市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…バイオマス発電補助金差止の出直し裁判で被告群馬県から仰天の答弁書

2017-03-07 23:48:00 | 前橋Biomass発電問題・東電福一事故・東日本大震災

■東電福島第1原発事故で放射能汚染された間伐材や廃材を群馬県内外から赤城山南麓に集積し、木質チップにした後、高圧プレスにかけて水分を絞り出し、その後ボイラーに投入して燃焼させ、蒸気タービンを介して発電機を駆動するという亡国事業を、あろうことか東電グループの関電工が進めています。そのため、当会では地元市民団体とともにこの事業に支出される補助金の交付差止のための行政訴訟を提起しています。最初に提起した事件では、住民監査結果通知が原告に届いてから30日を過ぎているのではないか、とか、まだ補助金は交付されていないから原告資格に疑義がある、などとする被告群馬県のいやがらせのため、第3回口頭弁論を経た今でも、本案に入れないままの状態が続いています。

バイオマス補助金支払差止請求事件の出直し裁判で、被告群馬県から原告らに、3月6日(月)に配達されてきた答弁書が同封された封筒。

 このため裁判所の民事第2部の裁判長の訴訟指揮により、あらためて補助金の一部支払いが確認できた時点で行った住民監査請求を経て住民訴訟に持ち込んでいたところ、2月6日に第1回口頭弁論期日に関する呼出通知が原告に届きました。

 これに関連して2月2日の午後4時ごろ前橋地裁民事第1部から電話があり、「3月15日に別件の裁判があるようなので、同じ日ではどうか?」との打診があったので、「配慮くださりありがとうございます。ぜひその日でお願いします」と当会からお願いした経緯があります。

■そうした最中、3月15日の第1回口頭弁論を間近に控えた3月6日に、被告の群馬県の訴訟代理人の弁護士事務所から答弁書を同封した封筒が郵送されてきました。

 早速、中身をチェックしたところ次の内容の書類が入っていました。

 送付書兼受領書については、さっそくFAXで受領通知を発信しておきました。ご覧のように前橋地裁のFAX番号が間違っていたので、正しいFAX番号に訂正しました。かなりズボラな担当弁護士のようです。

*****送付書兼受領書*****PDF ⇒ 20170306tij.pdf

前橋地方裁判所民事第1部合議係(本多書記官殿)御中
原告
小 川   賢  殿
原告
羽 鳥 昌 行  殿

                     平成29年3月3日
                  前橋市大手町3丁目4番16号
                   被告訴訟代理人
                   弁護士  織 田 直 樹
                  TEL027-235-2040/FAX027-230-9622

           送  付  書

 事件の表示 : 御 庁 平成28年(行ウ)第27号
 当 事 者 : 原 告 小川 賢 外1名
         被 告 群馬県知事 大海正明
 次 回 期 日 : 平成29年3月15日 午前10時30分

   下記書類を送付致します。宜しくお願い致します。
    1 答弁書          1通
                       以上

---------------切らずにこのままでお送り下さい--------------
           受  領  書

上記書類、本日受領致しました。
                       平成29年3月6日

         原告  小 川   賢    印

前橋地方裁判所民事第1部合議係御中(本多書記官殿):FAX 027-233-0901
弁護士 織 田 直 樹    様         :FAX 027-230-9622
**********

■答弁書の内容は次のとおりです。

*****答弁書*****PDF ⇒ 20170306ocix2pdf.pdf
<P1>

平成28年(行ウ)第27号 住民訴訟によるバイオマス補助金支払差止請求事件
原 告 小川賢 外1名
被 告 群馬県知事 大澤 正明

           答 弁 書

                     平成29年3月3日

前橋地方裁判所民事第1部合議係 御中

          〒371-0026
           前橋市大手町三丁目4番16号
           石原・関・猿谷法律事務所(送達場所)
           TEL 027-235-2040 / FAX 027-230-9622
           被告訴訟代理人弁護士 石  原  栄  一
           同          関  夕  三  郎
           同          織  田  直  樹
           同指定代理人     栗  原  紀  喜
           同          多  胡  正  洋
           同          折  田  知  徳
           同          武  藤     淳

