亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

金市場で無視された「ロシア金禁輸」話 

2022年06月28日 21時30分02秒 | 金融市場の話題

週明け早々にドイツの避暑地で開かれているG7サミット発で、にわかにロシアからの新たな金の輸入禁止で一致する見通しと伝えられたが、既にロンドンの現物市場では対応済のものであり、発表された内容には新たなものは見られなかった。ロシア中央銀行の金を含む資産売却には規制がかかっているものの、民間分との識別は難しいのは確かではある。ならば ロシアからの金は全面的に輸入禁止とした方がわかりやすいのだろう。

 

英国政府が発表したとされる21年のロシアによる金の輸出金額126億ポンド(約2兆1000億円)は、時価ベースで重量換算にすると約250トンとなる。ほとんど公表されておらず、予想以上に多い印象ではある。MI5など英国のインテリジェンス情報によるものと思うが、ロシアはそんなに外に売っていただろうかと疑問ではある。

 

ロシア中銀は3年前まで12年間にわたり金準備を増やしてきたが、その多くは国内鉱山から買い取ったものと思われた。確かに、このところ金準備は増やしていないので、その分を外に売っていたというのはわからなくはない。 それでも250トンは多いと思うのは、そもそもロシアの生産は21年には330トンで75%は売却していることになる。原油や天然ガスの売却が国家予算の根幹になっているので、金を売っても不思議はないということか。

 

ロシア中銀は3月28日からグラム当たり5000ルーブルの固定価格で国内産金会社から金の買取りをしているはずだが、予定では今週6月30日で終わることになっている。もともと海外に売却しようにも、仲介者となる欧米の投資銀行がロシア取引から手を引いているし、ロンドン市場のLBMAが取引を認めていないので、やむなく中銀が買取りに応じることにしたと理解していたが、間違いはなかったと思う。 そういえばこの件で、ロシア中銀が金本位制を敷くとか何とか吹聴する人々がいて、著名週刊誌などから取材を受けたが、金本位など無理、たかだか2300トン弱の保有金ではなんともできないと応えた経緯がある。仮に金本位性を敷くなら、交換希望殺到で金庫はあっという間に空になるのではないかと話した。

 

G7サミットでにわかに飛び出したこの話だが、対ロシア経済制裁を繰り返すものの決め手に欠ける中で、それでも何か出さないわけには行かず、2番煎じ、3番煎じともいえるこの話題を出したもので、政治的色彩の強い発表ということだろう。広く報じられたが金市場では無視だった。埒が明かない展開に、逆にG7側の苦境を感じさせたともいえそうだ。

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