報じられたようにロンドン時間の28日午前、NY時間の早朝に英中銀Bank of England(BOE)が英国債の緊急買い入れを発表。期間20年以上の超長期国債を無制限に買い入れすると表明した。
月初9月1日の2.882%から4.5%を上回っていた英10年債利回りは、発表後 4%近くに低下し、NY市場にも国債買いが波及し米10年債利回りは前日の3.948%から3.736%に大きく低下した。
NY時間外のロンドンの早朝の時間帯には12年ぶりの高水準となる4.010%まで見ており、まれに見る急落といえる(債券価格が急騰)。それだけBOEの介入はサプライズとなった。
それもそのはず、BOEは来週から量的引き締め策(QT)に着手し、保有英国債の売却を始めるとしていたのだから、真逆の動きはサプライズ以外にない。
そもそも、中銀が国債の売却を始めると発表した翌23日にトラス新政権が、大型減税を発表し、財源に国債増発で賄うとしたことは?????だったが、案の上、その後市場は荒れた。BOEはどうするのだろう、打つ手はあるのかと思っていたが、金融政策とは別動隊が動き、市場の秩序と安定を図る「金融行政委員会(FPC)」の勧告に基づいた政策判断であって、QTは実施するが月末31日に 延期だそうな。
正直言ってBOEのこういう構成は知らなかった。
BOEが緊急買い入れに動いた背景には、年金基金の破綻を防ぐ目的があったとされる。それゆえ20年超という超長期債に絞った買いになった。先週末から英国の財政悪化を懸念した市場では英ポンド売りと同時に英国債売りも活発化、英国債価格が急落(利回りが急上昇)。 超長期債を担保に資金を借り入れ、デリバティブ(金融派生商品)取引などを仕掛けていた年金基金の中に、担保(英国債)価値の急落で、追加担保を要求されるところが出ていたとされる。
いわゆるマージンコール(証拠金の追加拠出要請)、追証に応じられない場合は、資産の現金化を急ぐことになり、国債相場の投げ売りで下げが下げを呼ぶ懸念が高まったとされる。当初、急落は1日、2日で落ち着くと当局は思っていたらしいが、長引いたことで慌てたらしい。 保有資産を担保にして新たな資金を借り入れ、それをさらに投資に回す手法を「レバレッジを効かせる」(Liability Driven Investment、LDI)と表現するが、想定が外れた際のリスクが高く、以前では低リスク運用で知られる年金基金はそうした手法は取っていなかった。ところが低金利環境が長期化し、想定する利回りが得なれない中で、以前では考えられなかったリスクを取る運用に乗り出すところが増え、一種のトレンドになっていた。米公的年金基金でも環境悪化から今年の上半期に損失を拡大したところが増えた。「堅い運用」と思われる国債投資だが、新型コロナ禍以降に市場の値動きが想定以上に大きくなったことで、水面下に潜んでいたリスクが急浮上することになった。
米長期金利が急速に下げに転じたことで、米国株にも買いが戻り28日は上げ幅を拡大したが、これで市場が落ち着くとは思えない。対処療法のようなもので、来月の中旬まではBOEが動いたとして、その後はどうするという問題もある。
本日29日の米国株式市場が注目される。