■この問題に関しては、平成27年9月7日の群馬県の告発により、同9月11日から始まった県警の家宅捜査及びそれに続く関係者の事情聴取が続けられているようですが、平成28年の元旦の地元紙の報道に続き、1月21日付け大手新聞紙の群馬版に、危険スラグに関する報道記事が載りましたのでお伝えいたします。
**********2016年1月21日読売新聞 群馬
2016n0202194709b.pdf
鉄鋼スラグ 従業員ら30人聴取 県警 幹部らにも事情聴く方針
鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」渋川工場(渋川市)から出た鉄鋼スラグをめぐる問題で、県警が、同工場の従業員ら約30人に事情聴取を行ったことが、捜査関係者への取材で分かった。県警は、同社が鉄鋼スラグを不正に処理していたとみて、廃棄物処理法違反容疑で捜査を進めている。今後、同工場の幹部らに詳しい情報を聞く方針だ。
捜査関係者によると、大同特殊鋼は2010~14年頃、鉄鋼スラグを廃棄物として処理する許可を得ていない愛知県内の子会社に、処理を委託するなどした疑いが持たれている。
県警は昨年9月、県の告発を受けて、同法違反容疑で名古屋市の大同特殊鋼本社や、渋川工場などの捜査を実施。その後、渋川市内にある子会社事業所や建設会社の検証を行い、スラグを安定化処理したり、天然砕石と混ぜたりする過程を調べていた。
昨年12月頃から渋川工場や子会社、建設会社の従業員らの事情聴取を始めた。従業員たちは「廃棄物にあたらないと思っていた」などと説明しているという。
**********
■報道記事の掲載から10日余り日数が経ってしまいましたが、読売新聞のこの報道の意図がしばらく分からず、分析に手間取り、当会のブログ掲載報告が2月になってしまいました。
しかし、この報道の次の言葉が当会の心にくさびを打ち込んでなりません。それは・・・
「捜査関係者によると、大同特殊鋼は2010年~14年頃、鉄鋼スラグを廃棄物として処理する許可を得ていない愛知県内の子会社に、処理を委託するなどした疑いがもたれている。」
と報道されていることです。
■果たして、大同特殊鋼は子会社の大同エコメット(本社:愛知県東海市元浜町39番地 大同特殊鋼㈱ 知多工場内)に危険スラグの「廃棄処理を委託」したのでしょうか?
いいえ、そうとは言えません。
大同特殊鋼は今でも尚、「スラグは有価物だ」と主張しているのですから、天然砕石と同様に、自社製品を製造販売していた、と主張しているのです。鉄くずを溶かしてできた鉱さいを、天然砕石をまねた製品として、自社製造品だと言い放っているからです。
製品の販売ですから、廃棄物の処理などの委託はできるはずありません。
■最近話題の社会問題として、廃棄カツの事案がたいへん参考になります。
冷凍ビーフカツ等を廃棄した大手カレーショップは、お金を払ってカツの廃棄を専門処理業者に委託しています。
大同は、危険スラグを、お金を払って廃棄していたのでしょうか?
廃棄カツで言えば、お金を払って廃棄を委託した業者が仮に無資格だったとすれば、このことが「廃棄物として処理する許可を得ていない子会社に、処理を委託するなどした疑いがもたれている」ということです。
しかし、大同特殊鋼はカレーショップと異なり、そもそも廃棄の委託などしていません。では大同特殊鋼は何をしていたのでしょう。それは「不法投棄をしていた」のです。しかも、詐欺同然に隠ぺい工作を巧妙にやってのけたのです。
■読売新聞の報道はさらに続きます。
「昨年12月頃から渋川工場や子会社、建設会社の従業員らの事情聴取を始めた。従業員たちは『廃棄物にあたらないと思っていた』などと説明しているという。」
このように、巧みな隠ぺい工作は、従業員の教育にまで及んでいるのです。
もう一方の当事者である佐藤建設工業でも、2014年1月27日に行われた群馬県の大同特殊鋼への立ち入り調査以来、多数の退職者が出ているそうです。その教育の徹底ぶりについては、当会にも、関係者による涙ながらの告発として伝わってきています。
真相解明は捜査関係者の奮闘努力に期待することとし、当会では入手した資料をもう一度検証して、実態を検証していきたいと思います。
■まずは大同のマニュアルを見ていきましょう。
<混合路盤材マニュアル>
ご覧のとおり、危険スラグ混合路盤材の原料のフッ素自主管理値が「40000mg/kg」と示されています。
