブユーザーの匿名化データを基に分析した結果によると、就寝時間が遅くなる一方、睡眠時間が長くなっているらしい。これには思わず笑ってしまった。私もまさにその通り。普段、如何に無理していたか、週末、爆睡する理由もよくわかる。
因みに国土交通省「平成31年度(令和元年度)テレワーク人口実態調査」によると、何らかの制度があるのは19.6%、制度があるにもかかわらずテレワークを実施しているのはその内の49.9%、つまり全体では僅か1割に留まるようだ。4月4日に公開された厚生労働省とLINEの「1回目の全国調査の分析結果」によると、「仕事はテレワークにしている」と回答したのは5.6%だった。これは就業の有無まで問うていないので、就業者に絞ればやっぱり10%程度になるのだろう。私の会社を含め、これが日本の現実かと思うと暗澹たる気持ちになる。
在宅勤務とは違って、ロックダウン、外出自粛に関して、パリ郊外に住む方の話が興味深かった。「軍人や警官が監視のために配備」され、「人々は食料品を買う以外は基本的に外出を禁じられ」、「家の周りのちょっとした散歩や運動のための外出は許可されているが、基本は一人、あるいは同じ家のメンバーのみという限定がつく」のだそうだ。「買い物も含めて、すべての外出は正式な書式に署名をし、常に持ち歩いていなければ罰金が課せられる」とも。それで、1ヶ月もロックダウンが続くと、やはり精神的な負荷が大きいと述べておられる。これまでは「仕事上の私」「子供の学校の先生と接する私」「義理の母に対する私」など、「いろいろな種類の私がいたのに、あっという間に『家庭内の私』だけに集約されてしまって、閉じ込められた感覚になる」のだと言う。つまり「人はいろいろな場所でいろいろな対人関係を築いている」のであって、「ロックダウンは身体的に移動が制限されるということだけれど、実は同時に社会的な関係も一気に縮小しているからこそ、閉じ込められた感覚になる」のだと。
ジキルとハイドではないが、私も家では親であり夫であり、親に対するときは子供であり、街を歩き電車に乗れば社会の一員の意識を持ち、会社に着けば同僚や部下や上司となり、NPOなどの社外活動では知人や友人となるなど、多様な人格を演じ分けて、仮にどこかで行き詰っても他でバランスを取ることが出来ていた。今は極めて限定した自分しか演じられず刺激に乏しい。戸外を歩いて風を感じ、日差しを浴び、季節の移ろいを感じること、電車の吊り広告やTVモニター、本屋に立ち寄ったとき、電車で乗客を観察するときなどに、社会から受ける刺激に、今は乏しい。人間は社会的動物とは言い古されたことだけれども、孤立すると間違いなく情緒不安定になり、人恋しくなる。
さて、これまで数回、いろいろデータをいじくって来た。前回は欧米(特に医療レベルが同等と考えられるドイツ)の致死率を当てはめて、欧米の検査実施数レベルでの感染者数を計算しようと試みたが、検査を絞っている日本の方が致死率が低いという意外な事実にぶちあたり、挫折した。今回は、陽性率のトレンドから、市中での感染が広まっているか否かを想像してみたい。厚労省が発表しているデータを使って、2月第3週から先週までの一週間毎に、一日当たりに換算したPCR検査実施人数と陽性反応人数ならびに陽性率を単純計算すると以下の通りとなる。
検査 陽性 陽性率 特記事項
2月第3週 80 13 16%
4週 120 16 13% 小中高校の一斉休校(2/27)
3月第1週 988 35 4%
2週 793 45 6% WHOパンデミック宣言(3/11)
3週 1163 42 4% 三連休
4週 1412 118 8% 東京五輪延期決定(3/24)、東京都重大局面会見(3/25)
4月第1週 2957 279 9%
2週 4891 527 11% 非常事態宣言表明(4/7)
3週 5029 469 9%
当初は検査数を絞っていたため、陽性率すなわちヒット率が高かったのは納得する。3月に入って検査数を増やし始めると、いったん陽性率は下がり、最近、特に東京五輪延期が決定してから検査実施人数が顕著に増える中で、再び陽性率が上昇しているのは、巷に感染者が増えている証だろう。もっとも10%レベルは、気軽に検査して外し続けている印象だと軽く述べる専門家がいて、なかなか印象的なのだが、今はとりあえず措いておく。3月第4週から増えているのを仔細に見るべく、日々の数値を移動平均(当日と前後2日ずつの計5日の平均値)で計算してみると(なにしろ集計値なので、日々の数字は結構、暴れているのだ 笑)、3月26日から増加に転じていることが分かる。3月20日~22日の三連休で感染が広がったと想定されていることと符号する。非常事態宣言から二週間が経過し、上げ止まっているように見えるが、まだ予断を許さない状況なのだろう。
先が見えない状況こそ不安のもとで、何らかの方向性が見えて来て、新たな指針が出て来るとよいのだが。
