(ニュートピアのHPより引用。)
新入社員で「この仕事は自分に向いていない」と3か月以内に退社してしまう若者が多いそうです。ここで、私は「自分に向いている仕事なんて元来ない!」と主張しますが、だからと言って「辛抱が足りない!」と言いたいわけではありません。
そうではなくて次のように言いたいのです。「現代社会において、人間に向いている仕事なんてない!」と。
人類は7万年くらいは狩猟採集で生活をしていました。約5千年前から農業を始めたのがいけないのです。(ここからは昔からの私の読者には自明のことですので、読み飛ばしてください。)
移動しながら動物や植物を採って食べる、というのが元来の人間の働き方でした。ところが農業が始まってから人間は定住を余儀なくされ、半年先の秋の実りを想像しながら春に種をまくという、たいへんな抽象労働を行うようになりました。抽象労働はもともと人間には向いていないのです。
さらに近代以降、機械文明が発達して、やり投げや小川を跳んで跨ぐことが上手な人よりも、言葉で他人を操る人のほうが価値があるという奇形的な世界が現出しました。
このような現代の労働に向いていない人のほうが健康だと私は思います。仕事の構造が極端に抽象的になって、人間世界の全員が仕事の局所しか取り扱わないようになりました。本来は獲物を獲って捌いて料理するまで、すべてが見通せたのです。これらが見通せない仕事なんて、人間には耐えがたいものです。
適者生存の法則で、耐えがたい世界でも生きていける人間が生き残ったのではないでしょうか?しかし生き残った人間でも、わずかに残されている原始の心は「いやだいやだ」とわめいているように思えてならないのです。