リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

テレビ報道のあり方

2020年02月20日 14時39分44秒 | 日々のこと
昨日森友問題で籠池夫妻に有罪判決が出ました。今日泰典被告の保釈が決定しましたが、また各テレビ局は彼の言い分を大々的に流すのではないでしょうか。昨日は彼の妻がわめいているのをテレビのニュースやワイドショーで見ました。

泰典被告の話がテレビで流れるのを何度も聞いていると、彼には多少の非はあるかも知れないけど実はいい人なのかもなんて思えてしまいます。冷静に考えたら、彼がテレビの取材に応じるときに自分は悪うござんした、なんて言うわけはなく、実質的にテレビは彼のプロパガンダに与していることになります。

こういうのって以前もありましたよね。オウム事件のときの上佑史浩、ああ言えば上佑なんて言われた人ですが、彼の言い分(=オウムのプロパガンダ)を盛んにテレビは取り上げていました。

もっと昔だと荒木虎美。別府3億円保険金殺人事件で逮捕された人です。私が学生の頃だったと思いますが、彼も盛んにワイドショーなんかに出演して無実を訴えていました。こんな人、テレビで話をさせてはいけなかったですよね。

今回の籠池夫妻もマスコミ(特にテレビ)は有罪判決とか保釈の事実を伝えるだけにすべきであのオッサンの談話を取り上げる必要は全くありません。安倍首相に対抗する勢力が後押ししているのか、テレビ局自体がそうなのかは全くわかりませんが、報道の中立性が問われると思います。

日本語の音楽用語(5)

2020年02月19日 14時01分10秒 | 音楽系
空虚五度という用語があります。三和音(長三和音、短三和音)の三度音がない「和音」(そもそもこういうのは和音とは言わないようですが)のことです。ドミソで言えば、ミがないドとソだけの「和音」です。

ブルゴーニュ楽派(15世紀中頃)の「ブルゴーニュのオクターブ跳躍」を伴ったカデンツは必ず空虚五度で曲が終わります。もう少しあとのリュート音楽やヴィウエラ音楽にも一杯出て来ますし、ずっとあとの時代なら、ベートーヴェンの交響曲第9番の冒頭、ブルックナーの交響曲第9番第1楽章は空虚五度で終わります。

空虚を辞書で調べてみますと、「何もないこと、心が無の状態にあること、物事に実質的な内容や価値のないさま」などとありますが、上に例としてあげた音楽はとても充実していて力強いです。

空虚五度は英語では、open fifth, empty fifth というそうですので、この空虚五度というのは訳語としては正しいと言えるでしょう。ドイツがではどういうのかな?ただロックの世界ではパワー・コードと言うらしく、こっちの方は音の実態に則しているかも知れません。空虚五度は決して「何もない」とか「empty」ではありません。

お雛様

2020年02月18日 14時05分23秒 | 日々のこと
遅ればせながら我が家でも雛人形を出しました。段飾りは組むのが手間なので、お人形さんだけです。



高いところにしまってあるので、脚立を出して家内と2人がかりで人形の入った箱をおろしました。ついでにしまってあるところのお掃除。高いところの作業をすると微妙に足腰の筋力が衰えてきていることを感じます。多少はジムに行って鍛えなきゃあきません。

お人形をしまうのが遅れると、娘の婚期が遅れるなんてよくいいますが、そんなことはありません。我が家ではいつも出しっぱなしでしたが、娘はちゃんと結婚しています。実際しまう時期に関して特に決まりはないそうですが、晴れて空気が乾燥しているときにしまうのがよいようです。

パンデミック!?

2020年02月17日 17時21分40秒 | 日々のこと
今朝4月終わり頃に開催されるコンサートの主催者発信のメイルを見せてもらいました。それには、当該コンサートは現状を鑑みて延期(中止?)するとありました。新型コロナウィルスの影響によるリスクマネジメントとして早めに対応したとのことです。

このコンサートはアマチュアの方の発表会で、そこで客演を依頼されていました。2ヶ月先はいったいどうなっているのでしょうねぇ。もしそのころ中止しなければならないような状態になっていたとするならば、もう日本の社会は大混乱、経済も相当なダメージを受けているはずですから、逆説的ですが、あの時の中止の判断は正しかった、というふうになることだけは御免です。

