亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

原油の下げに高まる警戒感

2016年04月05日 23時24分57秒 | 金融市場の話題
4月17日の産油国会合(OPEC、非OPEC)を前に、先週末に報じられたサウジ副皇太子の発言から(1月の水準に)生産量凍結合意が難しいとの見方が台頭し、原油相場が再び下値を探る展開に地合いが変化しつつある。もっとも、以前にも書いたように、この流れ、すなわちサウジ、イランの政治的関係から考えられる合意の難しさは想定されていたこと。いずれにしても、原油弱含みの中で商品市況も下に引っ張られるような地合いが復活。仮に再び原油が下値を探る動きに転じ、低迷が長期化するならば、ベネズエラなどのデフォルトの可能性が高まることになる。となると、そこに貸し込んで(投資して)いる金融機関のバランスシート上のリスクが上がることになる。

資源国(多くは途上国)には過去数年にわたり、資源確保を旗印に中国が進出し、積極的に投資をし権益を確保してきた歴史がある。商品価格の低下は、これらの投資が失敗に終わり損出を抱えていることを表す。日本国内でも商社が多額の減損処理を行い赤字に転落するところが続出したことからもわかろう。

原油の低迷長期化は、やせ我慢状態のサウジなども波乱とは無縁でないことを示すことになりそうだ。潤沢な政府予算により生活コストが低く抑えられていた一般市民の状況は過去のものとなり、当然ながら不満が溜まることとなる。そうした社会のひび割れた状況に巧みに忍び寄るのが、ISなど過激思想の組織なのだろう。結局、産油国の政治的安定は脅かされ、流動化することになり、戦争の危機も高まることになる。主要国にとっても頭の痛い問題となる。

足元の原油市場は、産油国間の政治的軋轢に利害がからみ、抜き差しならぬ状況で下手をすると共倒れの状態に瀕している。結局、どこかが音を上げる(破たん)するまで、この状況が続きそうだ。ロシアがシリアから軍を引き上げたのは、予算不足が背景となっているのは、ロシア軍関係者が撤退命令に反意を表明しているニュース映像からも明らかだった。

しばしのリスク・オン環境から再びリスク・オフの循環がやってきたようだ。こうした環境が本格的な調整局面に入ろうとする金市場を、サポートしている。

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