マニュアルとは従業員ならば知らなければならない仕事の根本なのではないでしょうか?時を替え、場所を替え、参加者を替え、何度も何度も勉強会が催されたことでしょう。従業員ならばこのマニュアルを叩き込まれているはずです。
しかし、このマニュアルには、肝心の国が定める「環境基準値4000mg/kg以下」が明示されていないのです。なんと10倍もの基準超過数値を見せられても、それが違反値なのかどうか、と疑問さえ抱かせないように、違反行為を隠し、巧妙に従業員を教育していたのです。
これでは、従業員は口を揃えて「廃棄物にあたらないと思っていた」と、県警の事情聴取に対して、供述するのも当然です。大同の従業員への隠ぺい工作の教育効果が奏功したことを如実に物語っています。
■では実際の数値はどうなっていたのでしょうか。
<スラグ F含有量分析 管理表(6月度)>
ご覧のとおり、2013年6月の実際のフッ素含有量が、管理表として堂々と記録されています。
実際のフッ素の値は22000~8400mg/kg余りとなっています。4000mg/kgが基準値とは書いていませんが、天然石と1:4の比率で混合するよう指示されています。従業員は少なくとも1:4の比率で危険スラグと天然石を混合することを知っていたのです。
<三者 定例製造/販売管理会議 実施記録>
この文書からは、次のことがわかります。
佐藤建設の打ち合わせ場所で、スラグマネーで用意された豪華なお弁当に舌鼓を打った後、「PH測定の標準を作成」などと、隠ぺい工作の打ち合わせを大同特殊鋼・大同エコメット・佐藤建設工業との間で綿密に行っています。
こうした実情にあったのに、三者の従業員は「廃棄物にあたらないと思っていた」などとよくも臆面もなく言えたものです。いや、そのように言うよう、教育されていたということができます。
■この三者会議は何度も開催され、危険スラグの置き場所や混合の仕方など、三者の従業員らで話し合いが持たれて、いかに隠ぺいするかについて、定期的に何度も話し合いが持たれていました。
極悪企業に勤める従業員の口裏を合わせた「廃棄物にあたらないと思っていた」という証言は、いかに今回の不法投棄が組織的に行われていたのか、を物語る証だということができます。
廃棄物処理法第25条違反の罪となる行為には、いくつかの類型があります。
<廃棄物処理業の無許可営業>
無許可業者が無責任に産業廃棄物処理をすることは、産業廃棄物処理システムの根幹を成す「許可に対する信頼」がないがしろにされてしまうため、無許可営業は、最も重い罰則によって厳に禁止されている。
<行政からの命令に違反(「事業停止命令」や「措置命令」など)>
行政からの「事業停止命令」や「措置命令」とは、緊急かつ重大な必要性があるときに発 せられるものであり、命令が遵守されなかった場合の罰則を規定することで、それらの命令の遵守を担保している。←当会注:今回は行政(県土整備部)からの倉嶋通達そのものが違法不当であったことも事実。
<無許可業者への処理委託>
無許可業者に産業廃棄物の処理を委託した者は、「無許可営業」の場合と同様、「許可に対する信頼」を自ら破壊しているので、重い罰則の対象となる。この違反は、排出事業者が特に注意すべき内容ですので、委託契約やマニフェストの手続きの際には、必ず、相手方業者の許可内容を確認する必要がある。
<廃棄物の不正輸出>
廃棄物を海外に輸出する場合は、環境大臣の確認を受けることが必要となる。それを受けずに、あるいは不正な方法で確認を受け、国外に廃棄物を輸出すると重い刑罰で処罰される。
<廃棄物の不適切処理(「野焼き」や「不法投棄」など)>
廃棄物の不適切な処理とは、廃棄物を「不法投棄」したり、「野外焼却」したりすること 。いずれの行為も重い刑罰で処罰される。
■この条項の具体的な罰則としては、「5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、またはこれの併科」という刑罰です。
果たして県警は、一部で囁かれているような「結局、不法投棄は間われず、大同などの委託基準違反(無許可業者への産廃処理の委託)にとどまる」とし、単に書類送検で片づけてしまうのか、それとも、「廃棄物処理業の無許可営業」や「不法投棄」など、三者が意図的、組織的、計画的に行っていたことによる関係者らの実刑判決を伴う厳罰を科すのか、予断は許されません。
引き続き、県警の捜査の展開を見守ると共に、危険スラグの不法投棄の実態について粘り強く調査し、原因者による早期完全撤去を行政に求めていくために、当会は微力ながら全力を傾注してゆく所存です。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】
