院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

内的状態を記述できる自閉症児

2014-09-07 00:01:10 | 読書
(エスコアール刊。)

 「みんなすごいスピードで話します。頭で考えて、言葉が口から出るまでがほんの一瞬です。それが、僕たちにはとても不思議なのです」

 上の発言は「すぐに返事をしないのはなぜですか?」という質問に対するある自閉症児の答えの一部です。その自閉症児とは写真の本の著者で、本が出版されたときにはまだ中学生でした。

 著者は上掲の本で、「どうしてオウム返しをするのか?」、「手足の動きがぎこちないのはなぜか?」、「ものを回すのはなぜか?」といった、自閉症児に対して多くの人がもつ疑問に答えています。どの回答も「ああそうだったのか!」と思わせるものです。

 この著者はテレビに出ましたが、嬌声のような声で話し身振りも不自然で、一見して障害者と分かります。でも、母親とのコミュニケーションのために練習したボール紙のキーボードを使えば、自らの内的世界を健常者にも理解できるように、客観的に述べることができます。文章も下手ではありません。(それなのに、音声言語による会話は困難なのです。)

 私は自閉症児が自らの内面をこれだけ豊かに表現したものを見たことがありません。この本によって、自閉症児の気持ちへの理解がぐっと深まるでしょう。著者の陳述がすべての自閉症児に当てはまるとは限りませんが、少なくとも上掲の本は、自閉症児と健常者の思考を架橋するロゼッタストーンのように私には思えたのでした。

キーワード:「自閉症の僕が跳びはねる理由」