リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

Easy Baroque Pieces (10)

2021年03月12日 12時06分49秒 | 音楽系
ドイツの北方、バルト海に面する港湾都市ロストックはハンザ同盟の主要都市として栄えた街です。そこの大学図書館に膨大な量のバロック・リュート曲を収めた写本があります。これらはドイツ南西部の連邦国家ヴュルテンベルクの皇太子である、フリードリヒ・ルートヴィヒとその娘であるルイーゼ・フリーデリケ(1722-1791)に由来するものです。

ドイツの南端に住んでいた人の写本が現在は北端にあるわけです。薩摩藩の古文書が津軽藩に残されているみたいですね。



実は王女ルイーゼは1746年からメクレンブルク皇太女になり、1756年から1785年までフリードリヒ1世公爵と結婚していました。メクレンブルクはバルト海を臨む地方でそこの一番大きな都市がロストックです。この関係で膨大なリュート曲がドイツ大縦断をしたのでしょう。ルイーゼがメクレンブルクに移ったのは彼女が24歳の時ですから、そっちに行ってからリュートを始めた可能性もありますかが、まぁなにせ王女様ですからヴュルテンベルク時代からリュートを習っていたと考えるのが妥当でしょう。

その王女様の肖像画がこちら。



少しお歳を召されてからの肖像ですが、小さめながら美しい手をしています。まさにリュートを奏でる手ですね。右手の親指の爪が伸びているようにも見えますが、断定はできません。原画を見れば多分わかると思います。ではこの王女様はどんな曲を弾いていたのでしょうか。