院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

手話は禁止されていた!?(1)

2014-09-11 00:15:24 | 日本語

(手話キャスター、木村晴美さん。NHK手話ニュースのHPより引用。)

 いまでこそNHKで「手話ニュース」が放送されたり、政治家の演説に手話通訳がついたりして、手話はとうぜんの表現手段になりましたが、私は医者になりたての30数年前には手話はむしろ禁止されていたのです。ご存じでしたか?

 聾者は口話法(読唇術)で相手の話を読み取ることが合理的とされ、手話は口話法の習得を妨げたからです。手話の忌避はひとつの立派な立場でした。聾学校では手話は教えられないため、手話は先輩から伝承する形で「隠れて」使われていました。

 ですが、同じころ主に若い女性の間に手話ブームがおこりました。手話はジェスチャーですから、はたから見てすぐにそれと分かります。当時の女性にとって目立つことはファッションとして重要な要素でした。(「口話法」は習得が手話より格段にむずかしく、習得しても目立ちませんから、彼女たちには採用されなかったのでしょう。)

 また、着飾るだけのファッションと違って、手話には福祉活動の香りがします。そこがカッコよかったわけですね。こうして手話ブームはまたたく間に広がり、NHKでは手話の教室を放送するようになりました。それでもまだ、手話は「公式」のものではありませんでした。

 手話が法律で公式の言語として認められたのは、なんと3年前の2011年のことでした。

 医学的な診察で手話がどの程度役に立つかというと、精神科においてはまったく役に立たないことを 2007-01-06 の記事で述べました。「寝つきはよいのに夜中に何度も目を覚ましますか?」が手話でなかなか通じませんでしたが、筆談ですぐに通じました。そのときの手話通訳者が下手だっただけかもしれませんが。