■2016年1月22日に毎日新聞が報じた千葉県袖ケ浦市の大規模な土地開発事業を巡るスラグ投棄事件では、土地区画整理法で義務づけられている地権者の承認を得ないまま、鉄精製時の副産物である「製鋼スラグ」が約24万トン埋設していたことが明らかになりました。
↑袖ケ浦土地区画整理事業地。上が東京湾に面した海側。下の左右に内房線が走り、白色のJR袖ケ浦駅が見える。↑
スラグは水と反応して膨張する性質があるため、これまでに宅地造成に使用された例はないとされています。事実、群馬県の榛東村で大同スラグを基礎に埋め込んだ民家が著しく傾き、生活に大きな支障をきたしている例があります。また、大同スラグが敷きこまれた道路が群馬県の各地で隆起して問題となっています。
千葉県袖ケ浦市でも、工事施工者の奥村組と竹中土木の共同企業体によって無断で大量に埋め込まれたスラグについて、地権者の皆さんが不安視するのも当然です。
ところで、この土地開発事業は、JR袖ケ浦駅北側に広がる田畑などを宅地として再開発するもので、地権者約400人で作る区画整理組合が主体となり、中堅ゼネコンの奥村組と竹中土木の共同企業体が受注しました。工事は2011年7月に着手され、東京ドーム10個分に匹敵する48.9ヘクタールの敷地に、地権者の戸建て住宅や大規模マンション、大型商業施設、道路などを造成して、2017年度末の完成後には約3700人が居住する計画で、総事業費約78億円のうち約17億円が国、約7億円は市の補助金が充てられています。詳しくは土地区画整理組合のブログを参照ください。↓
※袖ケ浦市袖ケ浦駅海側土地区画整理組合http://sodeumikumiai.blogspot.jp/
■今回のスラグ無断使用は、奥村組と竹中土木が、土地区画整理組合の承認を得ないまま事業計画を変更して、格安の産業廃棄物であるスラグを地盤改良材として使用したものとみられます。
報道によると、JV側は県の聞き取りに対し「計画変更について組合に説明はしたが、不十分だったのかもしれない」という趣旨の説明をしており、「(スラグの使用については)国や県の指導を受けたことはなく、地盤改良材の安全性に問題はない。他の質問への回答は差し控えさせていただく」として、説明責任を放棄しています。
また、製造者である新日鉄住金の広報センターによれば「ジオタイザーは2011年(昭和23年)5月には既に「軟弱地盤改良用製鋼スラグ」の名称で商品化し、2015年8月に新たな名称を付けて(国に)登録した。膨張試験をして結果はJVに示している。万一地盤に問題が発生した場合、必要な協力をJVと協議させていただく」として、あくまでも発注者の区画整理組合ではなく、施工者のJVとの関係を重視している様子がうかがえます。
こうした経緯をみると、群馬県における大同スラグ事件との類似性を感じさせます。事実、新日鉄住金㈱の君津製鉄所の構内に大同特殊鋼の君津工場があります。
http://www.daido.co.jp/about/corporate/map_kimitsu.html
もしかしたら、群馬県でのスラグ不法投棄の経験と実績から、居候をしている新日鉄住金の君津製鉄所でも、株主でもある新日鉄住金側にスラグ投棄のノウハウを進言していた可能性も否定できません。
■そこで市民オンブズマン群馬では、リットン調査団の分遣隊を急遽現地に派遣して、現況を調べてきました。
東京駅から総武線快速に乗り、約1時間20分でJR内房線の袖ケ浦駅に到着すると、降りる人もあまりなく、モダンな駅の構内も閑散としていました。
↑袖ケ浦駅の周辺図。↑
↑駅南口(山側)。↑
袖ケ浦市は面積約95平方キロ、人口約6万1千人で、1960年代から東京湾を埋め立てた場所に、京葉臨海コンビナートを検察し、多くの工場が進出していて、その財政の豊かさは、千葉県内で浦安市、成田市に次ぐ3番目となっております。
駅構内から海側を見ると、今回の土地開発事業が行われている広大な敷地が広がっており、既にあちこちで一戸建て住宅が建ち始めていました。さらに目を右方向に転ずると、埋立地と思われる遠くに大きな煙突が見えました。どうやら東京電力の火力発電所のようです。
また、その向こうには東京ガスのLNG基地の大型タンクの屋根が見えます。これは昭和48年に東京電力株式会社袖ヶ浦火力発電所との共同基地として操業を開始した日本で初めてのLNG専用工場とされています。
↑駅北口(海側)。↑
↑駅の北側の光景。右奥に東電火力発電所などが見える。↑
↑北口広場案内図。↑
↑さっそく奥村組と竹中土木の看板が出迎え。↑
↑駅前の看板広告。予定通りショッピングモールとマンションは出来るのか。↑
↑北口広場。↑
↑雑草の生い茂る北口の計画地。↑
階段を下りて北口広場に出ました。さっそく、工事を請け負った奥村組と竹中土木のJVの看板がお出迎えです。「工事中につき通り抜けできません」と書かれています。どうやら線路脇の通路の先が行き止まりであることを伝えているようです。そうなると、直ぐに追ってみたくなるのが当会の習性です。
右手に雑草の生い茂った広大な空き地と、左手に内房線の線路を見ながら200mほど歩くと前方に目隠しのためのパネルフェンスがありました。その向こうには、大型の基礎用のパイル打ち機械や、稼働中のユンボの様子が見えました。
↑跨線橋建設工事現場。重機や杭打機が稼働中。↑
↑東京ガスのガス管が埋設済み。↑
↑跨線橋と擁壁・橋脚の工事らしい。↑
確かに行き止まりでしたが、フェンスに沿って人の歩いたふみ跡があったので、それにそって、現場の入口のほうに迂回をしました。
どうやら、道路工事に伴う跨線橋の工事で、擁壁を立てて土盛りをし、線路脇には橋脚を、設置し、跨線橋を掛ける工事のようです。そこから海側に上る道は、ほぼ完成し、舗装工事も始まっていました。
ここから海側に目を凝らすと、アクアラインやその向こうには富士山のシルエットが見えました。
↑建築中の一戸建て。↑
↑幹線街路。↑
↑ここにも東京ガスの目印。↑
↑スラグはどうしたのか?遠くにアクアラインが見える。↑
道路の両側には一戸建ての家が立ち並び始めています。また、電柱がやたらと目につきました。誰が設計したのか分かりませんが、どうせなら最初から地下埋設方式にしたほうが、街のイメージがすっきりしたはずです。
↑やたらと電柱が目立つ。電線地中化対策はやらないようだ。↑
↑東電の火力発電所。↑
↑電柱資材の束。背景に富士山がくっきり見える。↑
↑区画街路工事は北袖商事。↑
↑JVの立入禁止看板。↑
↑不動産業者の旗があちこちに。↑
↑とある売物件。この盛り土の下に変なものは埋設されていないよね?↑
