院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

整理整頓はよいことでしょうか?

2014-09-08 05:55:34 | 文化

Kazami Japan (株)のHPより引用。)

 多くの事業所で整理整頓が奨励されています。きれいに片づけられた職場は生産性が上がり、働いている人も気持ちがよいものです。

 整理整頓がよいことだとされるようになったのは、農耕文明が発明されたころまで遡るだろうと、私は考えています。移動式の狩猟採集生活では整理整頓は、さほど重要ではありませんでした。

 農耕は季節の流れ、すなわち暦に従って整然と行われなくてはなりません。農地の区画や畝もきちんと作らなければならなかったでしょう。そこでは整理整頓の観念が価値をもつようになりました。

 農耕は一人ではできず、かならず共同作業となります。そこで監督者と被監督者といった役割分担が行われるようになります。穀物は蓄積できますから、富を分配しなくてはなりません。そこに身分制度が入り込む余地がありました。整理整頓の原理に従って、役割分担も一定の規律をもって整然と行われたことでしょう。それが固定化して支配関係が生まれ、ついに頂点に王をいただくまでになったと考えられます。

 農耕時代より前の狩猟採集時代には、人々は20~30名のバンドという単位で移動生活を行い、支配関係は固定化しないまま何万年も同じような生活を送ってきました。

 ところが農耕が始まると人々は定住し、集団は大集団となり、その集団をまとめていくために掟や法律のようなものが細かく必要になったでしょう。このようにして身分制度が肥大化し、農耕文明の成れの果てとして、種や個体の保存には何の役にも立たない巨大建造物が造られるようになりました。

 その最たるものがピラミッドです。ピラミッドを造るためにどれだけの食糧が空費されたことでしょうか?ピラミッドを造るには簡単な幾何学が必要でした。幾何学の美しさは、身分制度が画然と制定されるのに影響を与えたでしょう。

 こうして人類が豊かになったのならよいのですが、いつぞや述べたように、古い人骨からは農耕時代人よりも狩猟採集時代人のほうが栄養状態が良かったと推察されています。一度定住してしまうと、いくら貧しくなってももう移動生活には戻れず、農耕生活を続けるよりほかに手はなかったのだと思われます。

 こうして、そのような方向性が延々と現代まで続いているのだと、私は考えています。


※今日、気にとまった短歌

  大丈夫慣れてきたよと帰省子は汗こぼしつつカツ丼を食む  (豊橋市)森田ちえこ