リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

Easy Baroque Pieces (11)

2021年03月16日 19時42分41秒 | 音楽系
ロストックの写本にこんなページがあります。



「リュート作品選、ヴルテンベルクのルイーズ王女閣下のための」とあり、この先はこんな感じの初級用の作品が続きます。



上の曲はニ短調のメヌエットとその変奏ですが、教育的な配慮が行き届いた「エチュード」という感じです。モダン楽器だと上達に応じて段階的により難しい曲に取り組んでいく道筋が確立されていますが、リュートではなかなかそういう風には行きません。でもさすが王女様は違います。専任のリュートの先生がいて、その方は王女様用のオーダーメイドの曲を作り指導していたのだと思います。

時にはこんなやりとりもあったかも知れません:

「私は、先週父上の館でヴァイスが演奏したファンタジーが弾いてみたいものじゃ」
「おそれながら、それはちょっと難しゅうございますゆえ、まずはこの曲はいかがでしょうか」

(パラパラと弾いてみる)

「おお、そちはなかなかいい曲を作るのう。ほめてつかわす」
「ははーっ」

王女様のための曲集は、しばらく見ていくとタブではなく五線譜のページが続きます。そこにはそれまでに書かれたソロ曲のバスが書かれています。



リュートの先生がそれを見て通奏低音を演奏し王女様と合わせていたのかも知れません。あるいは、先生クラスならタブからでも通奏低音はできますので、誰か別の人にチェロやガンバを弾いてもらうためのものだったのかも知れません。さすが女王様のレッスンは豪勢です。