このことについて、JVの担当者に聞いてみましたが、設計は最初から電柱方式になっていたらしく、「ここは田舎だから」という発言があったことから、コスト優先であったことが窺えます。例えば、この界隈の建売住宅の場合、ネット情報では4LDK、土地面積146.86㎡、建物面積106.1㎡の物件で2099万円とあります。
https://suumo.jp/jj/bukken/shosai/JJ012FD010/?ar=030&bs=020&nc=86038100&suit=nsuusbsp20121129001
↑完成した一戸建て。↑
■造成中の現場は立入禁止となっていたため、入口のガードマンに話を聞きました。しかし、スラグ問題についてはちんぷんかんぷんでした。それでも、「土地区画整理組合」の所在地を尋ねたところ、「JVの現場事務所の一角を借りているが、今日は祝日なので誰もいない」と言われました。
↑やけに白っぽいところだが、スラグの可能性ありや?↑
↑あまり雑草も生えていない。↑
帰路、教えて貰った通り、土地区画整理組合のある場所に行くと、確かに、現場事務所がありました。事業の看板を写真撮影していると、当会調査班のことを不審に思ったのか、ひとりの担当者と思しき人物が近寄ってきました。スラグの話を聞こうとしましたが、「今日は休日で・・」の一点張り。組合の事務所も誰もいないというので、スラグの話は聞けませんでした。
↑JVの現場事務所。↑
↑火葬場建設計画反対の看板。↑
造成地の中には他と比べて土の表面の色が異様に白っぽい場所がありました。また、移転された墓地の地面を白っぽかったので地表の石を手に取って調べてみました。すると、数個の石が固まってくっついていました。その周りは貝殻が沢山含まれる海砂利らしき土が敷かれていました。
↑東京ガスのおひざ元だけあって、都市ガスはすべて東京ガス。↑
↑バス停脇の移転墓地の地表で、貝殻の含まれた海砂利の中にスラグのような塊が見える。↑
↑これって、明らかにスラグだ。↑
↑白い粉に塗されたスラグだ。↑
↑モデルハウスとスラグ投棄場所。↑
↑海側(北側)から見た袖ケ浦駅。↑
こうして、組合関係者にはヒヤリングは出来ませんでしたが、明らかにスラグが大量に投棄されている実態を垣間見た感じがしました。
袖ケ浦駅の構内に戻ると、袖ケ浦市の観光スポットが映像で流されていました。袖ケ浦の海岸は全て埋め立てられてしまい、砂浜や岩場は全くありません。しかし、当日もそうでしたが、北西の方向に大きく冨士山が見通せます。
↑駅前駐車場の看板。↑
↑看板の根元にもスラグ。↑
↑未舗装の駐車場。白い粉が風で吹き上げられるのが心配だ。↑
↑駅の構内の観光PRディスプレー。富士山の見える光景が売り。↑
↑
■今回の袖ケ浦市のスラグ無断投棄問題について、マスコミ報道された記事によれば、次の問題が指摘されています。なお、当会のコメントを赤字で追記してあります。
(1)当初はスラグの使用計画はなかった。←(当会コメント:確かに支出計画にはスラグという記載が見当たらない。但し「整地費」として12.42億円が計上されている。さらに道路・水路・公園築造費として計25.70億円が計上されている)
(2)JV側は2012年1月、組合の理事会に工事費などの詳細を説明しないままスラグを使って地盤改良することを報告しただけで、組合の意思決定機関である「総代会」や事業を所管する千葉県の承認を得ずに地盤改良工事に着手した。←(当会コメント:組合の事業計画書の第1回変更は2012年5月22日、第2回変更は2013年9月27日となっている。なお事業計画書には第2回変更後でも「地盤改良工事費」という項目は見当たらない)
(3)地盤改良材として新日鉄住金君津製鉄所から排出された製鋼スラグを約24万トン搬入し埋設した。←(当会コメント:対象面積が約48.96ヘクタールあることから、製鋼スラグが1㎡当たり平均約500キロ埋め込まれたことになる。嵩比重を2と仮定すると、1㎡当たり厚さ25センチ分が敷き込まれた計算だ)
(4)JV側は地盤改良工事費を約10億円としているが、土地区画整理法では当初の予定にない工事費を計上する場合、地権者と県の承認を受けて資金計画を変更することを義務づけている。←(当会コメント:スラグを用いた地盤改良工事としてJV側が約10億円と新たに計上された場合、スラグ1トンあたり、4,167円となる。天然砕石の代わりにスラグを使った場合少なくとも1トン当たり1,500円のコスト安となることから、JV側は3億円以上儲けることができる勘定になる)
(5)JV側が資金計画変更の承認を総代会に求めたのは、地盤改良工事の約8割を終えた2014年12月になってからで、同法に抵触する疑いがある。 ←(当会コメント:JV側が資金計画変更を総代会に求めるのであれば、スラグを使ったことにより3億円以上コスト削減できたという理由で、値引きするのが当然だが、どうやらそうした動きは皆無のようだ)
(6)スラグは石や砂状で有害物質を含んでいなければ再生利用でき、道路などの軟弱地盤改良に使われるが、水と反応して膨張する性質がある。新日鉄住金が地権者に説明した内容によると、これ以前に宅地開発での利用事例はないという。←(当会コメント:ジオタイザーのデータベースには、直轄工事等で活用された後の「試行実証評価」及び「活用効果評価」が実施されていない、いわゆる「事後評価未実施技術」とある。なぜこんなものが市場に出回るのか不思議だ)
(7)搬入されたスラグは2015年8月、「ジオタイザー」の名称で国に商品登録され、新日鉄住金は国に提出した資料で「2014年に開発」と記しているが、搬入開始はそれより2年も前の2012年からだった。←(当会コメント:ジオタイザーの開発着手は2014年、登録年月日は2015年8月11日となっている。どうみても不法投棄目的としか思えない)
(8)資料には留意事項として「(土との)混合率が30%を超える場合は、改良土の膨張について問題ないことを事前配合試験で確認する必要がある」と記されている。←(当会コメント:前項のとおり、事後評価未実施技術であり、使用には慎重さが求められている)
(9)スラグを巡っては、再生利用できなければ産業廃棄物となり、その処分に1トン当たり2万〜4万円程度かかるため、過去に再生利用を偽装した安価な取引がたびたび問題化している。組合はJVにスラグの取引価格の開示を求めたが、JV側は拒否。このため組合は、スラグの全面撤去や取引価格の開示に応じるまで、資金計画の変更を承認しないことを決めた。←(当会コメント:スラグの取引価格の開示を拒む業者側の対応は極めて怪しい。実際には、新日鉄住金からタダ同然で引き取って、しかも輸送費も新日鉄住金に見て貰っていたかもしれない)
