社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「複雑性悲嘆の理解と早期援助」瀬藤乃理子・丸山総一郎(2010)

2010-08-08 09:24:10 | その他
『緩和ケア』Vol.20 No.4 JUL

死別後の遺族には、「悲嘆反応」がある。それが正常な反応である場合と、何らかの治療を必要とする重篤な反応の場合がある。
重篤な反応についてのアセスメント、それに対するケア提供者の姿勢についてまとめている。日本では聞き慣れない「複雑性悲嘆(CG)」の定義を踏まえ、それらを説明している。

引用
複雑性悲嘆:complicated griefとは?⇒死別に関連した特殊な障害で、重い精神症状や社会的機能の低下を引き起こし、専門的な治療を必要とするもの。

CGの特徴として最も受け入れられている見解⇒①6カ月以上の期間を経ても強度に症状が継続していること、②故人への強い思慕やとらわれなど、CG特有の症状が非常に苦痛で圧倒されるほど極度に激しいこと、③それらにより日常生活に支障を来していること

死別を扱うケア提供者に重要な視点(洋書を引用している)⇒①複雑化した死別と複雑化しない死別の反応の違いを理解する、②より脆弱な方向へと向かわせる個人の危険因子を同定する、③回復を阻害する要因を正しく評価しモニタリングする、④不適応を予防し最小限にするための行動をとる

医療従事者ができる家族・遺族援助
・死別後のリスクの高さの予測
・死別後の相談窓口としての役割…など


以前読んだ1990年代の洋書で、「複雑な反応をしめす悲嘆」を扱っていたが、20数年を経てようやく日本でも注目を浴びるようになったのだと感じた。
この論文の筆者も指摘しているが、日本においては「悲嘆」についての議論がまだまだ十分ではなく、またケア提供者への教育も浸透しているとは言えない。
「現在の医療制度の枠組みの中で行うことは困難な面が多いが、今後は医療の一環として取り組まれることが望まれる」という提言は、もっともだと思った。

緩和ケア 2010年 07月号 [雑誌]

青海社

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