社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「ホスピス・緩和ケア病棟の患者-家族間で交わされる思い・言葉について」中里和弘(2013)

2013-05-11 17:48:44 | 心理学
副題:患者-家族が伝え合う「ありがとう」を支えるために
『遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究2』日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団

 終末期に、患者と家族の間で交わされる思い・言葉の実態を明らかにするため、遺族を対象に質問紙調査を実施。日本人特有の「言葉にしなくても思いは通じる」という側面が明らかになった一方で、医療従事者への要望(課題)も浮き彫りとなった。

引用
<調査結果より>
・言葉を交わさなかった遺族でも、8~9割が「気持ちを受け取った/気持ちは伝わった」と回答をしていた。
・家族から患者へ「思いを津与える行為」に影響する心理的要因…「患者に死を意識させるようでいやだった」「あえて言わなくても、お互いに思いは通じ合っていると思っていた」

・医療者は単に家族が患者に言葉を言ったかどうかではなく、それをどのように受け取っているのかに配慮する必要性がある。言葉にしなかった遺族に対して、後悔や辛さを十分に受け止めたうえで、遺族自身が「言葉は伝えられなくても気持ちは伝わった」と思えるよう意味付けられることが重要となる。
・(医療者は)家族が思いを伝えることに不安や抵抗を感じていないか、タイミングや伝え方が分からないと感じていないかをより注意深く観察した上で、必要に応じて患者・家族に両者の思いを繋げられる言葉かけや環境調整をすることが求められる。


家族間の問題には、とかく医療関係者は踏み込みにくさを感じてしまう。それは、日本人特有の感覚なのかもしれない。
相手が亡くなってしまったあとでは、伝えたいことも十分には伝えられない。それが相手に届いているのか、聞こえているのかに関係なく、相手に「伝えた/話した/言った」は大切な行為なのだと思う。

そして、双方の関係性にも違いはあるだろう。長年連れ添った夫婦間、まだ言葉の理解ができない新生児や乳児と親との関係などなど…。
それでも援助者は、少し目を配る(頭の隅にこういった情報を入れておく)だけで、対応が違ってくるであろう。
ちょっとの工夫や、ちょっとの勇気で、救われる家族(遺族)がいると痛感した。
コメント
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