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【その美しさに用がある】荻野純「たくさんのはじめて」 感想(Lガールズ 01)

2016-07-15 | 荻野純
                                   
                                しおりが2枚もついてます(お得)









この「Lガールズ」っていう本、、、というかアンソロジーは初めて買いました
なんかA4くらいの本なのかな?って思ってたら単行本サイズでビックリ
アンソロジー、とはいえコミックスの体で荻野純さんの漫画を読むのは随分久しぶりの感覚だったので嬉しかったですね
しかも表紙!しかもしおり付き!!って事でますます笑顔になれる仕様でその点でも嬉しかった
清純で、でも官能的で、だからこそ「美しい」と思える極上の表紙だと思います
個人的には官能的であれば官能的であるほどに感動や美しさを覚える人間なので、
その意味合いでもこの表紙は正にベスト、と言えるんじゃないかと







中身は、書きたい事がいっぱいあるんですが
まず単純にすっごくニヤニヤしましたね(笑)。
憧れのあの人、
普通なわたし、
だけど、あの人にとってわたしは特別な存在で、
それが、すっごく嬉しくて、ますます愛おしくなっていく、、、という
王道のラブストーリーに仕上がっていて、これが初めての恋愛漫画と巻末コメントでは述べてらっしゃいましたが
そう思えない程にきれいに美しくまとまっている傑作だと個人的に感じました
っていうか、初めての恋愛漫画って言われて「あっ、そういえばそうだった。」って思ったんですけど(笑
扱いも本当にイイですし、お話も素晴らしいので荻野純さんのファンならきっと買って損はしないアンソロになっているんじゃないでしょうか

荻野純さんの漫画の良さの一つとして「画面がうるさくない」というのがあります
清廉な雰囲気、静けさを感じる心地良い演出、世界でまるで2人しかいないような独特な空気が流れていて
だからこそ余計に作中観にのめり込めるセンスの良さ、、、のようなものを感じますね
そして、それはこと百合漫画というフィールドに於いては利点として働いてる気もします
清純な乙女の、二人だけの世界・・・を表現するにあたっては
これ以上ないくらい向いている表現技法だな、と
そんな風にも改めて思えました

何より、キャラがいい。
しっかりと、今思う気持ちに正直に、(流されずに)考えて、自分の意志で答えを出した宮原さんも良かったし
普段は凄くクールで大人びてるけど、時に情熱的で、気持ちを抑えられない清水さんも最高でした
普通に考えたら、好き好きオーラが強い宮原さんのが告白しそうなのに
むしろクール系の清水さんから告白される、、、っていうのが逆にグッと来ましたね
印象でキャラを動かしてないというか、
一面的に描かれてないのが凄く良かったと思います
普段は、冷静で、落ち付いている清水さんが
ところどころで抑え切れない自分を出して、恋する乙女そのものになる相様は意外性もあったし、
「宮原さんじゃなきゃ見れなかった」可愛さに満ちていて凄くイイな、と

清水さんは、八方美人じゃないのが更に好きですね
「特に用が無い人と話す必要は無い」ってセリフがありましたが
誰にでも優しくされるのと、
自分だけに優しいのとでは印象はまるで違う
特別感が全く違います
だから、余計に視点キャラである宮原さんに感情移入出来るし
「自分だけに見せてくれる表情」にニヤニヤ出来たのだと思いました



もう一つ・・・この漫画では荻野純さんの確かな音楽愛が感じられました
まず、バンドから話が広がる、というのが荻野さんらしい、と思いましたし
CDの帯を捨てずに取っておく描写は音楽ファンあるあるで、そういう細かい点も良かったかな、と
何よりも、音楽の力に、歌詞にヒントを貰って、それを自分の力に変える描写が素晴らしかったですね
こういう描写は心から音楽のパワーを信じてないときっと描けないんじゃないか、と思うし
音楽を通じて仲良くなる、愛が深まって行く、、、という作劇も正に自分のツボそのものでその点でも良かったです
音楽で出会った二人が、音楽に後押ししてもらって結ばれる、、、という顛末もまた美しかったかと。
一緒にライブ行ったり、盛り上がったり、そりゃ楽しいだろうなあ・・・と思いつつ、
その後はガチの百合セックス描写も多々あったりして
ストーリーは勿論、
色濃い官能描写も楽しめる一作に仕上がっています
割とお話と官能描写のバランスがとても良いので、その意味合いでも是非
清水さんが「無理しなくていいからね」って言った辺りも嘘や心の無い言葉は必要ない。というキャラクターの美意識が感じられてとても好きでした。
それに対して真摯に答える宮原さんも良かったですし、お互いの愛を確認し合う部分含めてとても荻野純さんらしい“誠実さ”に溢れている作品だったと思います
「γ-ガンマ-」やこの間発表した「透明人間の骨」とはまた毛色が違う作品になってますが
こういうあったかくて、ニヤニヤ出来て、素直に愛情を描く荻野作品もこれはこれで素晴らしいなあ、、、と思えたので
きっと今までのファンも気に入ってくれる・・・はず!って個人的には思ってます
あと、こんな短期間で荻野さんの漫画を二本も読めてそれもまたいちファンとして幸せでしたね。


そう、この漫画は「荻野純さんらしさ」が詰まってる、と初見の時純粋に思ったんです
音楽から始まるラブストーリー、キャラの音楽に対する真摯な愛情、
自分だけに見せてくれる表情、という演出や
無駄に仲良くしない、
八方美人にはならない、
心の無い言葉なら要らない・・・という荻野作品ならではのシビアなスタンス
そして、後半のビックリするくらい甘くて蕩けるようなイチャラブ、、、と
ファンとして荻野純成分を強く感じずにはいられない作品でした
それがまた恍惚的でしたし、
ジャンルは変わっても(?)ブレない芯を感じましたね

その上で、純粋な恋愛漫画、という新鮮味や
愛情を感じさせるラブラブセックス、という新境地も切り拓いていて
これからこの分野で荻野純さんの作品を読めるんだ・・・!と考えると非常にワクワクもする作品でもありました
肉欲があるのは、「好き」な気持ちがある何よりの証拠、、、というニュアンスを感じさせる言葉の数々も頷けるセリフ回しで凄く良かった
最後の、ベッドの上での満たされた二人の表情も良かったですし、
一方通行ではない“お互いが同じくらい想い合っている愛”を感じさせたエンディングも笑顔になれました
全体的に、すごく沁み込むような趣ある作品になっているので、純粋に恋愛漫画、漫画としてもレベルは相当高いと思われます
雨の中で初めて読んだんですけど、そんな雰囲気にも良く似合う最高の作品でした。きれいなものを、どうもありがとうございました。












「キャラの本音」がきっちり伝わって来る作品はやっぱり面白い。
そんな風にも思えたのもとてもツボな読切でした。
ちなみに、次号予告にも名前がある(!)ので
次号02(9月発売)のLも凄く楽しみです♪

個人的に、普段はやや幼い宮原さんがセックスの時に見せる官能的な表情もすごく良かったですね・・・笑