(10)国交省市街地整備課は2016年1月12日、JV側に対して改善を求めた。←(当会コメント:どのような内容の改善要請なのかが不明)
(11)奥村組と竹中土木いわく「国や県の指導を受けたことはなく、地盤改良材の安全性に問題はない。他の質問への回答は差し控えさせていただく」という。←(当会コメント:今年1月12日に国の改善指導を受けているハズなのに、「指導を受けたことはない」というJV側の回答はウソということになる)
(12)新日鉄住金広報センターいわく「ジオタイザーは2011年5月には既に『軟弱地盤改良用製鋼スラグ』の名称で商品化し、2015年8月に新たな名称を付けて(国に)登録した。膨張試験をして結果はJVに示している。万一地盤に問題が発生した場合、必要な協力をJVと協議させていただく」という。←(当会コメント:なぜ新日鉄住金は組合に対して直接協議をしようとしないのか。それは業者との癒着があるからなのでは)
■こうしてみると、地権者約400人で作る区画整理組合のことを、JV側も新日鉄住金側も完全に舐めてかかっていることがわかります。何も知らない組合の関係者を騙すのは、「簡単だ。それに説明したって分かりっこない」という思い込みが背景にあることが窺えます。
さて、次に、行政関係を見てみましょう。とくに、廃棄物の不法投棄については、各県の担当部署の業務となっていますが、千葉県の対応はどうなのでしょうか。同県のホームページを見てみましょう。
**********千葉県HP「報道発表案件」
https://www.pref.chiba.lg.jp/tosei/press/2015/sodeumi.html
更新日:平成28(2016)年1月29日
袖ケ浦駅海側特定土地区画整理事業について
発表日:平成28年1月22日
県土整備部市街地整備課
袖ケ浦駅海側特定土地区画整理事業について、県は事業計画の変更手続きを速やかに提出するよう求めている。
なお、地盤改良に使用する素材等については、組合と業務代行者で十分協議し、合意を図った上で事業を進めるよう指導している。
1 事業概要
施行者 :袖ケ浦市袖ケ浦駅海側土地区画整理組合
業務代行者 :(株)奥村組・(株)竹中土木JV一括業務代行
面積 :48.9ha
総事業費 :約77.9億円
施行期間 :平成23年度~平成29年度
2 組合施行に対する県の役割について
県は事業計画の認可権者である。
組合施行の土地区画整理事業については、県は認可権者として内容・手続きに問題がない限り認可しなければならないとされている。
土地区画整理事業においての資金計画の変更が生じているにもかかわらず、事業計画変更申請が行われていないことから、平成27年12月18日に組合に対し、事業計画変更申請を行うよう土地区画整理法第123条の勧告を行ったところである。
県は国の補助金を組合に対して補助を行う立場である。
(組合の役割について)
組合は公法人としての自立性、独立性が法的に保障されているものである。
その事業に対する組合の運営責任は組合自身が負うものである。
3 地盤改良の素材について
地盤改良の素材については、組合と業務代行者である(株)奥村組・(株)竹中土木JVで協議した上で決定されるべきものであるが、今回、県は両者の間に入り、円滑な事業推進のため、指導助言をしてきたところである。
<お問い合わせ>
所属課室:県土整備部市街地整備課市街地整備班
電話番号:043-223-3243
ファックス番号:043-222-4068
******
■以上のように、赤字で示した通り、今回の事件はスラグ問題なのに、「スラグ」という言葉が一言も出てきません。これは、言ってみれば行政と業者の癒着を示唆していると言えるでしょう。
この袖ケ浦市のスラグ無断投棄問題については、引き続き注視してまいりたいと存じます。
【2月15日追記】
・今回のスラグ無断投棄問題について、現地からもたらされた情報によれば、既に施行者である「袖ケ浦市袖ケ浦駅海側土地区画整理組合」の関係者は、奥村組・竹中土木JVとの間で、本件について合意の手打ちを済ませたらしい、とのことです。
・確かに当会の調査班が現地を訪れた時点でも、平常通り工事が続けられており、スラグの件で現場のJV関係者に話を持ち掛けても、「そういう話は知らない」という返事ばかりでした。
・どうやら、千葉県および周辺自治体に対して強大な影響力を行使できる立場の新日鉄住金の君津製鉄所から直線距離にして5キロ余りしか離れていない袖ケ浦市の土地区画整理組合にとって、あちこちから圧力がかかったことは想像に難くありません。
・しかし、組合の関係者を屈服させることはできたとしても、敷地内に無断投棄されたスラグの存在は厳然たる事実であり、その上に住宅や商業施設を建てて、生活したり営業したりする人たちにとって、リスクが軽減されたことにはなりません。
・新日鉄住金の君津製鉄所の構内には、大同特殊鋼の君津工場もあります。群馬県におけるスラグ不法投棄問題で、どうすれば行政をコントロールできるかについて豊富な経験と知見を持つ同社が、株主である新日鉄住金に対して、今回の袖ケ浦駅海側の土地区画整理事業におけるスラグ無断投棄問題の対応策について、助言をしたのかどうか、当会では確認できておりません。
【市民オンブズマン群馬・他県のスラグ問題調査班(リットン調査団・分遣隊)】
※以下関連情報
**********区画整理事業場所の航空写真による進捗推移
↑2012年12月撮影。このころすでにスラグが搬入され始めていたことになる。↑
↑2013年8月撮影。造成場所の色が随分白っぽいが、スラグの影響かもしれない。↑
↑2014年1月撮影。やはり白っぽい。↑
↑2014年9月撮影。海側の新規造成エリアは、やはり随分と白っぽい。↑
↑2015年7月撮影。やはり随分と白っぽく見える。↑
**********毎日新聞2016年1月22日
http://mainichi.jp/articles/20160122/k00/00m/040/095000c
スラグ 24万トン無断埋設 地権者が撤去要求 千葉
千葉県袖ケ浦市の大規模な土地開発事業を巡り、土地区画整理法で義務づけられている地権者の承認を得ないまま、鉄精製時の副産物である「製鋼スラグ」が約24万トン埋設されていることが分かった。スラグは水と反応して膨張する性質があり、これ以前に宅地造成に使用された例はないとされる。地権者は不安視し、スラグの全面撤去を要求。同法を所管する国土交通省も調査を始めた。
