マクロビオティックな歯医者さんの食と暮らし                   食養塾 無何有庵の日々

無(む)と空(くう)の癒しの時間の中で、心食動息の一つ一つを共に考えていきたいマクロビオティックなスペース。

全力で歯を守る

2007年05月23日 11時45分10秒 | 庵主の日記
今日を最後に、当院は完全自費診療に切り替わることになりました。

苦渋の選択でした。
今の保険制度では、とても歯を残していくことが出来ないからです。

当院では、歯を出来るだけ抜かない、削らないを診療方針の柱にしています。
現在、当院にご来院くださっていらっしゃる80歳以上の年齢で20本以上の歯を残されていらっしゃる方の割合は54.8%。全国平均は9.9%です。
この数字は、当院に初診でご来院なさった時に、既に0本の方もいらっしゃいますので、いかに歯を守っている率が高いかはご想像がつくと思います。

さらに、ご来院時にはそれ相当の問題を抱えてこられています。他院で抜歯を宣告され、あわてて駆け込んでこられる場合も多いです。(この場合9割を越える確率で歯を残しています。)そんな問題を克服しての残存歯数です。

歯を抜くのは1分もあれば充分です。
しかし、歯を残すのは痛めてきた時間に比例して年単位でかかります。

保険治療でこれをカバーしようとすると、治療方法の範囲も制約があり、治癒にかけられる時間も限られるためさらに長期にわたり、その分歯を失うリスクも高くなります。

現在遠方から来られている患者さまがかなり増えてきました。
埼玉、東京、横浜、大阪、神戸、京都の宮津、福岡、姫路、岡山、広島、高知、徳島、愛媛と本当に遠いところをご来院なさります。

そんな方々は、泊りがけでもこられます。時間をかけるだけでなく、交通費、宿泊費をかけてこられますから、治そうという気合が違います。私たちの指導も完璧に守ってくださいます。近くからのご来院の方とは違ってかかる経費が違いますから、一回のご来院に午前午後、2日間連日といったご予約で治療にあたります。
そうすると、これまで私たちが持っていた常識を覆すスピードで完全治癒が実現できてきました。

しかし、これは保険診療では制度的に難しいのです。
一日に10分診ようが、5時間診ようが、報酬は変わりません。
月に1回から2回の診療が精一杯。それ以上診ても報酬が上がるわけではありません。つまり持ち出しとなります。

多くの歯医者が抜歯に急ぐ、抜歯に甘んじる最大の原因です。

全力で歯を守ろうとする、当院の姿勢は、現・診療報酬制度に適合していないようです。悲しい限りです。

今日は、保険で診療する最後の日です。
駆け込みの患者さまでびっしり詰まっています(笑)。
お陰さまで、高松香西地区では小さな田舎町にも関わらず歯医者が8件もある激戦区ですが、ずっと患者さまが絶えずご指示くださってきました。
しかし、やはり自費診療となると家計のご都合もおありで、全員が引き続き治療をなさるというわけにもまいりません。

しかし、明日からは、「先生、もう早よう抜いてぇな」なんておっしゃる患者さまはいなくなるわけで、精神衛生上非常に楽になります。
ご自身の歯に(身体、健康、暮らし方、生き方・・・)真剣に向き合ってくださる患者さまのサポートが出来ることは本当に歯医者冥利に尽きます。

どうぞ、どうしても歯を抜かないといけないと言われたら、本当にそうなのかよく検討してください。
そして、高松の片田舎に、頑固に歯を残そうとしている歯医者がいることを思い出してください。