リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

合成樹脂フレット

2023年05月18日 15時39分10秒 | 音楽系
イタリアの弦メーカーアキラが出している合成樹脂フレットを巻いてみました。

YouTubeでアキラ製合成樹脂フレットを巻くビデオクリップを見ましたら、コマ結びをして締めて、仕上げ?にもう一重結ぶという、普通に考えたら緩んでくるやり方でフレットを結べばオーケーという触れ込みでした。

ホンマかいなと思ったので何本か注文してみました。モノが昨日届きましたので早速巻いてみたわけです。実は私のバロックリュート(Lars Jönnson作)の9フレットは少し問題を抱えています。

多くのバロックリュートの9フレットはボディの干渉があって結構カチっとフレットを巻くのが難しいところです。位置がずれないようにネックに少し溝を切ってそこにフレットを入れ込むというふうにしている場合が多いと思います。私の楽器もそうなっているのですが、Larsが溝の切る位置を間違えて、音程が少し低い位置(ナット寄り)に切ってしまったので、私が自分で正しい位置の溝を切りました。ということで2つ溝が出来てしまいました。

フレットを私が切った正しい位置にあげていくのには、前の溝を通過しないといけません。これがなかなか難しく、きつく締めると一つ目の間違った位置の溝から出して正しい位置に持っていくのは容易ではありません。というかガットは余り伸びないのでほぼ不可能です。ですからゆるめに一旦締めて、ひとつめの溝を通過して2つ目の溝に入れ込むということをやっていますが、これだと緩くてフレットの両端が浮いてしまいます。仕方がないのでバス弦側に爪楊枝を挟み込むというちょっとみっともないことをしていますが、それでもまだ気持ち端が浮いている感じがします。

この9フレットをアキラの合成樹脂フレットに変えてみました。




ちゃんと2つ目の溝にはまっています。合成樹脂は伸びるので、1つ目の溝を乗り越えてくれます。

YouTubeのやり方できちんと締まりました。合成樹脂フレットは伸びるし、適度にひっかかるので上手くいくもんなんですねぇ。でも心配なので両端は切ったあと少し焼いておきました。合成樹脂は高温でトロトロに溶けるのでガットみたいにうまくタマは作れませんが。

これで味をしめたので、1コースもやってみました。1.2ミリです。9コースは細い0.85ミリなので上手くいったのでしょう、太い1.2ミリでは同じ方法では締めることができませんでした。旧来の方法でもうまくいかず、結局Toroのフレットガットを巻きました。合成樹脂フレットも上手な巻き方があるのでしょうけど、まぁわざわざそんな方法を研究する必要もないでしょうから、とりあえず「9フレット問題」が片付いただけでもよしとしましょう。