この事業はJR袖ケ浦駅北側に広がる田畑などを宅地として再開発するもので、地権者約400人で作る区画整理組合が主体となり、中堅ゼネコンの奥村組(大阪市)と竹中土木(東京都江東区)の共同企業体(JV)が受注した。2011年7月に着手され、東京ドーム10個分に匹敵する約50ヘクタールの敷地に、地権者の戸建て住宅や大規模マンション、大型商業施設、道路などを造成し、17年度末の完成後には約3700人が居住する計画。総事業費は約78億円で、このうち約17億円は国の、約7億円は市の補助金が充てられる。
毎日新聞が入手した資料や地権者によると、当初はスラグの使用計画はなかったが、JV側は12年1月、組合の理事会に工事費などの詳細を説明しないままスラグを使って地盤改良することを報告しただけで、組合の意思決定機関である「総代会」や事業を所管する千葉県の承認を得ずに地盤改良工事に着手。地盤改良材として新日鉄住金(東京都千代田区)の君津製鉄所(千葉県君津市)から排出された製鋼スラグを約24万トン搬入し埋設した。
JV側は地盤改良工事費を約10億円としているが、土地区画整理法では当初の予定にない工事費を計上する場合、地権者と県の承認を受けて資金計画を変更することを義務づけている。JV側が資金計画変更の承認を総代会に求めたのは、地盤改良工事の約8割を終えた14年12月になってからで、同法に抵触する疑いがある。
スラグは石や砂状で有害物質を含んでいなければ再生利用でき、道路などの軟弱地盤改良に使われるが、水と反応して膨張する性質がある。新日鉄住金が地権者に説明した内容によると、これ以前に宅地開発での利用事例はないという。
搬入されたスラグは15年8月、「ジオタイザー」の名称で国に商品登録され、新日鉄住金は国に提出した資料で「14年に開発」と記しているが、搬入開始はそれより2年も前だった。資料には留意事項として「(土との)混合率が30%を超える場合は、改良土の膨張について問題ないことを事前配合試験で確認する必要がある」と記されている。
スラグを巡っては、再生利用できなければ産業廃棄物となり、その処分に1トン当たり2万〜4万円程度かかるため、過去に再生利用を偽装した安価な取引がたびたび問題化している。組合はJVにスラグの取引価格の開示を求めたが、JV側は拒否。このため組合は、スラグの全面撤去や取引価格の開示に応じるまで、資金計画の変更を承認しないことを決めた。国交省市街地整備課は1月12日、JV側に対して改善を求めた。【杉本修作】
★奥村組と竹中土木の話 国や県の指導を受けたことはなく、地盤改良材の安全性に問題はない。他の質問への回答は差し控えさせていただく。
★新日鉄住金広報センターの話 ジオタイザーは2011年5月には既に「軟弱地盤改良用製鋼スラグ」の名称で商品化し、15年8月に新たな名称を付けて(国に)登録した。膨張試験をして結果はJVに示している。万一地盤に問題が発生した場合、必要な協力をJVと協議させていただく。
**********東京新聞2016年1月23日
【千葉】計画変更せず地盤改良 袖ケ浦市区画整理 スラグ24万トンを使用
↑袖ケ浦駅海側の土地区画整理事業地。右奥の白い外観の建物が駅舎=袖ケ浦市で↑
県は二十二日、袖ケ浦市の大規模な土地区画整理事業をめぐり、土地区画整理法で義務付けられている事業計画変更の手続きがないまま、計画にない地盤改良材が使われていたとして、昨年末、施行者に計画変更申請をするよう勧告していたことを明らかにした。工事を受注したゼネコンの奥村組と竹中土木の共同企業体(JV)が、鉄精製時に排出される「製鋼スラグ」を材料とした地盤改良材を、使用計画の無いまま約二十四万トン使用していた。
県によると、事業は二〇〇九~一七年度にかけて、JR袖ケ浦駅前の約五十ヘクタールの水田などを商業地や住宅地などに再開発する計画。施行者は、約三百五十人の地権者らでつくる土地区画整理組合。総事業費は約七十七億九千万円で、うち国から約十六億八千五百万円、市から約七億一千八百万円の補助金が充てられる。
昨年二月、JVが当初は使用計画の無かった地盤改良材を使っていることなどを、組合が県に相談。JV側は地盤改良材の使用について組合側に説明していたが、費用負担の増加などについて組合の承認を得ずに工事に着手したという。
県は、組合とJV双方に十分協議し合意した上で事業を進めるよう指導してきた。使われた地盤改良材は一一年に商品化されている。開発地は地盤が軟弱で、県は「計画が変更されていれば、使用に問題はなかった」としている。 (村上一樹)
**********日本経済新聞203年2月20日電子版
JR袖ケ浦駅前、宅地開発で定住者呼び込め
千葉県袖ケ浦市のJR袖ケ浦駅前で大規模な区画整理事業が進んでいる。地権者でつくる袖ケ浦駅海側土地区画整理組合が中心となり、約50ヘクタールの土地を3700人が住む宅地に変える。近くを東京湾アクアラインが走る立地を生かし、大型分譲地を整備して県内の他、東京都や神奈川県からも定住者を呼び込む。隣接地で人口増が続く木更津市に対抗する。
「袖ケ浦駅海側地区」の開発では駅寄りの半分を14年秋までに、残る海側を16年秋までに造成する。着工は11年で、地区内に2%しかなかった宅地を46%に増やす。マンションや戸建て住宅の建設を促し、70人だった人口を50倍以上に増やす計画だ。
袖ケ浦市は区画整理に合わせ、南側にしか出入り口のなかったJR駅舎を改築する考え。市が費用の大部分を負担して、14年秋をめどに同駅の南北を行き来できる通路などを設ける。
新たにできる北口前には高速バスの乗り場も整備する。袖ケ浦市内では東京湾アクアラインを経由して東京駅や横浜駅などに向かう5路線のバスが走っている。駅前乗り場にこれらの路線が乗り入れれば、通勤客の利便性が高まるとみる。
駅前には4.6ヘクタールの商業用地も確保する。食品スーパーなどを誘致する計画で、すでに交渉を始めている。住宅や商業施設などの都市機能を中心部に集めた「コンパクトシティー」を目指す。
アクアラインの開通を機に、着岸地の金田インターチェンジ(IC)がある木更津市には周辺市や対岸の川崎市などから人口の流入が続いている。区画整理で造成した5つの宅地には約2万人が移り住んだ。袖ケ浦市の人口は横ばいで、大規模な区画整理は20年前に同駅で10ヘクタールを供給した程度。市は「宅地供給の出遅れが響いた」とみる。
ここへ来て地価に下げ止まりの傾向が見え始めたことが、区画整理事業を後押ししている。市と区画整理組合は区画整理後の宅地の売却価格を1平方メートル当たり4万8000円程度、整理前の2倍強になるとそろばんをはじいている。
対象地区はJR駅が間近で、千葉方面へも通勤しやすい。市の財政を支えた湾岸のコンビナートに陰りが見えるなか、区画整理事業への期待は大きい。
