リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

VARIETIE OF LUTE-lessons、注目の注釈

2023年05月02日 16時27分51秒 | 音楽系
VARIETIE OF LUTE-lessonsの邦訳版に付けた注釈でぜひ見ておいてほしいものがあります。

ひとつは oyle of Tartarに付けた注釈。

これは当ブログでも何度も書きましたので詳しくはそちらをご覧頂きたいですが、このことばは外国のエライ学者先生でも勘違いしています。OED(Oxford English Dictionary)には炭酸カリウム飽和水溶液の古い言い方だとちゃんと書いてあります。もちろんと言ってはナンですが、ナンチャッテ訳本にはとんでもないファンタジー訳が展開されています。

次にcatlineに付けた注釈。こんな内容の注釈を付けました。

Venice Catlineは二重撚りだが、catline ということば自体はガット弦という意味で「二重撚りガット弦」を意味するのではない。

ヴェニスから出荷されるVenice Catline=二重撚りガット弦、catline=ガット弦です。でも二重撚りのガット弦=キャットラインというのがどうも日本のアマチュアリュート界では常識?になっているようです。誰がいったか知らないが、言われてみればタシカニ・・・というのとはちょっと違いますが、これの発信元はどなたなんでしょうね。

ちなみに日本語表記もキャットリンの方がよろしいです。catlineの-lineは「線」とか「ひも」という意味の接尾辞ではなく、名詞につけて小さくて愛らしいものを意味するようにする働きがあります。女の人の名前でEvelynとかKailynというのがありますが、かわいい系の名前です。ですからcatline (catlin, catling)「子猫ちゃん」というような意味になります。(上述のようにガット弦という意味もあります)そういえばバーゼルの声楽の先生でEvelynという先生がいましたねぇ。何度かテナーの人と一緒にレッスンを受けたことがありますがとてもチャーミングな方でしたよ。