院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

水利尿

2013-03-02 00:22:17 | 科学
 利尿剤を飲むと尿がよく出る。どうしてよく出るようになるのか私はメカニズムを知らない。

 アルコールやカフェインにも利尿作用がある。その仕組みも私は知らない。

 医学部の生理学の実習で、水を飲むとどれだけ尿量が増えるかという実験をした。1リットルの水を飲むと、30分ほどで尿量が増え始め、1時間くらいで尿量はピークに達した。

 水を飲めば尿が出やすくなるのは当たり前で、なんでわざわざこんな実習をするのだろうかと学生の私は不思議に思った。

 実習後の教授の言葉に私は目を開かれる思いがした。教授は言った「これで水には利尿作用があることが分かったでしょう」。利尿作用??こういうのも利尿作用と言うの?

 私たちは水を飲めば尿が増えることを経験的に知っているが、メカニズムを知らない。飲んだ水がそのまま尿になるわけではない。飲んだ水の成分そのままが尿の成分と同じではない。つまり、水によって利尿のメカニズムが働いた結果、尿量が増えるのである。

 そうか!科学的には水には利尿作用があると考えなくてはならないのだ。それが証拠に、水を飲んでも汗の量は増えない。(スポーツをやる人で、汗をかくから水を飲まないという人がいるが、まったくの誤りである。水を飲まなくても汗はかく。飲まないで汗だけかいていると、脱水症になる。)

 水を飲むと尿量は増えるのに、汗は増えない。尿量と発汗量の調節は別々のメカニズムで行われていることが、これで分かる。水には利尿作用があるが、発汗作用はない・・という事実から、どうして尿量が増えるのだろうか?という疑問に繋がっていく。このようなところから人体の科学は始まるのだ。

 医学部が他の医療系学部や専門学校に優先するのは、こうした人体の不思議さ神秘さを体験させる教育が、医学部のみでしか行われていないことによるのではあるまいか?