**********
↑袖ケ浦土地区画整理事業地。上が東京湾に面した海側。下の左右に内房線が走り、白色のJR袖ケ浦駅が見える。↑
スラグは水と反応して膨張する性質があるため、これまでに宅地造成に使用された例はないとされています。事実、群馬県の榛東村で大同スラグを基礎に埋め込んだ民家が著しく傾き、生活に大きな支障をきたしている例があります。また、大同スラグが敷きこまれた道路が群馬県の各地で隆起して問題となっています。
千葉県袖ケ浦市でも、工事施工者の奥村組と竹中土木の共同企業体によって無断で大量に埋め込まれたスラグについて、地権者の皆さんが不安視するのも当然です。
ところで、この土地開発事業は、JR袖ケ浦駅北側に広がる田畑などを宅地として再開発するもので、地権者約400人で作る区画整理組合が主体となり、中堅ゼネコンの奥村組と竹中土木の共同企業体が受注しました。工事は2011年7月に着手され、東京ドーム10個分に匹敵する48.9ヘクタールの敷地に、地権者の戸建て住宅や大規模マンション、大型商業施設、道路などを造成して、2017年度末の完成後には約3700人が居住する計画で、総事業費約78億円のうち約17億円が国、約7億円は市の補助金が充てられています。詳しくは土地区画整理組合のブログを参照ください。↓
※袖ケ浦市袖ケ浦駅海側土地区画整理組合http://sodeumikumiai.blogspot.jp/
■今回のスラグ無断使用は、奥村組と竹中土木が、土地区画整理組合の承認を得ないまま事業計画を変更して、格安の産業廃棄物であるスラグを地盤改良材として使用したものとみられます。
報道によると、JV側は県の聞き取りに対し「計画変更について組合に説明はしたが、不十分だったのかもしれない」という趣旨の説明をしており、「(スラグの使用については)国や県の指導を受けたことはなく、地盤改良材の安全性に問題はない。他の質問への回答は差し控えさせていただく」として、説明責任を放棄しています。
また、製造者である新日鉄住金の広報センターによれば「ジオタイザーは2011年(昭和23年)5月には既に「軟弱地盤改良用製鋼スラグ」の名称で商品化し、2015年8月に新たな名称を付けて(国に)登録した。膨張試験をして結果はJVに示している。万一地盤に問題が発生した場合、必要な協力をJVと協議させていただく」として、あくまでも発注者の区画整理組合ではなく、施工者のJVとの関係を重視している様子がうかがえます。
こうした経緯をみると、群馬県における大同スラグ事件との類似性を感じさせます。事実、新日鉄住金㈱の君津製鉄所の構内に大同特殊鋼の君津工場があります。
http://www.daido.co.jp/about/corporate/map_kimitsu.html
もしかしたら、群馬県でのスラグ不法投棄の経験と実績から、居候をしている新日鉄住金の君津製鉄所でも、株主でもある新日鉄住金側にスラグ投棄のノウハウを進言していた可能性も否定できません。
■そこで市民オンブズマン群馬では、リットン調査団の分遣隊を急遽現地に派遣して、現況を調べてきました。
東京駅から総武線快速に乗り、約1時間20分でJR内房線の袖ケ浦駅に到着すると、降りる人もあまりなく、モダンな駅の構内も閑散としていました。
↑袖ケ浦駅の周辺図。↑
↑駅南口(山側)。↑
袖ケ浦市は面積約95平方キロ、人口約6万1千人で、1960年代から東京湾を埋め立てた場所に、京葉臨海コンビナートを検察し、多くの工場が進出していて、その財政の豊かさは、千葉県内で浦安市、成田市に次ぐ3番目となっております。
駅構内から海側を見ると、今回の土地開発事業が行われている広大な敷地が広がっており、既にあちこちで一戸建て住宅が建ち始めていました。さらに目を右方向に転ずると、埋立地と思われる遠くに大きな煙突が見えました。どうやら東京電力の火力発電所のようです。
また、その向こうには東京ガスのLNG基地の大型タンクの屋根が見えます。これは昭和48年に東京電力株式会社袖ヶ浦火力発電所との共同基地として操業を開始した日本で初めてのLNG専用工場とされています。
↑駅北口(海側)。↑
↑駅の北側の光景。右奥に東電火力発電所などが見える。↑
↑北口広場案内図。↑
↑さっそく奥村組と竹中土木の看板が出迎え。↑
↑駅前の看板広告。予定通りショッピングモールとマンションは出来るのか。↑
↑北口広場。↑
↑雑草の生い茂る北口の計画地。↑
階段を下りて北口広場に出ました。さっそく、工事を請け負った奥村組と竹中土木のJVの看板がお出迎えです。「工事中につき通り抜けできません」と書かれています。どうやら線路脇の通路の先が行き止まりであることを伝えているようです。そうなると、直ぐに追ってみたくなるのが当会の習性です。
右手に雑草の生い茂った広大な空き地と、左手に内房線の線路を見ながら200mほど歩くと前方に目隠しのためのパネルフェンスがありました。その向こうには、大型の基礎用のパイル打ち機械や、稼働中のユンボの様子が見えました。
↑跨線橋建設工事現場。重機や杭打機が稼働中。↑
↑東京ガスのガス管が埋設済み。↑
↑跨線橋と擁壁・橋脚の工事らしい。↑
確かに行き止まりでしたが、フェンスに沿って人の歩いたふみ跡があったので、それにそって、現場の入口のほうに迂回をしました。
どうやら、道路工事に伴う跨線橋の工事で、擁壁を立てて土盛りをし、線路脇には橋脚を、設置し、跨線橋を掛ける工事のようです。そこから海側に上る道は、ほぼ完成し、舗装工事も始まっていました。
ここから海側に目を凝らすと、アクアラインやその向こうには富士山のシルエットが見えました。
↑建築中の一戸建て。↑
↑幹線街路。↑
↑ここにも東京ガスの目印。↑
↑スラグはどうしたのか?遠くにアクアラインが見える。↑
道路の両側には一戸建ての家が立ち並び始めています。また、電柱がやたらと目につきました。誰が設計したのか分かりませんが、どうせなら最初から地下埋設方式にしたほうが、街のイメージがすっきりしたはずです。
↑やたらと電柱が目立つ。電線地中化対策はやらないようだ。↑
↑東電の火力発電所。↑
↑電柱資材の束。背景に富士山がくっきり見える。↑
↑区画街路工事は北袖商事。↑
↑JVの立入禁止看板。↑
↑不動産業者の旗があちこちに。↑
↑とある売物件。この盛り土の下に変なものは埋設されていないよね?↑
このことについて、JVの担当者に聞いてみましたが、設計は最初から電柱方式になっていたらしく、「ここは田舎だから」という発言があったことから、コスト優先であったことが窺えます。例えば、この界隈の建売住宅の場合、ネット情報では4LDK、土地面積146.86㎡、建物面積106.1㎡の物件で2099万円とあります。
