山口県の母子殺害事件の差し戻し審での、元少年の供述が話題になっている。
「ドラえもんに助けてもらおうと思った」、という言葉よりも私が気になったのは、「母親を殺してから犯したのは、山田風太郎の『魔界転生』にならって、復活させようとしたからだ」、という言葉の方。
彼は本当に「魔界転生」を読んでいるのだろうか。「忍法魔界転生」は、次のようなものだ。あらかじめある処置を施した女と、転生しようとする男が、交わる。この時、女はもちろん生きていなければならないし、男は絶体絶命の窮地に追い込まれていなければならない。もう一度この世に生まれ変わってやり直すという一念が、忍法を完成させるのだ。作品の中では、交わった直後に男は命を落とすことになっている。そして数ヵ月後、卵の殻を破るように、女の中から男が復活する。
繰り返すが、交わる時に女は生きているし、一度死んで復活するのは男の方なのだ。検察も当然この点に着目しているだろう。もしかしたら、これが元少年の命取りになるかもしれない。