院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

歯磨きの奨励を疑う

2013-03-07 00:10:05 | 生活
 私が子どものころから歯磨きは奨励されていた。歯を磨かないと虫歯になるというので、一生懸命に磨いた。

 小学校には屋根に人が乗れる選挙カーのような車が来て、指導員が入れ歯を大きくしたような模型をもって、歯の磨き方を教えた。そのころから、歯は横に磨くのではなく、縦に磨けと教わった。横だと歯の隙間に歯ブラシが届かないというのだ。

 なるほどと思って、そのように磨いた。そのうちに、朝だけではなく夜寝る前にも磨けと奨励されるようになったから、そのようにした。やがて、毎食後に磨けと言われるようになった。

 だが、小学校の時にすでに私には虫歯があった。たぶん歯の磨き方が悪いのだろうと自分で思った。おりしもライオン歯磨き株式会社が、食後30分以内に毎食後磨けとCMで言い出した。テレビには歯ブラシに歯磨き粉を4cmくらい付ける様子が映っていた。さすがにこの時、私はライオン歯磨き株式会社が歯磨き粉をたくさん使わせる策略ではないかと思った。

 そのうちにまた歯の磨き方が変わった。縦に磨くのではなく、横に細かく振動させよというのだ。だから、そのようにした。磨き方だけではなく、歯ブラシの毛先が変わって、前のよりこの歯ブラシがよいと宣伝されるようになった。歯磨き粉も変わった。塩入りとか薬用歯磨きとか3種類の色の歯磨き粉が出るチューブとかが発表されたが、全部消えていった。

 それでも、私の虫歯の増加は変わらなかった。ほかの子どもたちの虫歯も減らなかった。ただ、歯の健康優良児を表彰する制度があった。彼らは虫歯が一本もない。彼らはさぞ一生懸命に歯を磨いているのだろうな、と私は思った。

 あれだけ歯を磨いて何十年がたった現在、私には無傷な歯のほうが少ない。友人も同じである。ただ歯の健康優良児だった友人は、未だに一本も虫歯がない。これはどういうことだろうか?

 分かったことは、歯の健康優良児には口腔内に虫歯菌がいないということだった。虫歯菌が口の中に常在するようになると、もう取れなくなるのだという。別に歯の健康優良児の歯磨きの仕方が特別に優れていたわけではないのだ。

 子どものころから歯を磨き続けて、このありさまである。ということは、もし歯磨きをしなかったら、もっとぼろぼろになっていたのだろうか??証拠はないが、どうも虫歯の進行と歯磨きとはあまり関係がないような気がする。だから、これほど丹念に歯磨きをしなくて虫歯になったのではないか?

 虫歯予防デーまで設けて、国を挙げて歯磨きを奨励してきたのは一体なんだったのだろうか?

 今、電動歯ブラシのほうが手動の歯ブラシより歯垢がよく落ちると宣伝している。何十年も磨いてきたのに虫歯になった人たちに、手動の歯ブラシよりも電動歯ブラシのほうが優れていると、今後さらに歯を磨き続けさせるつもりだろうか??人間とは、そこまでやるものだろうか?