2月11日のNY金は3営業日ぶりに小幅に反落した。NY時間外のアジア時間に買いが先行し3営業日連続となる最高値を更新した。ただし、買いが一巡すると売り優勢に転じ、その後は上げ幅を削りながら相場は進行し、小幅安で終了した。NYコメックスの通常取引は前日比1.80ドル安の2932.60ドルで終了した。
報じられたようにトランプ大統領は、鉄鋼やアルミニウム製品の輸入に対して3月12日から25%の関税を課す大統領令に署名するとともに、今後は自動車・半導体・医薬品の関税引き上げを検討するとも明らかにした。鉄鋼とアルミニウムに関しては主要供給国のカナダ、メキシコ、ブラジルなどへの適用除外措置と無関税枠を撤回したほか、米国製品に関税を課す全ての国に対する相互関税を今後2日間で発表するとした。
こうしたトランプ政権の強硬的な施策の発表の中で、今後のサプライチェーン(供給網)の混乱などから先行きの世界経済のみならず米国経済自体にも影響が及ぶことを市場は警戒している。
このところの金市場の上値追いの背景は逃避資金の流入だが、11日のアジア午前に騰勢を強めた背景には中国人民銀行による先週末7日の発表も影響したとみられる。10日の更新の際にここに書いたが、大手保険会社10社に資産の最大1%を金に投資することを認めるというもので、この発表を好感した中国国内のファンドの買いが11日の早い時間帯での上値追いにつながったとみられる。 10日の内容と被るが現地の証券会社の試算では最大2000億元(約4兆1700億円)に相当する可能性があるとしている。時価から計算すると約300トンの現物買い余力が生まれることになる。時間を掛けて買い進めると見られるが、相応に需給を締めることになりそうだ。金の国際的広報調査機関ワールド・ゴールド・カウンシルのデータでは、2024年10~12月期の世界の投資需要(地金と金貨)の総量が325トンだった。それに匹敵する。
ただし、時間を掛けて買い進めると見られ、足元で上値を買い進むことはないとみられる。 2月7日の人民銀行の発表には1月に外貨準備として約5トンの金準備の増加も発表されており、あわせて中国の投資家を刺激したものと見られる。
ただし、さすがに連日の最高値更新の後だけに買い一巡とともに売り優勢に転じ、水準を切り下げながら相場は進行し、NY早朝には一時2907.00ドルまで売られる場面があった。ただし、その後のNY時間に押し目買いが入り、一転下げ幅を縮めながら進行し前日水準まで戻って取引は終了した。
モメンタム相場だけに回転が止まると反落となるが、トレンド自体が変わったわけではない。