社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「家族を支え続けたい!ナースが寄り添うグリーフケア」

2011-04-22 14:58:09 | 看護学
宮林幸子 『コミュニティケア 2010年 6月臨時増刊号』

グリーフケアの成り立ち、定義、現状と課題など、丁寧に簡潔にまとめられている。
臨床での取り入れ方についても触れられており、参考になる点が多い。

引用
・残された人々の悲嘆と、個人の悲嘆の消化作業とその過程を含めて悲嘆の作業(グリーフワーク)と言う。
・日本人の悲嘆の心的反応は、①思慕、②疎外感、③うつ的不調、④適応対処の努力、の4要素が中核になる。
・悲嘆相談時の介入方法は、情報的・情緒的・道具的・治療的介入の4つにまとめることができる。
・(グリーフケアにおける)医療ソーシャルワーカーの役割:人間関係図やジェノグラム(家族構成図)のほかにエコマップ(ソーシャルサポートに有効)を用意できる大きな強みがある。〈中略〉看護師との連携による情緒的・情報的な援助のほかに、道具的な援助の手を差し伸べることもできる。



緩和ケア病棟や高齢者施設において、終末期加算が認められたが、それはあくまでも「本人が亡くなるまで」のケアに対してであり、家族の予期悲嘆~死別後の悲嘆は含まれていない。
終末期加算があることで、看取りの姿勢の取り組みが促進されつつあるが、場所も時間軸も制限されている。
ソーシャルワーカーの配置がない組織も多いが、医師や看護師による取り組みに限界があるのであれば、今こそソーシャルワーカーがその機能を発揮できるということを示していく必要があると考える。


ナースが寄り添うグリーフケア―家族を支え続けたい!
クリエーター情報なし
日本看護協会出版会
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「生命・生活の両面から捉える 訪問看護アセスメント・プロトコル」

2011-04-21 16:18:04 | 看護学
山内豊明 監修/岡本茂雄・編集 中央法規 2009


看護診断→看護計画についてのフローチャートを提示。これを活用することで、看護師によってアセスメントが偏るという問題を回避できるとのこと。
看護師にとっては、実践に盛り込みやすい材料であり、他職種にとっては、看護師が捉える視点を理解することを助け、また症状から何が派生するのか、といった医療知識を得る上で役に立つと感じた。

引用→
・厚生労働省は、施設での終末期の医療費を月に112万円と想定しているが、一方在宅での終末期を試算すればケースにもよるが、50万円内外である。
・(先行研究からの引用)痛みの感じ方に関する因子
【痛みの感じ方を増強する因子】
不快感 不眠 疲労 不安 恐怖 怒り 悲しみ 抑うつ 倦怠 孤独感 社会的地位の喪失
【痛みの感じ方を軽減する因子】
他の症状の緩和 睡眠 理解 人とのふれあい 創造的な活動 緊張感の緩和 不安の減退 気分の高揚



訪問看護の役割は、家族・親族が患者を援助することを援助する…とのこと。
確かに在宅においては、家族は介護の担い手であり、時には看護師と同様の医療処置を期待されることもある。しかしながら、家族も一生活人であり、単なる介護者にとどまらない。この視点こそ大切であり、ソーシャルワーカーの役割が期待される側面であると考える。


訪問看護アセスメント・プロトコル―生命・生活の両面から捉える
クリエーター情報なし
中央法規出版
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「遺族の動揺が激しく、興奮が収まらないとき」久保田千景

2011-04-15 08:36:29 | 看護学
『EMERGENCY CARE』2011 vol.24 no.2

救急領域におけるグリーフケアについて、家族理解に役立つシステム論の説明や事例を踏まえて論じている。

引用
・救急領域でのアセスメント内容
①家族の発達段階
②家族システム(サブシステム)、死亡した家族成員とほかの家族構成員との関係性、家族役割(死亡した家族成員の家族役割機能)
③家族成員を支援している家族成員
④救急搬送、入院に至るエピソード(交通事故、自殺、脳出血、慢性疾患の増悪など)



グリーフケアの領域からみると、「概論」に近い内容となっている。そのため、救急領域という範疇にとらわれずグリーフケアの基本を学んだり、グリーフケア業務に組み込んでいくという時に活用しやすい資料が多い印象を受けた。
緩和ケア病棟や在宅緩和ケア以外にも、こういったケアが導入されつつあることを嬉しく思う。

