リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バッハのリュート作品(15)

2007年09月23日 23時33分34秒 | 音楽系
1000番のフーガは、バッハが生きていた頃に書かれた「原典」としては、ヴァイラオホという人が書いたタブラチュアしか残っておらず、これの五線譜版は19世紀のものがあるにすぎません。ヴァイラオホが元にしたとされる、バッハの自筆譜は残っていません。(角倉一郎著バッハ作品総目録によります)

この曲は1001番の無伴奏ヴァイオリンのためのフーガの編曲だとされていますが、オルガンにも同一曲があります。(BWV539の2曲目のフーガ)この3曲は微妙に異なっていて興味深いです。実際にバッハが、同一曲をオルガン、ヴァイオリン、リュートというかなり性質の異なった楽器のためにそれぞれに合わせて編曲したのか、それともバッハ以外の(複数の)誰かが、無伴奏ヴァイオリンのための曲をそれぞれ、リュートとオルガンのために書いたのか、興味はつきません。

ヴァイラオホによるタブラチュア版は個人的には何か少々筆致(筆跡ということではありません)が雑な感じで、あまり好きではありません。自分で演奏するときは、ヴァイオリン版をもとにした版を作って演奏しています。そういやこの曲は最近は演奏してませんねぇ。確か阪神大震災の前の年に神戸で演奏したきりみたいな。(笑)

1000番のフーガは、若い頃(多分21歳くらい?)ギターに編曲して、中部日本ギター協会の新人演奏会で演奏したことがありました。この新人演奏会は現在のギターコンクールの前身で、最初の頃は予選なしでギター教室の推薦かなんかで出ることができたみたいでしたが、私が出たときの前年から予選による選考が行われるようになったと記憶しています。

このとき編曲の元にしたのは、ヴァイラオホによるタブラチュア版でした。でもその当時は、セゴビアの編曲弾かないでお前はいったい何のつもりか、というような変な風潮があったみたいで、実際審査員の先生の評は結構割れてたみたいでした。ま、それから何年もしないうちにリュート専業になりましたから別にそんなことどうでもよかったんですけどね。(笑)