https://suumo.jp/jj/bukken/shosai/JJ012FD010/?ar=030&bs=020&nc=86038100&suit=nsuusbsp20121129001
↑完成した一戸建て。↑
■造成中の現場は立入禁止となっていたため、入口のガードマンに話を聞きました。しかし、スラグ問題についてはちんぷんかんぷんでした。それでも、「土地区画整理組合」の所在地を尋ねたところ、「JVの現場事務所の一角を借りているが、今日は祝日なので誰もいない」と言われました。
↑やけに白っぽいところだが、スラグの可能性ありや?↑
↑あまり雑草も生えていない。↑
帰路、教えて貰った通り、土地区画整理組合のある場所に行くと、確かに、現場事務所がありました。事業の看板を写真撮影していると、当会調査班のことを不審に思ったのか、ひとりの担当者と思しき人物が近寄ってきました。スラグの話を聞こうとしましたが、「今日は休日で・・」の一点張り。組合の事務所も誰もいないというので、スラグの話は聞けませんでした。
↑JVの現場事務所。↑
↑火葬場建設計画反対の看板。↑
造成地の中には他と比べて土の表面の色が異様に白っぽい場所がありました。また、移転された墓地の地面を白っぽかったので地表の石を手に取って調べてみました。すると、数個の石が固まってくっついていました。その周りは貝殻が沢山含まれる海砂利らしき土が敷かれていました。
↑東京ガスのおひざ元だけあって、都市ガスはすべて東京ガス。↑
↑バス停脇の移転墓地の地表で、貝殻の含まれた海砂利の中にスラグのような塊が見える。↑
↑これって、明らかにスラグだ。↑
↑白い粉に塗されたスラグだ。↑
↑モデルハウスとスラグ投棄場所。↑
↑海側(北側)から見た袖ケ浦駅。↑
こうして、組合関係者にはヒヤリングは出来ませんでしたが、明らかにスラグが大量に投棄されている実態を垣間見た感じがしました。
袖ケ浦駅の構内に戻ると、袖ケ浦市の観光スポットが映像で流されていました。袖ケ浦の海岸は全て埋め立てられてしまい、砂浜や岩場は全くありません。しかし、当日もそうでしたが、北西の方向に大きく冨士山が見通せます。
↑駅前駐車場の看板。↑
↑看板の根元にもスラグ。↑
↑未舗装の駐車場。白い粉が風で吹き上げられるのが心配だ。↑
↑駅の構内の観光PRディスプレー。富士山の見える光景が売り。↑
↑
■今回の袖ケ浦市のスラグ無断投棄問題について、マスコミ報道された記事によれば、次の問題が指摘されています。なお、当会のコメントを赤字で追記してあります。
(1)当初はスラグの使用計画はなかった。←(当会コメント:確かに支出計画にはスラグという記載が見当たらない。但し「整地費」として12.42億円が計上されている。さらに道路・水路・公園築造費として計25.70億円が計上されている)
(2)JV側は2012年1月、組合の理事会に工事費などの詳細を説明しないままスラグを使って地盤改良することを報告しただけで、組合の意思決定機関である「総代会」や事業を所管する千葉県の承認を得ずに地盤改良工事に着手した。←(当会コメント:組合の事業計画書の第1回変更は2012年5月22日、第2回変更は2013年9月27日となっている。なお事業計画書には第2回変更後でも「地盤改良工事費」という項目は見当たらない)
(3)地盤改良材として新日鉄住金君津製鉄所から排出された製鋼スラグを約24万トン搬入し埋設した。←(当会コメント:対象面積が約48.96ヘクタールあることから、製鋼スラグが1㎡当たり平均約500キロ埋め込まれたことになる。嵩比重を2と仮定すると、1㎡当たり厚さ25センチ分が敷き込まれた計算だ)
(4)JV側は地盤改良工事費を約10億円としているが、土地区画整理法では当初の予定にない工事費を計上する場合、地権者と県の承認を受けて資金計画を変更することを義務づけている。←(当会コメント:スラグを用いた地盤改良工事としてJV側が約10億円と新たに計上された場合、スラグ1トンあたり、4,167円となる。天然砕石の代わりにスラグを使った場合少なくとも1トン当たり1,500円のコスト安となることから、JV側は3億円以上儲けることができる勘定になる)
(5)JV側が資金計画変更の承認を総代会に求めたのは、地盤改良工事の約8割を終えた2014年12月になってからで、同法に抵触する疑いがある。 ←(当会コメント:JV側が資金計画変更を総代会に求めるのであれば、スラグを使ったことにより3億円以上コスト削減できたという理由で、値引きするのが当然だが、どうやらそうした動きは皆無のようだ)
(6)スラグは石や砂状で有害物質を含んでいなければ再生利用でき、道路などの軟弱地盤改良に使われるが、水と反応して膨張する性質がある。新日鉄住金が地権者に説明した内容によると、これ以前に宅地開発での利用事例はないという。←(当会コメント:ジオタイザーのデータベースには、直轄工事等で活用された後の「試行実証評価」及び「活用効果評価」が実施されていない、いわゆる「事後評価未実施技術」とある。なぜこんなものが市場に出回るのか不思議だ)
(7)搬入されたスラグは2015年8月、「ジオタイザー」の名称で国に商品登録され、新日鉄住金は国に提出した資料で「2014年に開発」と記しているが、搬入開始はそれより2年も前の2012年からだった。←(当会コメント:ジオタイザーの開発着手は2014年、登録年月日は2015年8月11日となっている。どうみても不法投棄目的としか思えない)
(8)資料には留意事項として「(土との)混合率が30%を超える場合は、改良土の膨張について問題ないことを事前配合試験で確認する必要がある」と記されている。←(当会コメント:前項のとおり、事後評価未実施技術であり、使用には慎重さが求められている)
(9)スラグを巡っては、再生利用できなければ産業廃棄物となり、その処分に1トン当たり2万〜4万円程度かかるため、過去に再生利用を偽装した安価な取引がたびたび問題化している。組合はJVにスラグの取引価格の開示を求めたが、JV側は拒否。このため組合は、スラグの全面撤去や取引価格の開示に応じるまで、資金計画の変更を承認しないことを決めた。←(当会コメント:スラグの取引価格の開示を拒む業者側の対応は極めて怪しい。実際には、新日鉄住金からタダ同然で引き取って、しかも輸送費も新日鉄住金に見て貰っていたかもしれない)
(10)国交省市街地整備課は2016年1月12日、JV側に対して改善を求めた。←(当会コメント:どのような内容の改善要請なのかが不明)
