前日は、英中銀Bank of England(BOE)が市場安定化に向け同国の20年物など超長期国債の一時買い入れ開始を発表。当の英国債はじめ米国債利回りも急落(国債価格は急伸)となったが、29日の市場は、やや落ち着きを取り戻した。英ポンドは(1ポンド=)1.1123ドルと、前日の1.0891ドルから大きく上昇。1日としては2020年3月以来の大幅な上昇率(2.1%)に。週初には1.0349ドルと過去最低まで売られていた。
BOEは29日も市場安定化を目的として、残存20年超の国債を14億1500万ポンド(15億5000万ドル)買い入れた。ただしサプライズとなった前日こそ利回りは大きく低下(価格は上昇)したものの、29日10年債は前日の4.014%から4.142%に上昇した。30年債も3.930%から3.962%に上昇。
つまりポンドの値動きは落ち着いたが、英10年債は買い入れ対象外とはいえ、落ち着かない。それには相応の理由がある。
トラス英首相が、今回金融市場の混乱の原因となっている政府の経済対策について、適切な措置であり、経済成長を促すため「議論を呼ぶ」措置を積極的に講じると表明したこと。市場は英国政府による国債増発を財源とする大型減税につき、維持可能とみなしておらず、10月14日に期限を切っているBOEの安定化策の効果持続を疑問視する見方も多い。政治的にはトラス政権は短命に終わるというものも。
主要国の財政に由来する市場の波乱は、金市場の買い手掛かりとなるが、現時点では静観という状況にある。
欧州関連では、この日発表されたドイツの9月の消費者物価指数(CPI)速報値は、前年比10.9%上昇となり、1996年の調査開始以降で最高となった(欧州連合基準)。国内基準では10.0%上昇と1950年代初頭以降で最高とされる。欧州中央銀行(ECB)が次回会合で0.75%の追加利上げを実施するという見方が強まっている。インフレ抑制という面では、BOEも利上げ路線か軌道は外せない。
今週は連日にわたり米連邦準備理事会(FRB)高官の発言が続いているが、クリーブランド連銀のメスター総裁は29日、米経済専門チャンネルCNBCのインタビューで「政策金利はまだ抑制的な領域にさえ達していない」と発言。同総裁は年末までに4.5%の水準を見込んでいるとみられる(現在3.00~3.25%)。セントルイス連銀のブラード総裁は同じ日、英国の情勢が米国の見通しに影響を及ぼすことはないとした。
本日は注目のインフレ指標、8月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が発表される。FRBが注視していることで知られるのが、エネルギーと食品を除いたコアPCEデフレーター。前年比4.7%上昇と、7月から小幅拡大が予想されている。予想比上振れとなるとFRB利上げ加速をイメージさせ、市場の値動きが大きくなりそうだ。どうなるか。。。