実は私、そのコンサートより前にいくつかコンサートを抱えていまして、それらをどうしたものか、今まで考えたことはありませんでした。まぁ今のところ全て開催する予定ではいます。

台風接近で開催をどうするかというのは、今ではかなり精度の高い情報が得られるので、適切な判断が可能です。実際、一昨年度のバロック音楽の旅講座で、講座開始2時間前に当地方に暴風警報が出ましたが、私の判断で開催し無事終えることができました。警報発令から実際に当地方が暴風圏に入ったのは6時間後であり、気象情報から充分読み取れることでした。

今回の新型コロナウィルスの影響は2ヶ月どころか2週間先の状況ですら不確実です。今回の延期決定にはいくつかの要素が絡んでいたのかも知れません。自分のコンサートに関しては、慎重に様子を見て対応していきたいと思います。

かあさんの歌

2020年02月16日 22時31分05秒 | 音楽系
日本人に広く親しまれている歌のひとつに「かあさんの歌」があります。1956年頃に窪田聡という方が作詞・作曲した曲で、長野県長野市の田舎の情景をもとにした歌詞のようです。メロディもしみじみとした素朴な感じのするメロディです。「日本の歌百選(ホントは101曲)」にも選ばれています。

私は小学校の中学年くらいのころでしたか、確かNHKテレビのみんなの歌で聞いたのが初めてだったと記憶しています。実はこの歌についてその当時からひとつだけ気になっていることがあります。

それは歌詞に出てくる「せっせとあんだだよ」の「だだ」の部分です。私の小さい頃、アメリカの西部劇でよく黒人の召使いみたいな人が出て来て、「だんなさま、ご飯の用意が出来ましただ」なんて言い方よく聞きました。

この「あんだだよ」がまるで黒人の召使いが言っているようで、少し違和感みたいなものを覚えたものです。田舎の方言という感じがする言い方ですが、「かあさんの歌」の他の部分は3番の「もうすぐ春だで」という部分以外は方言的ないいまわしはありません。この曲の作者が情景を歌ったという長野市にはこういう方言があるのでしょうか。

実は「~しただ」とか「~だで」といういい方は名古屋とか三河の方言にあります。私は大学が名古屋で活動も名古屋とか愛知県東部を中心にしていたため、名古屋とか三河地方に何人か知り合いがいます。

例えば:

大学のときの同級生:「天気予報だとよー、明日は雨だで傘がいるなぁ」(さすがに「いるなも」とは言っていませんでした)

名古屋市内の楽器製作家:「ナカガワ君、今日はウチで飯食っていくだー」

西部劇の黒人召使いの「~しただ」は、映画の翻訳を担当した人が、黒人訛りの英語を日本語に訳す際に編み出したいい方だといいます。翻訳家がたまたま名古屋とか三河の出身で、「手軽に分かりやすく田舎っぽくなる」というので使ったのかも知れません。

「かあさんの歌」の作者がもし同じ手法を使って歌詞を書いたのだとするとちょっとがっかりはしますが、実際のところどうなんでしょう。

日本語の音楽用語(4)

2020年02月15日 13時29分48秒 | 音楽系
ヘンデルの曲でブレという曲があります。と言っても実際には何曲かありますがその中でも作品1の5番ブレ(HWV363a,b)のことです。この曲はヴァイオリンの練習教材としても演奏される曲です。私も幼少の頃ヴァイオリンを習っていましてこの曲をよく弾いていました。

ブレは4拍子の曲で、四分音符ひとつがアウフタクトになっています。軽快なテンポで演奏される舞曲ですが、私が習ったのはとても遅いテンポで、アウフタクト無視の弾き方でした。私にはこの曲が4拍子であるとは感じることができず、もちろんアウフタクトというのも知らず、ずっと3拍子かなと思っていました。ただ、3拍子だとすると途中で変になってきて拍子が分からなくなってくるんですが、そこは小学校の低学年、まぁそれでもいいか、と言う感じで真剣に考えたことはありませんでした。ちゃんと楽譜は見て弾いていたんですけどね。(笑)

ずっとあと(20年くらい後)になってリュートの通奏低音でこの曲を弾くことがあったんですが、3拍子が頭のなかにこびりついているものですから、なかなか上手く弾けませんでした。ちなみに今でも昔覚えたことが出てこないように必死にならないとこの曲だけは弾けません。三つ子の魂百までとはよく言ったものです。まぁ、この曲を弾いていたのは7つ子くらいでしたが。(笑)

