その製作家は加納木魂氏。今も現役で製作されている方です。早速試作中の楽器を見せてもらいました。弾いてみてびっくり!私が持っているN氏の楽器とは全く異なります。とても良く鳴るのです。その場でその試作中の楽器を売ってもらえないかお願いしました。始めは少ししぶっていましたが、最終的にはゆずってもらうことになりました。
N氏の楽器は東京の方の愛好家の方に声をかけたら、すぐに買い手が見つかりました。当時はリュートをやってみようかという人がとても多かったのです。それはその母体(分母?)となっている大ボリュームゾーンたるギター愛好家の数が半端ではなかったからです。比率からすればそれほどではないでしょうけど、なにせ分母が大きかったので絶対数としては結構あったと思います。(この話はあとでもう少し書きます)
さて買っていだく方と連絡をとり、名古屋の日本楽器のはす向かいにある大きな喫茶店兼レストランで手渡すことができました。何でも日本航空の職員の方で飛行機でこちらにいらしたとのこと。声かけから手渡しまであっという間でした。
N氏はバロックリュートも作っていて、その形状は「戦艦大和」と言われるくらいペグボックスが大きく長く、ペグ自体も異様に長くペグボックスから出ていました。N氏の楽器を弾くリュート奏者H氏の写真が現代ギター誌某号の冒頭グラビアを飾っていました。こちらは10コースの楽器ですのでバロック・リュートほどは戦艦大和していませんが、でも戦艦長門くらいはいくかも。
全く異形のリュートというしかありません。
こちらは私の楽器。さすがに戦艦は陰を潜めていますが、それでもペグボックスの造りが間違っています。この楽器のペグ、実は「片支持」なのです。
結局N氏の楽器が私の手元にあったのは数ヶ月で、その楽器を使って一度もコンサートはしませんでした。