エマージェンシーケア 24巻2号
クリエーター情報なし
メディカ出版

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「アメリカとイギリスのグリーフケアと死生学の実際-日本への導入にあたって感じたこと-」宮林幸江

2010-11-19 20:20:24 | 看護学
『社会福祉研究』第106号 2009.10

 アメリカとイギリスにおけるグリーフケアと死生学について概観している。自身が参加した研修会等の報告を踏まえた論述であり、具体的な研修プログラムを知ることはできるが、学問的な背景を知るという面では、少し物足りない印象を受けた。

引用
・アメリカにおいて
⇒病院・ホスピスの治療対象者には、死別後のアフターケアが用意されていることが説明される。死亡後7日以内に、病院側から電話もしくは訪問により遺族にグリーフケアのオファーがなされる。
⇒全グリーフケアの5~10%はドネーション(寄付)によって賄われている。

・イギリスにおいて
⇒イギリス全土をカバーする遺族ケア組織が存在する。この組織の設立目的は、①無料で情報、アドバイス、カウンセリング援助を意死別遺族に提供する、②死別遺族を支援する人や組織に対する援助や情報の提供、トレーニングの機会の提供とその組織についてお知らせをする、③死別者により関心を寄せるように、キャンペーンや情報サービスを行う、④訓練されたボランティアを利用したいという遺族に紹介する。


法律によって、もしくは宗教的な背景があって、両国ではグリーフケアが充実している。そしてまた、きちんとした組織によって、グリーフケア従事者の教育プログラムが用意されていることも、その普及の要因であろう。
財政的に、組織的に、継続的に…多くの側面で、日本は学ぶべき点があると痛感した。



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「在宅ホスピスケアにおける利用者の家族とケア提供者が共有できるクリニカルパスの開発」島内節

2010-11-01 10:09:27 | 看護学
『財団法人 笹川医学医療研究財団 平成16年度研究助成 報告書』

 在宅ケア開始期・小康期・臨死期・死別後に家族と専門職が共有可能なクリニカルパスを開発することを目的としている。
アセスメント項目の妥当性を検討するため、ガン高齢者、徐々に衰退した高齢者の2タイプの事例を用いて抽出作業を行い、ケア提供者側、家族側が必要とする項目についての調査を実施している。


・がん高齢者の経過時期に関わらずニーズ、ケア実施、アウトカムともに低かったのは、「やり残していることを実施できるようにする」である。
・死別後のケアについて、全回答を通して、「死別後のケアは十分ではない」という見解が示された。
・経過表(クリニカルパス)を本人に示したいか?⇒「利用者本人には示さずに家族が利用することに限定したほうがよい」という結論に達した。


家族とケア提供者が共有できる…ということが目的であるため、「本人の存在はどうなるのか?」と問いは愚問なのかもしれないが、終始、その疑問は消えなかった。
本人に対して「ケアが提供されたか?」を判断しているのは、家族であり、本人そのものではない。これに関連して、上記で紹介した「やり残したことを実施できるようにする」についてのニーズが低かった、というのは十分に納得ができない。もともと、「いつ天に召されても悔いはない」という状態であったのか、それとも家族から見た判断に過ぎないのか…このあたりの言及を深める必要があるだろう。

米国では、本人と家族は別の人格であり、別のニーズがあり、別の意志があるとはっきりと示されている。家族がホスピスケアを受けさせたいと思っても、本人が拒否すればその意思が優先される。
文化の違いだからと一喝するのは簡単だが、学ぶべき要素もあると感じる。

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「在宅医療におけるホスピスケア-実現に向けての教育とシステム構築の提案-」大西奈保子(2010)

2010-09-13 19:30:05 | 看護学
『死別の悲しみかた立ち直るために』聖学院出版会

在宅ケア、在宅医療、在宅ホスピス緩和ケアの歴史的経緯を盛り込みながら、今後の発展に向けての課題提示をしている。
目新しい視点や論点は見当たらないが、これまでの歴史的経過については、分かりやすく頭の整理に大変役に立った。

引用
在宅で生活を支えるためのケア(先行研究を引用している)
デイリーケア:毎日数回日常生活上で必要なケアであり、モーニングケア、食事ケア、排泄ケア、移動ケアなど
ウイークリーケア:週単位で必要にあるケアであり、洗濯、掃除、買い物、生活習慣の違いにもよるが入や清拭などの清潔ケアなど
クオリティーケア:遊びや生きがいを保障するケアであり、具体的には散歩や趣味や旅行などへの援助


