リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バッハのリュート作品(7)

2007年09月12日 11時52分02秒 | 音楽系
無伴奏チェロ組曲5番はリュート組曲ト短調BWV995と同一曲ですが、調が異なります。チェロの方はハ短調で随分低くなっています。こちらの方はバッハの自筆譜が残されておらず、アンナ・マグダレーナ・バッハなどの筆写譜で伝えられています。無伴奏チェロ組曲5番は、チェロの1弦を1音さげて演奏されます。ということは1弦と2弦音程が4度になって、4度系の調弦を持っている楽器(リュート、ガンバなど)を思いださせます。

アンナ・マグダレーナ・バッハの筆写譜は、記譜上は1弦が1音下がっていないという前提で書かれていますので、そのままひくととんでもない音になってしまいます。ところでこの変調弦(スコルダトゥーラ)の記譜法だと興味深いことがあります。というのは別の見方をすると、どの音が1弦で弾かれるのかがわかるということです。5線譜は弦楽器の左手ポジションは書き表せませんが、この記譜法だと必然的に他の弦を使う場合もわかってくるような気がします。このあたりはチェリストに聞いてみないとわかりませんが。少なくとも、和音も押さえなければならないこの曲で、どの音が1弦で出すのかの情報があることは、左手運指上の大きなヒントになると思います。