こうして手探りでやって来て、在宅勤務の何たるかが朧気ながら見えてきた。先ず、やってやれないことはなさそうだという発見は、予想できたこととは言えちょっとした驚きだった。まあ、兎にも角にもやらざるを得ないのが実態なのだが。そして仕事の何たるか、巷には日常不可欠な小売りや流通や生産の方々が頑張っていることを頼もしく思うとともに、オフィスにいるだけでは仕事したことにはならないという当たり前の事実を突きつけられ、あらためて立ち尽くす。リモートでオフィスのパソコンに繋いで、反応が鈍いのはイライラするが、今や社会全体がスローダウンしなければならないとき、なのだろう。顔を合わせられなくても、テレビ会議システムのZoomは便利だし、チャットのTeamsもある。それでも、ZoomをやるほどではないがTeamsでは物足りない、隙間に陥るもどかしさは、やはり残る。オフィスにいれば気軽に声を掛けて、立ち話や、聞かれたくない話は会議室に籠ったり場所を移したりすることができたところだ。さらに一日中、無駄話もなく押し黙ったまま、一人ポツ然とパソコンに向かっていると、息抜きのタイミングを逸してしまいがちになる。今、コロナ禍後の話をするのは時期尚早だが、在宅勤務は当たり前にかなり広まるだろうが、オフィスで顔を合わせることのメリットも再認識されたことだろう。腕時計型の活動量計を数多く販売し現在は米グーグル傘下の米フィットビット(Fitbit)が発表した、全世界3000万人のアクティブユーザーの匿名化データを基に分析した結果によると、就寝時間が遅くなる一方、睡眠時間が長くなっているらしい。これには思わず笑ってしまった。私もまさにその通り。普段、如何に無理していたか、週末、爆睡する理由もよくわかる。
因みに国土交通省「平成31年度(令和元年度)テレワーク人口実態調査」によると、何らかの制度があるのは19.6%、制度があるにもかかわらずテレワークを実施しているのはその内の49.9%、つまり全体では僅か1割に留まるようだ。4月4日に公開された厚生労働省とLINEの「1回目の全国調査の分析結果」によると、「仕事はテレワークにしている」と回答したのは5.6%だった。これは就業の有無まで問うていないので、就業者に絞ればやっぱり10%程度になるのだろう。私の会社を含め、これが日本の現実かと思うと暗澹たる気持ちになる。
在宅勤務とは違って、ロックダウン、外出自粛に関して、パリ郊外に住む方の話が興味深かった。「軍人や警官が監視のために配備」され、「人々は食料品を買う以外は基本的に外出を禁じられ」、「家の周りのちょっとした散歩や運動のための外出は許可されているが、基本は一人、あるいは同じ家のメンバーのみという限定がつく」のだそうだ。「買い物も含めて、すべての外出は正式な書式に署名をし、常に持ち歩いていなければ罰金が課せられる」とも。それで、1ヶ月もロックダウンが続くと、やはり精神的な負荷が大きいと述べておられる。これまでは「仕事上の私」「子供の学校の先生と接する私」「義理の母に対する私」など、「いろいろな種類の私がいたのに、あっという間に『家庭内の私』だけに集約されてしまって、閉じ込められた感覚になる」のだと言う。つまり「人はいろいろな場所でいろいろな対人関係を築いている」のであって、「ロックダウンは身体的に移動が制限されるということだけれど、実は同時に社会的な関係も一気に縮小しているからこそ、閉じ込められた感覚になる」のだと。
ジキルとハイドではないが、私も家では親であり夫であり、親に対するときは子供であり、街を歩き電車に乗れば社会の一員の意識を持ち、会社に着けば同僚や部下や上司となり、NPOなどの社外活動では知人や友人となるなど、多様な人格を演じ分けて、仮にどこかで行き詰っても他でバランスを取ることが出来ていた。今は極めて限定した自分しか演じられず刺激に乏しい。戸外を歩いて風を感じ、日差しを浴び、季節の移ろいを感じること、電車の吊り広告やTVモニター、本屋に立ち寄ったとき、電車で乗客を観察するときなどに、社会から受ける刺激に、今は乏しい。人間は社会的動物とは言い古されたことだけれども、孤立すると間違いなく情緒不安定になり、人恋しくなる。
さて、これまで数回、いろいろデータをいじくって来た。前回は欧米(特に医療レベルが同等と考えられるドイツ)の致死率を当てはめて、欧米の検査実施数レベルでの感染者数を計算しようと試みたが、検査を絞っている日本の方が致死率が低いという意外な事実にぶちあたり、挫折した。今回は、陽性率のトレンドから、市中での感染が広まっているか否かを想像してみたい。厚労省が発表しているデータを使って、2月第3週から先週までの一週間毎に、一日当たりに換算したPCR検査実施人数と陽性反応人数ならびに陽性率を単純計算すると以下の通りとなる。
検査 陽性 陽性率 特記事項
2月第3週 80 13 16%
4週 120 16 13% 小中高校の一斉休校(2/27)
3月第1週 988 35 4%
2週 793 45 6% WHOパンデミック宣言(3/11)
3週 1163 42 4% 三連休
4週 1412 118 8% 東京五輪延期決定(3/24)、東京都重大局面会見(3/25)
4月第1週 2957 279 9%
2週 4891 527 11% 非常事態宣言表明(4/7)
3週 5029 469 9%
当初は検査数を絞っていたため、陽性率すなわちヒット率が高かったのは納得する。3月に入って検査数を増やし始めると、いったん陽性率は下がり、最近、特に東京五輪延期が決定してから検査実施人数が顕著に増える中で、再び陽性率が上昇しているのは、巷に感染者が増えている証だろう。もっとも10%レベルは、気軽に検査して外し続けている印象だと軽く述べる専門家がいて、なかなか印象的なのだが、今はとりあえず措いておく。3月第4週から増えているのを仔細に見るべく、日々の数値を移動平均(当日と前後2日ずつの計5日の平均値)で計算してみると(なにしろ集計値なので、日々の数字は結構、暴れているのだ 笑)、3月26日から増加に転じていることが分かる。3月20日~22日の三連休で感染が広がったと想定されていることと符号する。非常事態宣言から二週間が経過し、上げ止まっているように見えるが、まだ予断を許さない状況なのだろう。
先が見えない状況こそ不安のもとで、何らかの方向性が見えて来て、新たな指針が出て来るとよいのだが。