リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロック・リュート奏法の歴史的根拠と実践(28)

2023年01月02日 13時31分55秒 | 音楽系
でもlosということばは「解放して」という意味も載っています。バロンのこの著書はDouglas Alton Smithによる英訳もありますので、そちらの該当箇所を当たってみました。

It must be noted that during the motion the thumb, which otherwise remains firmly in the middle of the neck, is let free and loose.

氏の英訳からは、親指をネックから離すという意味合いの表現はありません。let free and loose を日本語に訳せば「(ネックの中央でしっかりと固定されている親指を)ゆったりとさせ位置を固定しない」という感じです。原著のドイツ語でいうと、しっかりと固定されている親指をゆったりさせる--->loss、位置を固定しない(といってもビブラートする指に合わせてほんの少し左右に動く程度)--->freh です。

私は古いドイツ語の知識がありませんので、本当はどうなのかはよくわかりませんが、奏者的な視点から行くとDouglas Alton Smith氏の訳が正確だと思います。

たった1語の意味の問題みたいですが、昔の奏法を探る上ではとても重要なことばです。正確な訳を追求したいところです。