YouTubeで、Handel Boureeで検索してみましたら、驚いたことに私が昔弾いていた弾き方のものばかりでした。スズキメソッドにたぶん入っているみたいで、それのビデオクリップがわんさか出て来て、むしろちゃんとしたバロック音楽の弾き方のものは皆無でした。アウフタクト感も全くありません。こんなんでいいのでしょうかねぇ。でもとても懐かしかったです。またこっちに引きこまれそう・・・60年以上前から脈々と、70年代のバロック音楽復興ムーブメントなんか何処吹く風、ここには別の世界が広がっていました。

日本語の音楽用語(3)

2020年02月14日 12時23分54秒 | 音楽系
日本語に訳してしまったがために事の本質を誤解してしまうような用語もあります。たとえば「弱起」。ドイツ語式ではアウフタクトといいます。音符がいくつか小節の前に出ている始まり方です。

これはヨーロッパ語の音韻構造に根ざしているもので、本質的に日本語にはないのでもっとも日本人が苦手とすることのひとつです。そもそも分かったと思い込んでいて、苦手という意識すらないかもしれません。

知り合いのスイス人のアマチュア奏者はアウフタクトをそれなりにできていました。同レベルの日本人アマチュアなら全くできないことです。それどころか日本人のプロと称する人たちでもこのアウフタクトがきちんと理解されてない演奏をすることがあります。

日本人によくありがちなのは、「弱起」の「弱」の文字があるため弱く弾いてしまうとか、それだけではまだ足りないので、スタッカートにしてみたりします。弱くひくことも短めにするのも実際にはあり得ることですが、いつも同じパターンで、これでは本質を理解しているとは言えません。本質は小節の頭の音に重みがはいることです。この「重み」というのも、「強い」というのは少し異なります。4拍子の曲のリズムを「強、弱、中強、弱」なんて学校で習いませんでしたか?これを実際に文字通りに演奏したら全く音楽になりません。「強」というのは「重さ」がかかるところなのです。

陽気に誘われて・・・

2020年02月13日 15時42分06秒 | ローカルネタ
昨日バロック音楽の旅講座に参加された方からメイルを頂きまして、最終回に出席できなかったので資料が欲しいとのことでした。で、今日の午前中に近くにの和菓子屋さんの前まで来て頂くことになり、資料をお渡ししました。確か80を超えてらっしゃる方だと思いますが、とてもお元気な方でまた来年度を楽しみにしているとのことでした。

今日は外に出てみると春のように暖かい日です。せっかく外にでたのでちょっと近くを散歩することにしました。青空が見えて日が差していましたが、四方は結構分厚い雲がありました。晴れているのはこのあたりだけなのかな?



私の散歩の定番コースは走井山行きです。ここは戦国時代に矢田城というお城があったところで、今は一帯が公園になっています。ここはまた桜の名所としても知られています。一帯は小高い丘で、あの有名な刀鍛冶村正の工房もこのあたりにあったそうです。ふもとの三岐鉄道北勢線馬道駅のそばには町屋川から流れてくる用水が健在です。こういうのはもう大概は暗渠になっているのですが、ここは昔と変わらないきれいな水が流れています。



階段を上っていくと走井山勧学寺の正面にでます。



あたりには庚申塔や戦没者の霊を祀る殉難の碑、そしてお菊稲荷神社と白龍龍神という神社もあります。お菊稲荷には賽銭を上げてお参りをしてきました。しかしこの両神社のいわれはどういったものなのでしょう?解説の看板がほしいところです。実はこのあたりは私が高校生の頃の帰りの通学路で毎日通っていたところです。このあたりはなんかちょっと不気味な感じもしていましたが、あまり関心はなく通り過ぎるだけでした。でもこうしてずっと存在しつづけているのはなんかいいものですね。

近くにはこんな句碑もありました。



なんて書いてあるんでしょうねぇ。400年以上前にロンドンで出版された本は読んでいるくせに、日本語のものはからっきしだめというのは情けないはなしではあります。※ネットで調べたらわかりました。「琅扞の竹ひびかせて木の葉降る(梶島一操)」です。うむ、琅扞ってなんでしょ?調べると「ろうかん」=真珠色をした美しい石。また、美しい竹の別名。なるほど。

