リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バッハのリュート作品(6)

2007年09月11日 09時35分52秒 | 音楽系
さて組曲ト短調BWV995のオリジナルソースはもう一つありまして、タブラチュアで書かれたものがあります。これのタイトルは「バッハ氏によるリュートのための作品」とありまして組曲とは書いてありません。これは自筆からの筆写というより編曲でしょうけど、当時のリュート奏者の姿勢(というか編曲者の姿勢)がよくあらわれて興味深いものです。

バッハの自筆譜では、プレリュードの3小節目にコントラGが出てきて、当時一般的であった13コースのバロックリュートでは音が足らないということは、第2回目で書きました。当時のト短調による編曲では、あっさりとこのコントラGは捨ててます。13コースでコントラGを出すもっとも手っ取り早い方法は13コースのコントラAを一音下げればいいんですが、そうすると今度はコントラAがなくなくなるわけです。どっちがメリットがあるかを考えてみるとやっぱり13コースは下げない方になるでしょう。というような判断を当時の編曲者もしたんでしょう。

コントラGは出せませんが、一音上で編曲すれば、バッハの意図した低いバスが出るということでイ短調で編曲しているのがホプキンソン・スミスです。最近の録音ですがポール・オデットがイ短調で演奏しています。ついでながら私もイ短調派です。あとの人は皆ト短調です。今村編曲では14コースで編曲していますし、リンドベルイも録音ではしっかりコントラGが鳴ってます。面白いのはロルフ・リスレヴァンがタブラチュア版で録音していることです。彼は当時タブラチュア化されたバッハの作品を集めて録音しています。当時の編曲(タブラチュア化)が残っているのは、995番、997番のフーガとジグのドゥブル以外、および1000番です。