リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バッハのリュート作品(13)

2007年09月20日 11時09分53秒 | 音楽系
さて話がリュートからそれてしまいましたが、この曲のオリジナルソース(自筆譜または当時の筆写譜、印刷譜)は1つしかありません。それが日本の上野学園大学にあるということをご存じの方もいらっしゃると思います。今から30年くらい前に上野学園が購入したそうですが、ちょうどそのころ私は当時上野学園大学の助教授でいらした大橋敏成先生のところにレッスンに通っていました。先生はヴィオラ・ダ・ガンバがご専門ですが、リュートについてもよくご存じで、当時の新しい情報を教えていろいろ教えていただきました。

レッスンは狛江市の自宅か、大学で行われましたが、ある時上野学園大学が購入した998番をコピーする方法はないか伺ったところ、大学で記念出版したカラー印刷のものがあるので、それを貸していただけることになりました。さっそく、家は写真屋でしたから、カラーフィルムで複写を撮りましてコピーしました。今ももちろんそのネガとプリントは持っています。

後年になってバーゼルに留学したとき、留学生のYさんが上野学園出身だとわかり、大橋先生のことを伺ったら、最近は体調が思わしくないとのことでした。大橋先生のところにレッスンに通ったのは2年あまりでしたが、その後山梨の古楽コンクールで何回かお会いしたことがありました。そのときは大変お元気そうでした。

Yさんから先生の体調が思わしくないということを伺って半年くらいたったころでしたか、Yさんから携帯にメイルが入っていて、大橋先生がなくなったとありました。このときはさすがにショックでした。スイス留学の成果をぜひ大橋先生に聴いていただきたかったのに・・・

最近ハンス・ブルーガーのバッハ・リュート曲集を何かの用で見ていたら、それの日本語版翻訳の監修者が大橋先生でした。もうそのことはすっかり忘れていましたが、今読み返してみると先生の当時にあって先駆的な業績の大きさが感じられ、ありし日の先生をしのんで何回も序文を読み返していました。