社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「介護支援専門員の高齢者虐待事例への対応プロセスとその促進・阻害要因に関する研究」

2011-03-13 05:57:38 | 社会福祉学
大塚理加、菊地和則、野中久美子、高橋龍太郎『社会福祉学』第51号第4号(2011)

介護者から高齢者への対応について、介護支援専門員が虐待であると判断する事柄と、それを把握したあとの対応とその種類について、どのような要因が絡んでいるのか、郵送調査→分析している。

引用
・在宅高齢者の養護者による虐待は、2008年度には、21,692件(厚生労働省)。
・被虐待高齢者の7割が要介護認定を受けており、8割以上は同居の養護者からの虐待であった(厚生労働省)。
・介護支援専門員の虐待プロセスでは、虐待に関する情報量・源が多いこと、阻害要因として養護者の事情への過度の配慮等が示された。


 「医師により、“明らかに介護者が与えたあざでしょう”と診断され」、最終的にそれが決定打となり虐待として対応した介護支援専門員もいるという。果たして、すべての医師にそれを見極める目があるのだろうか?
 開業医として、患者さん・ご家族に密着した姿勢で診療活動をしている方もいる一方、週に1回のパート勤務の方もいる。問題は、医師が患者さん・ご家族と接する頻度ではなく、「問題視できる姿勢」であろう。医療的な判断は、介護支援専門員では限界がある。それゆえに、筆者が述べているように、介護支援専門員のみならず関係職種に対する徹底した研修が必要であろう。研修はどのように行われるべきか?
 年に数回の「啓蒙活動」では意味がない。米国では、エビデンスに基づいたチェックリストが存在し、どの職種も同じように判断できる材料が用意されている。そしてそれに基づき、指導するスーパーバイザーが組織に配置されている。「養護者を疑いの目でみる」のではなく、養護者もケアを必要としている対象者であるとあらためて認識し、対応を検討していく必要があるだろう。
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