**********2016年1月21日読売新聞 群馬
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鉄鋼スラグ 従業員ら30人聴取 県警 幹部らにも事情聴く方針
鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」渋川工場(渋川市)から出た鉄鋼スラグをめぐる問題で、県警が、同工場の従業員ら約30人に事情聴取を行ったことが、捜査関係者への取材で分かった。県警は、同社が鉄鋼スラグを不正に処理していたとみて、廃棄物処理法違反容疑で捜査を進めている。今後、同工場の幹部らに詳しい情報を聞く方針だ。
捜査関係者によると、大同特殊鋼は2010~14年頃、鉄鋼スラグを廃棄物として処理する許可を得ていない愛知県内の子会社に、処理を委託するなどした疑いが持たれている。
県警は昨年9月、県の告発を受けて、同法違反容疑で名古屋市の大同特殊鋼本社や、渋川工場などの捜査を実施。その後、渋川市内にある子会社事業所や建設会社の検証を行い、スラグを安定化処理したり、天然砕石と混ぜたりする過程を調べていた。
昨年12月頃から渋川工場や子会社、建設会社の従業員らの事情聴取を始めた。従業員たちは「廃棄物にあたらないと思っていた」などと説明しているという。
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■報道記事の掲載から10日余り日数が経ってしまいましたが、読売新聞のこの報道の意図がしばらく分からず、分析に手間取り、当会のブログ掲載報告が2月になってしまいました。
しかし、この報道の次の言葉が当会の心にくさびを打ち込んでなりません。それは・・・
「捜査関係者によると、大同特殊鋼は2010年~14年頃、鉄鋼スラグを廃棄物として処理する許可を得ていない愛知県内の子会社に、処理を委託するなどした疑いがもたれている。」
と報道されていることです。
■果たして、大同特殊鋼は子会社の大同エコメット(本社:愛知県東海市元浜町39番地 大同特殊鋼㈱ 知多工場内)に危険スラグの「廃棄処理を委託」したのでしょうか?
いいえ、そうとは言えません。
大同特殊鋼は今でも尚、「スラグは有価物だ」と主張しているのですから、天然砕石と同様に、自社製品を製造販売していた、と主張しているのです。鉄くずを溶かしてできた鉱さいを、天然砕石をまねた製品として、自社製造品だと言い放っているからです。
製品の販売ですから、廃棄物の処理などの委託はできるはずありません。
■最近話題の社会問題として、廃棄カツの事案がたいへん参考になります。
冷凍ビーフカツ等を廃棄した大手カレーショップは、お金を払ってカツの廃棄を専門処理業者に委託しています。
大同は、危険スラグを、お金を払って廃棄していたのでしょうか?
廃棄カツで言えば、お金を払って廃棄を委託した業者が仮に無資格だったとすれば、このことが「廃棄物として処理する許可を得ていない子会社に、処理を委託するなどした疑いがもたれている」ということです。
しかし、大同特殊鋼はカレーショップと異なり、そもそも廃棄の委託などしていません。では大同特殊鋼は何をしていたのでしょう。それは「不法投棄をしていた」のです。しかも、詐欺同然に隠ぺい工作を巧妙にやってのけたのです。
■読売新聞の報道はさらに続きます。
「昨年12月頃から渋川工場や子会社、建設会社の従業員らの事情聴取を始めた。従業員たちは『廃棄物にあたらないと思っていた』などと説明しているという。」
このように、巧みな隠ぺい工作は、従業員の教育にまで及んでいるのです。
もう一方の当事者である佐藤建設工業でも、2014年1月27日に行われた群馬県の大同特殊鋼への立ち入り調査以来、多数の退職者が出ているそうです。その教育の徹底ぶりについては、当会にも、関係者による涙ながらの告発として伝わってきています。
真相解明は捜査関係者の奮闘努力に期待することとし、当会では入手した資料をもう一度検証して、実態を検証していきたいと思います。
■まずは大同のマニュアルを見ていきましょう。
<混合路盤材マニュアル>
ご覧のとおり、危険スラグ混合路盤材の原料のフッ素自主管理値が「40000mg/kg」と示されています。
マニュアルとは従業員ならば知らなければならない仕事の根本なのではないでしょうか?時を替え、場所を替え、参加者を替え、何度も何度も勉強会が催されたことでしょう。従業員ならばこのマニュアルを叩き込まれているはずです。