(11)奥村組と竹中土木いわく「国や県の指導を受けたことはなく、地盤改良材の安全性に問題はない。他の質問への回答は差し控えさせていただく」という。←(当会コメント:今年1月12日に国の改善指導を受けているハズなのに、「指導を受けたことはない」というJV側の回答はウソということになる)
(12)新日鉄住金広報センターいわく「ジオタイザーは2011年5月には既に『軟弱地盤改良用製鋼スラグ』の名称で商品化し、2015年8月に新たな名称を付けて(国に)登録した。膨張試験をして結果はJVに示している。万一地盤に問題が発生した場合、必要な協力をJVと協議させていただく」という。←(当会コメント:なぜ新日鉄住金は組合に対して直接協議をしようとしないのか。それは業者との癒着があるからなのでは)
■こうしてみると、地権者約400人で作る区画整理組合のことを、JV側も新日鉄住金側も完全に舐めてかかっていることがわかります。何も知らない組合の関係者を騙すのは、「簡単だ。それに説明したって分かりっこない」という思い込みが背景にあることが窺えます。
さて、次に、行政関係を見てみましょう。とくに、廃棄物の不法投棄については、各県の担当部署の業務となっていますが、千葉県の対応はどうなのでしょうか。同県のホームページを見てみましょう。
**********千葉県HP「報道発表案件」
https://www.pref.chiba.lg.jp/tosei/press/2015/sodeumi.html
更新日:平成28(2016)年1月29日
袖ケ浦駅海側特定土地区画整理事業について
発表日:平成28年1月22日
県土整備部市街地整備課
袖ケ浦駅海側特定土地区画整理事業について、県は事業計画の変更手続きを速やかに提出するよう求めている。
なお、地盤改良に使用する素材等については、組合と業務代行者で十分協議し、合意を図った上で事業を進めるよう指導している。
1 事業概要
施行者 :袖ケ浦市袖ケ浦駅海側土地区画整理組合
業務代行者 :(株)奥村組・(株)竹中土木JV一括業務代行
面積 :48.9ha
総事業費 :約77.9億円
施行期間 :平成23年度~平成29年度
2 組合施行に対する県の役割について
県は事業計画の認可権者である。
組合施行の土地区画整理事業については、県は認可権者として内容・手続きに問題がない限り認可しなければならないとされている。
土地区画整理事業においての資金計画の変更が生じているにもかかわらず、事業計画変更申請が行われていないことから、平成27年12月18日に組合に対し、事業計画変更申請を行うよう土地区画整理法第123条の勧告を行ったところである。
県は国の補助金を組合に対して補助を行う立場である。
(組合の役割について)
組合は公法人としての自立性、独立性が法的に保障されているものである。
その事業に対する組合の運営責任は組合自身が負うものである。
3 地盤改良の素材について
地盤改良の素材については、組合と業務代行者である(株)奥村組・(株)竹中土木JVで協議した上で決定されるべきものであるが、今回、県は両者の間に入り、円滑な事業推進のため、指導助言をしてきたところである。
<お問い合わせ>
所属課室:県土整備部市街地整備課市街地整備班
電話番号:043-223-3243
ファックス番号:043-222-4068
******
■以上のように、赤字で示した通り、今回の事件はスラグ問題なのに、「スラグ」という言葉が一言も出てきません。これは、言ってみれば行政と業者の癒着を示唆していると言えるでしょう。
この袖ケ浦市のスラグ無断投棄問題については、引き続き注視してまいりたいと存じます。
【2月15日追記】
・今回のスラグ無断投棄問題について、現地からもたらされた情報によれば、既に施行者である「袖ケ浦市袖ケ浦駅海側土地区画整理組合」の関係者は、奥村組・竹中土木JVとの間で、本件について合意の手打ちを済ませたらしい、とのことです。
・確かに当会の調査班が現地を訪れた時点でも、平常通り工事が続けられており、スラグの件で現場のJV関係者に話を持ち掛けても、「そういう話は知らない」という返事ばかりでした。
・どうやら、千葉県および周辺自治体に対して強大な影響力を行使できる立場の新日鉄住金の君津製鉄所から直線距離にして5キロ余りしか離れていない袖ケ浦市の土地区画整理組合にとって、あちこちから圧力がかかったことは想像に難くありません。
・しかし、組合の関係者を屈服させることはできたとしても、敷地内に無断投棄されたスラグの存在は厳然たる事実であり、その上に住宅や商業施設を建てて、生活したり営業したりする人たちにとって、リスクが軽減されたことにはなりません。
・新日鉄住金の君津製鉄所の構内には、大同特殊鋼の君津工場もあります。群馬県におけるスラグ不法投棄問題で、どうすれば行政をコントロールできるかについて豊富な経験と知見を持つ同社が、株主である新日鉄住金に対して、今回の袖ケ浦駅海側の土地区画整理事業におけるスラグ無断投棄問題の対応策について、助言をしたのかどうか、当会では確認できておりません。
【市民オンブズマン群馬・他県のスラグ問題調査班(リットン調査団・分遣隊)】
※以下関連情報
**********区画整理事業場所の航空写真による進捗推移
↑2012年12月撮影。このころすでにスラグが搬入され始めていたことになる。↑
↑2013年8月撮影。造成場所の色が随分白っぽいが、スラグの影響かもしれない。↑
↑2014年1月撮影。やはり白っぽい。↑
↑2014年9月撮影。海側の新規造成エリアは、やはり随分と白っぽい。↑
↑2015年7月撮影。やはり随分と白っぽく見える。↑
**********毎日新聞2016年1月22日
http://mainichi.jp/articles/20160122/k00/00m/040/095000c
スラグ 24万トン無断埋設 地権者が撤去要求 千葉
千葉県袖ケ浦市の大規模な土地開発事業を巡り、土地区画整理法で義務づけられている地権者の承認を得ないまま、鉄精製時の副産物である「製鋼スラグ」が約24万トン埋設されていることが分かった。スラグは水と反応して膨張する性質があり、これ以前に宅地造成に使用された例はないとされる。地権者は不安視し、スラグの全面撤去を要求。同法を所管する国土交通省も調査を始めた。
