リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

年末年始のアレンジ(1)

2023年01月04日 14時24分55秒 | 音楽系
年末から年始にかけて何曲か編曲をしました。

私の場合、リュートソロやアンサンブルの編曲はもはやSibeliusなしにはできません。もちろん昔ながらの紙の五線譜に鉛筆で書いていくという方法でもできますが、Sibeliusで作業した方が圧倒的に早く確実にできます。

まずBWV1006aのプレリュード。3コースを半音上げる版を作ってみました。Sibeliusはリュートも視野に入っている奇特な楽譜記譜アプリなので、バロック・リュートの調弦のタブとそのスコルダトゥーラにも完全に対応します。以前このアレンジはSibelius で作っていますので、3コースをラからシ♭にしたタブはすぐにできます。もちろんそれだけで完全なアレンジができるわけではなく、細かい調整が必要ですが、ある音を別の弦で弾くようにする場合はその弦にドラッグするだけでオーケーという優れものです。これを手書きでやっていたら、年末年始の空いた時間にチョイチョイというふうにはいきません。

このアレンジはヘ長調です。(ほとんどのリュート奏者はこの調で演奏しています)以前ホ長調版を、ミドラファレラのスコルダトゥーラで作ったことがありました。このスコルダトゥーラはロイスナーが使っていたものですが、これだと無理なく原調のホ長調で演奏できます。ただ問題なのは、2コースをレからドまで全音下げるので、弦がゆるゆるになってしまうことです。そこで1~3コースのミドラをミド♯ラにする版(4~6はファレラのまま)も作ってみました。これだと1、2コースをそれぞれ半音下げるだけなのでいつも使っている弦で対応できます。

かなり前にオイゲン・ミュラー・ドムボア氏が1006aはミド♯ラミド♯ラで演奏可能だという論文を発表したのを読んだ記憶があります。また最近の今村氏の録音では同じミド♯ラミド♯ラを使っています。ただここまで変えると「日常生活」の中で弾くわけにもいかないし、ましてやコンサートでの演奏はなかなか困難になります。4~6をファレラのままにするのは調律の問題以外にもうひとつメリットがあります。それは4コースの開放弦ファがミ♯として使えることです。ヴァイスの嬰ヘ長調のソナタでもそういう使い方をしている箇所があります。

もっとも7コース以降もソ、ファ、レ、ド、シ♭を半音上げなければホ長調に対応が出来ないので、これだけですでに「非日常的」ではありますが。でもヴァイスのイ長調とかニ長調、嬰ヘ短調のソナタと組み合わせればコンサートで弾くことも可能でしょう。