しかし、このマニュアルには、肝心の国が定める「環境基準値4000mg/kg以下」が明示されていないのです。なんと10倍もの基準超過数値を見せられても、それが違反値なのかどうか、と疑問さえ抱かせないように、違反行為を隠し、巧妙に従業員を教育していたのです。
これでは、従業員は口を揃えて「廃棄物にあたらないと思っていた」と、県警の事情聴取に対して、供述するのも当然です。大同の従業員への隠ぺい工作の教育効果が奏功したことを如実に物語っています。
■では実際の数値はどうなっていたのでしょうか。
<スラグ F含有量分析 管理表(6月度)>
ご覧のとおり、2013年6月の実際のフッ素含有量が、管理表として堂々と記録されています。
実際のフッ素の値は22000~8400mg/kg余りとなっています。4000mg/kgが基準値とは書いていませんが、天然石と1:4の比率で混合するよう指示されています。従業員は少なくとも1:4の比率で危険スラグと天然石を混合することを知っていたのです。
<三者 定例製造/販売管理会議 実施記録>
この文書からは、次のことがわかります。
佐藤建設の打ち合わせ場所で、スラグマネーで用意された豪華なお弁当に舌鼓を打った後、「PH測定の標準を作成」などと、隠ぺい工作の打ち合わせを大同特殊鋼・大同エコメット・佐藤建設工業との間で綿密に行っています。
こうした実情にあったのに、三者の従業員は「廃棄物にあたらないと思っていた」などとよくも臆面もなく言えたものです。いや、そのように言うよう、教育されていたということができます。
■この三者会議は何度も開催され、危険スラグの置き場所や混合の仕方など、三者の従業員らで話し合いが持たれて、いかに隠ぺいするかについて、定期的に何度も話し合いが持たれていました。
極悪企業に勤める従業員の口裏を合わせた「廃棄物にあたらないと思っていた」という証言は、いかに今回の不法投棄が組織的に行われていたのか、を物語る証だということができます。
廃棄物処理法第25条違反の罪となる行為には、いくつかの類型があります。
<廃棄物処理業の無許可営業>
無許可業者が無責任に産業廃棄物処理をすることは、産業廃棄物処理システムの根幹を成す「許可に対する信頼」がないがしろにされてしまうため、無許可営業は、最も重い罰則によって厳に禁止されている。
<行政からの命令に違反(「事業停止命令」や「措置命令」など)>
行政からの「事業停止命令」や「措置命令」とは、緊急かつ重大な必要性があるときに発 せられるものであり、命令が遵守されなかった場合の罰則を規定することで、それらの命令の遵守を担保している。←当会注:今回は行政(県土整備部)からの倉嶋通達そのものが違法不当であったことも事実。
<無許可業者への処理委託>
無許可業者に産業廃棄物の処理を委託した者は、「無許可営業」の場合と同様、「許可に対する信頼」を自ら破壊しているので、重い罰則の対象となる。この違反は、排出事業者が特に注意すべき内容ですので、委託契約やマニフェストの手続きの際には、必ず、相手方業者の許可内容を確認する必要がある。
<廃棄物の不正輸出>
廃棄物を海外に輸出する場合は、環境大臣の確認を受けることが必要となる。それを受けずに、あるいは不正な方法で確認を受け、国外に廃棄物を輸出すると重い刑罰で処罰される。
<廃棄物の不適切処理(「野焼き」や「不法投棄」など)>
廃棄物の不適切な処理とは、廃棄物を「不法投棄」したり、「野外焼却」したりすること 。いずれの行為も重い刑罰で処罰される。
■この条項の具体的な罰則としては、「5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、またはこれの併科」という刑罰です。
果たして県警は、一部で囁かれているような「結局、不法投棄は間われず、大同などの委託基準違反(無許可業者への産廃処理の委託)にとどまる」とし、単に書類送検で片づけてしまうのか、それとも、「廃棄物処理業の無許可営業」や「不法投棄」など、三者が意図的、組織的、計画的に行っていたことによる関係者らの実刑判決を伴う厳罰を科すのか、予断は許されません。
引き続き、県警の捜査の展開を見守ると共に、危険スラグの不法投棄の実態について粘り強く調査し、原因者による早期完全撤去を行政に求めていくために、当会は微力ながら全力を傾注してゆく所存です。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】