この事業はJR袖ケ浦駅北側に広がる田畑などを宅地として再開発するもので、地権者約400人で作る区画整理組合が主体となり、中堅ゼネコンの奥村組(大阪市)と竹中土木(東京都江東区)の共同企業体(JV)が受注した。2011年7月に着手され、東京ドーム10個分に匹敵する約50ヘクタールの敷地に、地権者の戸建て住宅や大規模マンション、大型商業施設、道路などを造成し、17年度末の完成後には約3700人が居住する計画。総事業費は約78億円で、このうち約17億円は国の、約7億円は市の補助金が充てられる。
毎日新聞が入手した資料や地権者によると、当初はスラグの使用計画はなかったが、JV側は12年1月、組合の理事会に工事費などの詳細を説明しないままスラグを使って地盤改良することを報告しただけで、組合の意思決定機関である「総代会」や事業を所管する千葉県の承認を得ずに地盤改良工事に着手。地盤改良材として新日鉄住金(東京都千代田区)の君津製鉄所(千葉県君津市)から排出された製鋼スラグを約24万トン搬入し埋設した。
JV側は地盤改良工事費を約10億円としているが、土地区画整理法では当初の予定にない工事費を計上する場合、地権者と県の承認を受けて資金計画を変更することを義務づけている。JV側が資金計画変更の承認を総代会に求めたのは、地盤改良工事の約8割を終えた14年12月になってからで、同法に抵触する疑いがある。
スラグは石や砂状で有害物質を含んでいなければ再生利用でき、道路などの軟弱地盤改良に使われるが、水と反応して膨張する性質がある。新日鉄住金が地権者に説明した内容によると、これ以前に宅地開発での利用事例はないという。
搬入されたスラグは15年8月、「ジオタイザー」の名称で国に商品登録され、新日鉄住金は国に提出した資料で「14年に開発」と記しているが、搬入開始はそれより2年も前だった。資料には留意事項として「(土との)混合率が30%を超える場合は、改良土の膨張について問題ないことを事前配合試験で確認する必要がある」と記されている。
スラグを巡っては、再生利用できなければ産業廃棄物となり、その処分に1トン当たり2万〜4万円程度かかるため、過去に再生利用を偽装した安価な取引がたびたび問題化している。組合はJVにスラグの取引価格の開示を求めたが、JV側は拒否。このため組合は、スラグの全面撤去や取引価格の開示に応じるまで、資金計画の変更を承認しないことを決めた。国交省市街地整備課は1月12日、JV側に対して改善を求めた。【杉本修作】
★奥村組と竹中土木の話 国や県の指導を受けたことはなく、地盤改良材の安全性に問題はない。他の質問への回答は差し控えさせていただく。
★新日鉄住金広報センターの話 ジオタイザーは2011年5月には既に「軟弱地盤改良用製鋼スラグ」の名称で商品化し、15年8月に新たな名称を付けて(国に)登録した。膨張試験をして結果はJVに示している。万一地盤に問題が発生した場合、必要な協力をJVと協議させていただく。
**********東京新聞2016年1月23日
【千葉】計画変更せず地盤改良 袖ケ浦市区画整理 スラグ24万トンを使用
↑袖ケ浦駅海側の土地区画整理事業地。右奥の白い外観の建物が駅舎=袖ケ浦市で↑
県は二十二日、袖ケ浦市の大規模な土地区画整理事業をめぐり、土地区画整理法で義務付けられている事業計画変更の手続きがないまま、計画にない地盤改良材が使われていたとして、昨年末、施行者に計画変更申請をするよう勧告していたことを明らかにした。工事を受注したゼネコンの奥村組と竹中土木の共同企業体(JV)が、鉄精製時に排出される「製鋼スラグ」を材料とした地盤改良材を、使用計画の無いまま約二十四万トン使用していた。
県によると、事業は二〇〇九~一七年度にかけて、JR袖ケ浦駅前の約五十ヘクタールの水田などを商業地や住宅地などに再開発する計画。施行者は、約三百五十人の地権者らでつくる土地区画整理組合。総事業費は約七十七億九千万円で、うち国から約十六億八千五百万円、市から約七億一千八百万円の補助金が充てられる。
昨年二月、JVが当初は使用計画の無かった地盤改良材を使っていることなどを、組合が県に相談。JV側は地盤改良材の使用について組合側に説明していたが、費用負担の増加などについて組合の承認を得ずに工事に着手したという。
県は、組合とJV双方に十分協議し合意した上で事業を進めるよう指導してきた。使われた地盤改良材は一一年に商品化されている。開発地は地盤が軟弱で、県は「計画が変更されていれば、使用に問題はなかった」としている。 (村上一樹)
**********日本経済新聞203年2月20日電子版
JR袖ケ浦駅前、宅地開発で定住者呼び込め
千葉県袖ケ浦市のJR袖ケ浦駅前で大規模な区画整理事業が進んでいる。地権者でつくる袖ケ浦駅海側土地区画整理組合が中心となり、約50ヘクタールの土地を3700人が住む宅地に変える。近くを東京湾アクアラインが走る立地を生かし、大型分譲地を整備して県内の他、東京都や神奈川県からも定住者を呼び込む。隣接地で人口増が続く木更津市に対抗する。
「袖ケ浦駅海側地区」の開発では駅寄りの半分を14年秋までに、残る海側を16年秋までに造成する。着工は11年で、地区内に2%しかなかった宅地を46%に増やす。マンションや戸建て住宅の建設を促し、70人だった人口を50倍以上に増やす計画だ。
袖ケ浦市は区画整理に合わせ、南側にしか出入り口のなかったJR駅舎を改築する考え。市が費用の大部分を負担して、14年秋をめどに同駅の南北を行き来できる通路などを設ける。
新たにできる北口前には高速バスの乗り場も整備する。袖ケ浦市内では東京湾アクアラインを経由して東京駅や横浜駅などに向かう5路線のバスが走っている。駅前乗り場にこれらの路線が乗り入れれば、通勤客の利便性が高まるとみる。
駅前には4.6ヘクタールの商業用地も確保する。食品スーパーなどを誘致する計画で、すでに交渉を始めている。住宅や商業施設などの都市機能を中心部に集めた「コンパクトシティー」を目指す。
アクアラインの開通を機に、着岸地の金田インターチェンジ(IC)がある木更津市には周辺市や対岸の川崎市などから人口の流入が続いている。区画整理で造成した5つの宅地には約2万人が移り住んだ。袖ケ浦市の人口は横ばいで、大規模な区画整理は20年前に同駅で10ヘクタールを供給した程度。市は「宅地供給の出遅れが響いた」とみる。
ここへ来て地価に下げ止まりの傾向が見え始めたことが、区画整理事業を後押ししている。市と区画整理組合は区画整理後の宅地の売却価格を1平方メートル当たり4万8000円程度、整理前の2倍強になるとそろばんをはじいている。
対象地区はJR駅が間近で、千葉方面へも通勤しやすい。市の財政を支えた湾岸のコンビナートに陰りが見えるなか、区画整理事業への期待は大きい。
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