帰りは、馬道駅横の水路を追いながら帰りました。


ここで北勢線をくぐり抜けます。


奥の高い建物は桑名高校のふもとにあるマンションです。


北東に向かって行きます。


養泉寺というお寺の前です。この左側の細い道は高校時代の行きの通学路。


この先暗渠になります。どこにつながるのかな?大山田川かしら。

そして一度に広軌、狭軌、ナローゲージの線路を渡れる世界で唯一の踏切、益生第4号踏切・桑名駅構内踏切・西桑名第2号踏切三重踏切、を一気にわたり国道1号線に出て帰宅致しました。





日本語の音楽用語(2)

2020年02月12日 13時28分27秒 | 音楽系
日本の義務教育では階名がドレミ、音名がイロハで習いますが、音楽を専門的に習う人は音名はABCで言うのが普通です。なんか妙にねじれているみたいで居心地が悪いですが、イロハは日本のそれこそ伝統といってもいいくらい長い間使われているので、この妙なねじれもそれはそれでいいのかも知れませんし、今更変更するとなるとかえって混乱するでしょうから、そっとしておいた方がいいのかも。

これを無理にやるとちょっとした混乱が。

メンデルスゾーン作曲ヴァイオリン協奏曲E短調(フランス語式を取り入れると「ミ短調」)
文字でみるとまぁ行けそうですが、発音するとE短調は「いーたんちょう」でイ短調に聞こえてしまいます。ミ短調は「みたんちょう」でニ短調と聞き間違えるかもしれません。

あとこんな場合も出て来ます。

嬰ヘ短調(えいへたんちょう)→F♯短調(えふしゃーぷたんちょう)←ちょっと長過ぎ
ハ短調(はたんちょう)→ド短調(どたんちょう)←音が汚い

ちなみに中国語ではイ長調はA大調、ハ短調はc小調と言うそうですが、こっちの方がすっきりしている感じもします。でも今更こちらに変更というわけにもいきません。

インターネットのURLを表すときにつける、http://wwwというのも、コロンやスラッシュが右手小指の使いにくい位置にあったり同じ文字を連続で打たなくてはならないので、キーボードで打つのが大きらいなんですが、最初に決めた人がもうちょっとユーザーのことを考えていてくれたらな、と思います。もっともこの部分は、最近のブラウザでは省略しても大丈夫ですが。社会のある意味「インフラ」となるようなことばを作る人は先々をよく考えてやってほしいものです。まぁ作ったときはなかなかそうなるとはわからないというのが実際なんでしょうか。

日本語の音楽用語(1)

2020年02月11日 16時42分25秒 | 音楽系
音楽を学ぶ際に避けては通れないのが音楽用語です。アレグロとかクレッシェンドのように外国語(主にイタリア語)をそのままカタカナにしたものが多いですが、日本語訳あるいはシステムを日本語化したものも結構あります。

日本語訳とシステムの日本語化の例として、例えば調性の言い方、ハ長調とかト長調とかいうヤツです、があります。英語やドイツ語の音名、ABCDEがイロハニホに対応します。それに英語のmajor (ドイツ語だとDur)を「長調」、minor (moll)を短調と訳した語が続きます。

同じヨーロッパでもフランス語だと、Ut majeur(ハ長調), Re mineur(ニ短調), Mi majeur(ホ長調) みたいにCDEではなく階名のUt Re Mi を使います。この Ut Re Mi というのは日本語の階名ドレミのもとになった言い方で、聖ヨハネ賛歌という中世における賛歌の歌詞の各行の冒頭をとったものです。

日本語のイロハも弘法大師が詠んだとも言われている「色はにほへとにりぬるを・・・」という和歌を使っています。「詩」を使うという点では、調性呼称の日本語置き換えとしては、音名ABCにイロハをあてるのではなく、階名Ut Re Mi (Do Re Mi)にあてたと言った方がきれいなのですが、イ=Ut ではありませんので、こうではなかったようです。明治時代の文部省音楽取調掛の役人がこういったことを決めたのだと思いますが、もし彼らがUt Re Mi (Do Re Mi)のいわれを知っていたなら、「イ=Ut(Do)」にしていたかも知れません。このシステムだと今のハ長調がイ長調ということになります。(笑)