現代は、死が医療のなかで行われており、生活のなかで「看取り」を経験する人が激減している。それは福祉従事者にも言えることで、在宅ケアには不可欠である介護職員にも「看取り」に関する教育が不可欠であると指摘している。
この指摘はもっともである。こういった場面にも携わり、そして不可欠構成員であるという認識がもっともっと浸透すれば、介護職員の待遇も良くなるのかもしれない。
お金がすべてではないが、「緩和ケア」をプロの仕事としてシステム化していくのであれば、それ相応の保障が必要である。
「家族介護の社会化」という認識から脱却し、専門職としての地位の向上とそれに伴ったプロとしての意識・技術向上が、在宅ケアを推進するための不可欠要因であると考える。

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「闘病記とグリーフワーク-遺族が書くことの意味-」門林道子(2010)

2010-09-13 11:32:58 | 看護学
『死別の悲しみから立ち直るために』平山正実/編著 聖学院大学出版会

遺族が書く闘病記を通して、グリーフワークとはなにかを分かりやすく言及している。
多くの遺族が闘病記を書き始める時期は、グリーフワークの「再生」の時期と一致する…など、興味深い分析が多くあった。

引用
・悲嘆作業すなわちグリーフワークとは、故人の死を再確認し、追悼する作業である。そして、同時に遺されたものが、再生し、また新たな人生に向かって一歩を踏み出すための心理的成長の変容過程だといえる。
・「遺志の社会化」…故人の残された意志を聞きとって、それを社会にいこうとする遺族の行為。


書くこと、描くことは、遺されたものの感情表出の大切な一方法であると、ある洋書で読んだことがある。
健康なときでも、悩みやストレスがたまったときに、書きなぐったり、喋りたおすことは、頭の整理につながることもある。
遺されたものにとって、書く/描く行為は、頭の整理にとどまらず、感情の整理にもつながるのだろう。
援助者には、書かれた/描かれたものは何を意味するのか。それを追求できる、それに寄り添う技術が求められるのだと思う。




死別の悲しみから立ち直るために (臨床死生学研究叢書 2)

聖学院大学出版会

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「がん患者を親にもつ子どもへの病状説明と予期悲嘆」小島ひで子(2010)

2010-09-11 10:05:12 | 看護学
『死別の悲しみから立ち直るために』平山正実/編著 聖学院大学出版会

がん患者の親をもつ子どもに対する、病名の告知、余命の告知、そしてグリーフケアの在り方について言及している。事例を通してその取り組みの実際、課題が提起されている。
子どもに対して告知を決めた親の気持ち、子どもに親の病気の説明を行った医師の気持ち、様々な立場からの声を知ることができた。

引用
・先行研究(バーンズ)を引用している
⇒「ほとんどの母親は、確定診断後、子どもに病名は出さずに話し始めたことろ、子どもの質問、とくに死に関する質問への返答が難しいと述べている。母親は、主治医と病気や治療について、コミュニケーションが良好な場合でさえ、子どもへの病状説明を依頼することは少なかった」

・わが国では、親ががん告知を受けた場合、子どもたちに親の病状説明をすることは、医療従事者の意識も含め、まだ一般的ではないのが現状である。

・筆者の行った調査研究を踏まえ、「がん患者が子どもへの病状説明をする場合、医療機関がどのような支援をするか」
①がん患者の入院時、もしくはかかわる際に、家族の状況をアセスメントすることである。その際に親ががんにかかったときの子どものリスク要因を十分に考慮する必要がある。ひとり親、一人っ子、年長児であることなどの家族背景や、親の身体機能低下や精神的苦悩が生じたとき、治療の副作用が増強したとき、とくに6~10歳に問題行動の危険性が高いこと、女子、とくに再発し苦悩する親をもつ女子にストレスと抑圧する傾向が生じ危機に陥りやすいことなどを把握しておくことが非常に重要である。
②多数のリスク要因をもつ子どもがいる家族の場合、看護領域を超えて対応できる流動的立場の小児看護師などの医療従事者が必要となる。


子どもは、年齢によって、さらには個人によって、言葉の習得や理解の範囲も異なってくる。それでも「いつもと違う」「なにかが違う」という“感覚”的なことにはとても敏感である。
病状の告知、余命の告知は、最終的な親の判断になるのだと思うが、親の体やこころの変化に子どもが不安を抱き、亡き後に「負の印象」を抱き続けないためには、適切な支援が必要である。
グリーフケアの範囲の広さ、そして重要さを痛感した。

