リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

「すり替わり」その1、ガット弦編

2021年03月14日 16時38分17秒 | 音楽系
リュートにガット弦を張るととてもいい音がするのは事実ですが、いつのまにか弦を張ること自体が重要である、というふうにすり替わってしまうことがあります。

ガット弦を張っていても、ケバが出ていたらその弦は使い物にならないし、出てくる音はナイロン弦の方がずっとマシでしょう。そもそもナイロン弦でもいい音を出せない人は、どっちみちガット弦を張ってもいい音が出ないことに変わりはありません。調弦は合成樹脂弦の方がしやすいと思いますが、きれいに調弦できない人がガット弦を張った楽器を使うと、さらに音は合いません。

ガット弦を張れば自動的にいい音になるわけはなく、弦が何であろうといい音を出すための力をつけなくてはなりません。でもすり替わった論理が入ってしまうと、音が死んでいる古い弦を平気で使うし(ガット弦だから仕方がない)調弦も狂いまくり(これもガット弦だから少々は仕方がない)ということになり、こんなことなら「音が悪い」合成樹脂弦とか金属巻き線を使った方がよほどマシですというもの。アマチュアの方で以前合成樹脂弦+金属巻き弦を使っていてその後オールガットに変更した方で、変更前の方がずっと綺麗に演奏しているという方を何人も知っています。

私も以前ガット弦で運用していたことがありますし、何人かのプロの方もガット弦中心で録音やコンサートをしています。でも実際プロであってもなかなか大変であることは事実です。ガット弦を使うにはそれなりの覚悟は必要ですし、力量もつけなくてはならないでしょう。

すり替わってしまった論理のせいで、的確な判断ができなくなることは他のジャンルにもあります。次回はクルマ編で書いてみましょう。うまく書けるかな。(笑)