リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

連休中から読んだ本

2023年05月16日 13時40分45秒 | 日々のこと
連休中から先週末にかけて3冊本を読みました。

まず佐々木譲「闇の聖域」。佐々木譲はもう20年来のファンですが、どうも直木賞をもらってからはいわゆる警察小説ばかりになっていて、以前の第2次大戦の頃が舞台の「ベルリン飛行指令」とか幕末の「武揚伝」みたいな時代性あふれるスケールの大きな小説は減ってきたように思えます。「闇の聖域」は旧満州が舞台になっているというので、もしやと思い読んでみました。

でも読み始めてみてがっかり。やっぱり警察が出てきます。でもまぁ旧満州の都市描写の雰囲気はまずまずでしたが、なんか展開がだらだらしていて、しかも後半のエンディングは超人が出てきてもうファンタジーの世界。ちょっとがっかりでした。筆力がおちたのでしょうかねぇ。

次に宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」。これはKindleで読みました。この小説はライトノベルという感じの軽い乗りですが、滋賀県の大津市を舞台に成瀬という女の子を中心にした5話の短編連作です。徹底的にローカルな話満載で、もし私が大津市に住んでいたら何度も読み返すだろうなというくらい大津愛にあふれた作品です。とても軽快に話が進みますので皮膚科(イボ焼き)の待ち時間なんかでほとんど読んでしまいました。大津の人がうらやましいです。

3冊目は松本清張の「点と線」。若い頃読んだことがありましたが、昔読んだ本は字が小さすぎて読みにくいので新しく買いました。読み始めるとさすが大家松本清張、冒頭からぐいぐい弾き込まれていきます。展開はもうほとんど忘れてしまっているので新しい小説を読んでいるみたいです。この小説にも刑事は出てきますので警察小説とも言えますが、上述の「闇の聖域」とはことなり刑事の人物がしっかりと描かれています。あと興味深かったのは小説の舞台となった頃の時代性です。何度か出てくるたばこを吸うシーン、新幹線がまだなかった時代の鉄道、今ならアウトになることばなど小説が書かれた1950年代の時代性にあふれ懐かしさとともに引きつけられました。50年くらい前に読んだときは、まだ小説が発表されてから10年経つか経たないかのころでしたので、時代性というのは感じませんでしたが、こうして今読んでみると日本も60年で随分変わったものだと思うと同時に半世紀以上たっても全く色あせない作品だなと思いました。