予期悲嘆:死別を予期した時に起こる悲嘆反応



死別の悲しみから立ち直るために (臨床死生学研究叢書 2)

聖学院大学出版会

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「オーストラリアの高齢者緩和ケアの現状と課題」福田裕子(2009)

2010-06-02 10:22:39 | 看護学
『海外社会保障研究』Autumn No.168

オーストラリアにおける高齢者緩和ケアの現状を、主に文献研究によって報告している。
統計として報告されているものは、その年代がマチマチであり、純粋な「現状」とは言い難い印象を受けるが、オーストラリアの取組と、我が国への問題提起については、大変参考になる。

オーストラリアは、誰でも、どこでも、いつでも、緩和ケアが受けれられるように、国家予算を組み、積極的に取り組んでいる。


①オーストラリア保健高齢省が規定する緩和ケア対象
「特定の疾患に限らない。すべての高齢者ならびにその家族と介護者」
②オーストラシリアの高齢者緩和ケア⇒Triangle of care(ケアの三角形)
 急性期病棟、緩和ケア病棟、コミュニティ(在宅、介護施設)
 *各々が役割を明確に持ち、ケアの漏れがないようにシステム化されている
 *急性期病棟、緩和ケア病棟にはSWが配置され、コミュニティ(特に在宅)では、看護師が中心となって連携を図っている様子
 緩和ケア病棟の役割…急性期病棟から在宅移行の際に、調整期間としての入院を受け入れる。家族のレスパイトケアのための入院を受け入れるなど。
③家族ケア…介護給付金の支給、ビリーブメントケアを実施を明確化(地区別で、SWやカウンセラーらが行う)


論文の筆者もコメントしていたが、国家戦略として予算を組み、来るべき高齢社会への対応を真摯に行っている面は、我が国も見習うべきことであろう。
また高齢者に関しては、疾病に限らずに全ての人が緩和ケアの対象となる(他の年齢層については触れられていないため不明)。
適切なケアを提供できるように、スタッフ教育についても、国家予算が組まれている。

羨ましい!という言葉しか出てこない






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『米国ミシガン大学メディカルセンターを拠点とした在宅認知症高齢者の緩和ケアに関する研修報告』

2010-05-21 06:43:22 | 看護学
安藤千晶・亀井智子 「聖路加看護大学紀要」No.32 2006.3

筆者らが参加した、米国医療機関での研修報告。
米国の医療制度についても簡単な説明があり、読みやすい。
患者参加の医療体制の在り方や、学際的なチームアプローチの現状等、わかりやすくまとめられている。

新規受診患者アセスメント
…医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー等の各職種が、アセスメント前後にカンファレンスルームに集まり、情報の共有化を図る。その後、各々がケアプラン作成を患者の同意を得ながら行う。
利点→①患者中心であるため、患者も積極的に治療に参加できる ②各専門職の時間の節約になる

看護職が介護職に指示を出し、スーパーバイザー役となる
…米国におけるケアの概念は、医療的ケアとともに食事や入浴なども含んだ、全てのケアを包括するもの。それゆえに、この形態が成り立っているのではないか(筆者見解)。
…一方日本においては、介護職は入浴・排泄・食事等を行う独立した専門職として存在しているため、看護職とは「協働関係」という立ち位置の方が強い。少なくとも「指示関係」ではない。


カンファレンスの有効性は、多くの研究者が提案し、そして多くの実践者もまた、その必要性を痛感しているであろう。それでもなお、定期的に実施できない、負担に感じてしまうという問題は消えない。
人員を豊かにすれば、スタッフひとりひとりの時間も豊かになるだろう。
もしくは意識の問題か?情報の共有化と専門職間の「分かり合い」は、決して時間の無駄ではなく、より良いケアへの近道になるかもしれないということを、うまく浸透させていければいいのだけれど…。

看護職と介護職。日本では「嫁、娘」が担ってきた「介護労働」を社会化させ、質の向上を図るために専門化に努めてきた。
私は社会福祉の出身であるため、看護職の指示の下で介護職が業務を遂行する、ということに抵抗を感じる。それよりも、学際的なアプローチを行うために、介護職ならではのアプローチを今以上に提唱し、そのチカラをアピールして欲しいと思う。



コメント (3)
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