社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「遺族からみたホスピス・緩和ケアにおける望ましいソーシャルワーク」赤澤輝和(2013)

2013-05-21 06:27:57 | 社会福祉学
『遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究2』日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団

緩和ケア病棟に入院した経験のある患者の遺族を対象に、ソーシャルワーカーへの相談経験と相談援助に対する評価を明らかにするために、質問紙調査を実施した。その結果と課題について提起している。

引用
・ソーシャルワーカーに相談していない、わからないと回答した遺族のうち、ソーシャルワーカーに相談できることを知らなかったと回答した遺族は64%であった。
・ソーシャルワーカーが行った個別援助のうち、60%以上の遺族が「解決した」と評価した援助は、「緩和ケア病棟の入院の手順に関すること」「緩和ケア病棟に入院する条件のこと」「緩和ケア病棟で受けられる医療やケアに関すること」などであった。
・ソーシャルワーカーに相談していないと回答した割合が60%以上であった項目は、「患者様が亡くなられた後の悲しみについて」「患者様が亡くなられた後の生活のこと」「お看取りに関すること」「患者様が亡くなられることに関したつらさについて」であった。


ケアの入り口については、ソーシャルワーカーがその役割を果たしていることが顕著となり、患者さんへのケアを終え、ケアの対象が家族に移行していくことへは手が行き届いていないことが分かった。これは緩和ケア病棟にかぎらず、保健医療領域のソーシャルワーカーにとっての今後の課題であり、また可能性でもあるだろう。

調査結果において、ソーシャルワーカーが高い評価を得たものに、入院の手順に関すること、入院する条件に関することがあった。
これらは、すでに回答が出ているものを伝えていく作業でもある。もちろん、この伝える作業の中に、患者・家族が持っている課題を解決していくプロセスが含まれているのかもしれないが、情報を伝えるだけにとどまってはいないか?と思った。ソーシャルワーカーが個別援助と思っていても、家族が「説明をしてくれた人」とだけ認識していないか?という懸念でもある。
一方で、遺族ケアのみならず、「家族の中で意見をどうまとめていったらいいかについて」「ご自身について」といった、より内面にアプローチしていく項目は低かった。デリケートな部分への介入は、とても難しく、時間を要する場合もある。でもこの部分にいかにアプローチでき、そして満足をしてもらえるかが、本当に大切だと考える。



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