サブカルチャーマシンガン

自分だけの「好き」を貫く為のブログ。

宝石のようなロマンス。/二階堂幸「ありがとうって言って」

2020-07-27 | 単行本感想








これね・・・
2週間前に発売したんですけど、
その日有給取ってたんで発売日に買ったんですよ
元々同じ作者の「ヒメの惰飯」っていう漫画が今でも度々読み返すくらい大好きで、
それがこの本を買った理由なんですけど・・・想像以上に良かったです
短編集、と銘打ってるだけあって、
切ない恋の話から、
女同士の友情、
絵本のようなお話、
サイレントに挑戦している話まで兎に角話のふり幅が広いです
それと、元々絵は美麗だったんですけど、なんか更に上手くなってる気がしました
昔はすっごく可愛い、って感じだったんですが、今は可愛いに美しい、がプラスされてる感じ
あとコメディも巧いけどストレートなラブロマンスもこんなに巧いんだな。。っていう、
先述の漫画しか知らなかったんで正直ちょっとした衝撃でした
取り敢えず、
西京と漫画の好みが合う~って人はマストリード!って感じの短編集でした。
以下、簡単に紹介でも。




あなたの隣にも~鬼~

主人公は鬼の女の子
見た目はおでこに角が生えている。
普通ならそれをコンプレックスとして話が進んで行きそうですけど、
この話はむしろ人と違って分かりやすくて素敵だよ!・・・っていう、
“鬼である”という事すら個性と扱って、
尚且つ、
それぞれ違ってて素敵!という結論に持っていくのが素晴らしかった
今は口頭では多様性を口にしつつその実はみ出す事を恐れている人が多い印象なので、
そういう意味合いでも心に残るお話に仕上がっている、、、と思う
確かに角は生えてるけど、
でも人間は人間でお互い全然違う生き物だったりするから、
それを思うと大したことないよ、っていう。友人の言葉が気持ち良い作品でした。
それと、角が生えてても可愛い女の子は可愛いのだ!っていう(笑



先生が好き

教師と生徒の恋愛もの
これはね・・・
よく男が我慢したな、って思う(笑
と、同時に分別をわきまえてる素敵な大人だな、とも思った
あとタバコを現実逃避のアイテムとして使ってるところも良かったです

途中までは、
叶わなかった幼い恋心の話なんですけど、
オチで、大人になった彼女と再会するのが良いですね
その後の展開ははっきりと描かれてないんですけど、
多分一途に想い続けてたんだろうなあ、とは思う
恋のアンニュイな部分と、
美しい部分を一つのお話で描いているのが見事な作品
にしても、生徒の彼女があまりに可愛すぎて本当よく男は我慢したなと(ry



あなたの隣にも~人~

アンドロイドの女性が主人公
この話のキモは、
嫌味な人間に対して、
ああいう風にプログラムされてるんでしょ、って言い切ったとこ
確かにそう考えると色々な意味合いで割り切れるなあ・・・って読んでて感じました
この話もある意味「色々な人が居て当然」という内容になってる気がする
逆に性格が悪くて損だねえ、って同情の視点に収まってるのが、
大人の余裕を感じさせて格好良いな、と思いました
オチも“女同士の友情”が感じられて素敵です。



翡翠色の瞳

これは・・・好きですね
こういう話大好きです
報われなかった恋慕のお話。
相手の、
雰囲気だったり、
話の遮り方で気のある/なしが肌で分かってしまう
そこでみっともなくすがりつくんじゃなく、
もう精神的には大人なんで、
潔く察して、
「失恋」を理解する主人公の行動に泣きそうになった。
でも、
だからって悲しい、、、という着地点に辿り着く訳じゃなく
あの時確かに好きだった
好きと言う感情は素晴らしいこと・・・っていう
切ない恋のエピソードながら前向きな終わり方になっているのが一番素晴らしかったです
あの時の、あの自分の感情は“本物”だから—・・・っていう。
あー、
これ書いてて堪らない気持ちになってきた。。(笑



Run!

なんとサイレント(!)
これは正直驚いた
ギャグ漫画だと結構サイレントやるイメージなんですが、
恋愛ものでサイレントって初めて見たかもしれない・・・です
いや、もしかしたらあったのかも分からないですが、
取り敢えず今は思い浮かばないですね。。

途中、
主人公の女の子が、
夜の女王の想像をする場面がとても良かったです(笑
オチに関しては、
てっきり、、、だったんで、ちょっと驚きました
色々な意味でサプライス色の強い作品で面白いですね。
また、ラスト前の女の子の表情が良い・・・!



よっつのドーナッツ

すごい、
いきなり漫画が変わった・・・!
それまでは女同士の友情もの、恋愛もの中心だったんですけど、
いきなり子供向けの純真なファンタジー漫画が来たんで正直ニヤニヤしました(笑
なんでしょう、例えるならロックバンドのアルバムに突如打ち込みの曲が入ってるかのような面白さ。
お話としてもドーナッツの行方含めて上手くキマってる上に、
とっても夢のあるお話で大満足でした
鬼の話といい、
ちょいちょいファンタジー要素入ってるのも読みやすさに直結していて良いギミックかと思う。
見開きのページは子供の頃の想像の世界そのもの、って感じで読んでて泣きそうになりますね。本当に。



恋のスイングバイ

王道のラブコメ
だけど、
この話は凄く日常的でありながら凄くドラマティックな話でもあって・・・
不思議な読み味でした
お話としては、
初めて彼女と海外旅行に行く男の子の心境を綴った作品なんですけど、
奥手な男子に対して意外と女の子の方が積極的だった、っていう。
期待してたのは「そっち」だったりしたのかもだけど、
もっと大きなロマンスをもらったよ。っていう
これはこれで・・・という感じで、
実に素晴らしい
別に物凄くドラマティックな出来事が起こってる訳じゃないのに、
かなりドラマティックでジーンと来るお話に思えるのは、
日常にドラマを見い出してるから、な、気がして
そんなトコが大好きな作品でした
この作品だけ、
事前にツイッターの宣伝から読んでたんですが初見で大好きになったエピソードでしたね
ちなみにこの短編集のタイトルはこの作品のセリフから取られています。







全体的に、なんですけど、
なんか衝撃性だったり分かりやすいフック~というよりは、
空気感だったり何気ない日々を美しく切なく演出する~という手法の作品に感じました
で、それがとても個性的で二階堂さんの作家性を感じて素晴らしいと思いましたね
繰り返しになりますが、
自分と漫画の趣味が合うなら絶対に気に入るはず!・・・な漫画です
是非、良かったら触れてみて下さい。