Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

2010年のクワガタ獲り

2010年08月09日 | 家・わたくしごと
 なぜ中学2年にもなった息子が「お父さん、クワガタ獲りに行こう」といったのかはわからないが、ぼくは東京の実家での最後の晩を迎えた息子と懐中電灯を持って2年ぶりに、夜8時をまわった玉川上水の木々に囲まれた散歩道に出かけた。
 息子は意外にもかつてここでクワガタ獲りをしたときのことを詳細に記憶していて、そんな記憶の断片が、木々の間を歩きながら次から次へと湧き出るかのようだった。
「この木で昔、クワガタをとったんだ」
「この木は前には、たくさん樹液が出ていたね」
 彼は「クワガタを獲る」という行為よりもむしろ、「過去の記憶の快楽」を楽しんでいるのだろうか?
 結局、1時間でつかまえたのはノコギリクワガタのメス一匹だけだったが、彼は帰り際満足ありげにこういった。
「まだ、東京の街にもこうしてクワガタがいるのはうれしいよね。」
 なんだかすっかりクールになっていく息子を見ながら、かつてはつかまえたクワガタを見つめながら、誇らしげに、そして満面の笑みで歩いていた小さかった息子を思い出して懐かしかった。子どもは大きくなっていく。そしてぼくは……。