話題になる前から、映画評を読んで観に行きたいと思っていた。名古屋ではそれなりに話題作が上映しているのでありがたい。
賢く美しく、リーダータイプだった姉が統合失調症を発症した。それからの家族を映したドキュメンタリー。父は医学博士、母も医学畑の人。
医学的な知識が、姉にとってよい判断を妨げた部分はあると思うが、一番印象に残ったのは父と母が、それぞれお互いが望まないだろうと思い行動を起こさなかったと語っていたこと。
精神科医に診せる、入院させる、といった通常の治療に、「パパは絶対受け入れない」と母は言い、「ママが許さなかった」と父は言う。映画を撮った監督は弟であるのだが、この言葉をそれぞれへのインタビューで聞いている。つまり、面と向かって三人で(もしくは姉を入れた四人で)は話せていないのだ。
そのほかに衝撃的だったのは、姉の表情の変化。玄関にかぎがかかり10カ月も家から出られていない時の彼女と、外出したり、服薬ができるようになってからの彼女。見違えるように美しい。
家族という現実、悲劇も美徳も凝縮されがちな、特殊な小集団。年月を重ねるというのがどういうことなのかを教えてくれる映画だった。