■このかけがえのない地獄
思ったより地獄感はない・・・
というのも元々このタイトルは別漫画に付けられていたタイトルを移植させたものらしい
この漫画自体の印象は、憧れたアニメの世界観を大人になって諦めなければいけない現実と奇跡。。を描いていて、
どちらかと言えばポジティブ、、、な着地点に収まる読んでてグッとくる内容に仕上がっている(と、思う)。
まず、諦めるお話の感想なんですが、
正直な話切なさ重視というか大人になれない、というか
真剣に変身少女を夢見ちゃってる女の子の話・・・自体がまず少ないですよね
いい年こいて夢見てるのは恥ずかしいかもしれない、でも、だけどこの子は本気だった。。という
ありそうでない、というか誰もあまり描かないテーマでまずそこが面白かったです
こうやって文字にすると滑稽に思えるかもしれないですが、
やってる本人は本気な訳で、
そういう情感というか空気感を伝えるのが凄い上手い印象で諦めるパートがまず秀逸だったな、と。
そこから、
本気で信じてくれる奇特な女の子が表れて、
ちょっと青春風味でドラマティックな変身少女活劇が始まる訳ですけれど・・・
これがまた良い。というか一度は夢を諦めてしまった少女の本懐が叶う瞬間、というか、
成敗した相手がちょっと主人公に惹かれてる感じも含めて最後には爽やかな(?)テイストで終わるのが良いんですよね
なんでしょうね・・・元々諦めてる描写を観てたからこそ、ちょっと報われた瞬間にグッと来る、というか。
最初から最後まで良い意味でロマンがあるお話で個人的にはとても大好きなお話です
信じていれば、人は魔法少女にもなれるんだ!っていう。
現実的じゃないからこそ、面白い。
そして可愛い(重要)。
■死んでいる君
この漫画は、
途中まで張っていた伏線を投げ捨てて、
最後結局「それかい!」みたいなオチになるのが面白かったです
というか、軽くホラーですよね・・・軽くでもないか?
ただ個人的には、
幽霊でもなんでもいいから、
こんな可愛い女の子と過ごせるんなら役得じゃん!みたいな、
そういう気持ちにもなってしまうんですけど・・・それは楽観的ですかね(笑
ある意味続きがめっちゃ気になる作品でもある。
■4番目のヒロイン
有り体な少年誌のラブコメに疑問を呈する話・・・というか、
別にそんな重い物でもないかな?ただ、茶々を入れたかっただけなんでしょう
でも実際、
決して結ばれる可能性もないのに当て馬として出てくるヒロインに対して、
「どうせ結ばれやしないのに。。」って思ってしまう意地悪な自分が居るのも事実
それこそゲームとかにしとけば全部解決するんでしょうが、、、中々強烈なアンチテーゼでございます。
この漫画の影響か定かではないけれど、
これ以降のサンデーはポンコツ、トニカワ、水女神と特に対抗馬の居ないラブコメが増えています
やはり編集も気にしてるのかな・・・応援って言ったって、結局メインヒロインとくっ付くしなあ。
当て馬として出てくるヒロインにも人権や幸せになる資格はある訳で、
ずっと主人公を役得させる為の道具~に描かれる事へのアンチ精神もあったりするのかもしれない
別に主人公に依存せずとも、勝手に幸せになって良い。。みたいな。
実際それやると作品として破綻するか叩かれたりするんでしょうけど、
それこそ主人公の気持ちを良くさせる為の道具ではない。というキャラの独立した意識を感じられて、
多少意地悪な構成だったりするけれど(笑)。その分笑えて考えさせられる漫画に仕上がってると思いましたね
複数ヒロイン系ラブコメに虚無感を覚えるような人は是非読んで欲しい漫画です。
■黙れニート
働いて精神すり減らして辛く生きていくより、
楽しくニートして健康に生きていく方が良い。という目から鱗の理論が炸裂する漫画
というか、過労死だったり働くのが辛くて死んじゃうよりも迷惑かけてもいいから、
ニートを貫いた方が結果的にマシでしょう。という、甘えとはまた違う潔さを感じる作品
個人的にこの漫画が今の「ポチごっこ。」に繋がってる気がしなくもないが・・・
常識で図らない、という点がある意味この作家の持ち味なのかもしれない
ニートが良い、という主張に関しては結構拒否反応もあるかもしれないですが、
実際自殺するよりは・・・と言われると、
「う~ん。」と思ってしまうのもまた事実
それと同時に、何かのメッセージにも感じる意欲作ですが、
物凄くオルタナティブ過ぎて真面目な人や常識人には受けないかもしれない
でもこういう漫画で救われる人も確かにいるだろうなあ、とも思う
でもなんでしょう、
この主人公の気持ち、すごい分かるというか、
本当は分かっちゃいけないんでしょうけど、
それでも「分かる。」って言いたいというか、
他人がダメな事に期待したくなる心情も
結局心の平穏を選んでしまう刹那的な選択も、
ただ他人事として笑い飛ばすにはあまりにも共感度の高い雰囲気になっていて、
この漫画こそこの作者の神髄だなあ。と個人的には感じました
「ダメ人間のくせに成長しすぎ そろそろ寿命かな」ってセリフは痛いくらいに分かる。
■僕は彼女の彼女
女好きの主人公が、
百合好きの女の子に、
女の子の格好をさせられて、
都合のいい慰み者になる・・・という滑稽だが切実な話
元々はこの漫画が「このかけがえのない地獄」という話だったらしい
男の子としては、素の自分としては決して愛してはもらえないけれど、
「あの子の代わり」としてなら愛してもらえるんだ。。というのは、
確かにある意味地獄だけど、
それでも好きなことには変わりはないので、
同時にかけがえのないものでもある・・・と考えると、
正直よく考えられてるタイトルだなあ~って思います
それでも好きな人。。
それはそれで切実なものを感じて好みですねえ
結局のところ、人は他人にすがらないと生きては行けない生き物ですから
そういう意味で考えると、物凄い生々しくも感じるお話でもある
まあ我々の人生もまた「このかけがえのない地獄」だったりするんでしょうねえ・・・。
アッチあいさんの作品は、
良い意味で性別を感じさせない漫画というか、
どっちの味方でもないというか、
物凄くフラットな視点で男も女も描かれている、という気がして
でも漫画の内容自体は一筋縄ではいかない、常識を一つ外した部分の幸福。。を描いているようで、
そのオルタナティブ加減が考えさせられるというか、独特の魅力を持った作家さんだなあ。って個人的に感じました
幸福の価値観は、決して一つじゃない・・・っていう。
特に好きなのは「このかけがえのない地獄」「4番目のヒロイン」「黙れニート」ですね。推し、です。
あと、本作の作者がヤンジャンで連載している「ポチごっこ。」の感想も毎週書いています
そちらも是非よろしくお願いします!