<P2>

           同          鈴  木  利  光
           同          石  井  米  吉

第1 請求の要旨(趣旨)に対する答弁
1 本案前の答弁
 (1)原告の本件訴えを却下する。
 (2)訴訟費用は原告の負担とする。

2 本案の答弁
 (1)原告の請求を棄却する。
 (2)訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。

第2 本案前の主張
  原告らは,平成28年7月15日に,本訴と同一の被告に対し,本訴と同一の請求の趣旨により訴訟を提起し,現在,御庁民事第2部合議係に係属している(平成28年(行ウ)第12号 住民訴訟によるバイオマス補助金取消し請求訴訟。以下「別件訴訟」という。)。
  したがって,本訴と別件訴訟とは,二重起訴禁止(民事訴訟法142条)に該当し,本訴は不適法却下されるべきである。

第3 請求の原因(訴状「第2」乃至「第6」)に対する認否
1 「第2 当事者」について
  認める。
2 「第3 住民監査請求」について
(1)(1)について

<P3>

  認める。
(2)(2)及び(3)について
  不知。
(2)(4)について
  監査結果(群監第202-86)が平成28年11月28日付であることは認め,その余は不知。
3 「第4 監査請求と監査結果に対する不服」
(1)(1)について
  認める。
(2)(2)について
  群馬県監査委員会による監査結果通知(甲34)の引用部分は認め,その余は否認ないし争う。
4 「第5 群馬県の損失」について
  否認する。
5 「第6 本件請求の要旨」について
(1)第1段落乃至第4段落について
  認める。
(2)第5段落について
  前橋バイオマス燃料が平成28年6月28日に渋川森林事務所長に対して本件補助金交付申請書を提出し,同所長が前橋バイオマス燃料に対して,同年7月4日,本件補助金交付決定を行ったことは認め,その余は否認ないし争う。
(3)第6段落について
  認める。
(4)第7段落及び第8段落について
  否認ないし争う。
(5)第9段落について
 ア(1)「補助事業の目的から逸脱していること」について

<P4>

(ア)第1段落及び第2段落について
   認める。
 (イ)第3段落について
   否認ないし争う。
 (ウ)第4段落について
   認める。
 (エ)第5段落及び第6段落について
   否認ないし争う。
 イ(2)「補助金交付を受ける資格がないこと」について
 (ア)第1段落について
   株式会社松井田バイオマスが平成26年10月27日に「株式会社前橋バイオマス」に商号を変更したこと,及び,同社がさらに平成27年9月25日に「前橋バイオマス燃料株式会社」に商号を変更したことは認め,株式会社関電工のグループ関係,及び,株式会社松井田バイオマスの資本関係は不知,その余は認否の必要性を認めない。
 (イ)第2段落について
   被告が平成27年度9月補正予算案として本補助金を計上したこと,同月14日から群馬県議会の定例会が開催されたこと,同月25剛こ県議会本会議で一般質問が行われたことは認め,その余は認否の必要性を認めない。
 (ウ)第3段落乃至第5段落について
   否認ないし争う。
ウ(3)「地元及び周辺住民への事業に関する周知が不徹底であること」について
 (ア)第1段落乃至第4段落について
   不知。
   被告は,個別の説明会における具体的な様子について関知するものでは

<P5>

  ない。
 (イ)第5段落について
   否認ないし争う。
エ(4)「事業主体の出資者である関電工の社是や環境方針と合致しないこと」について
  認否の必要性を認めない。
  本訴訟は補助金交付決定の違法性を争うものであるところ,事業主体の出資者の社是や環境方針との不一致は,これ自体,同決定の違法性を根拠づけるものではないため,主張自体失当である。
オ(5)「安全な間伐材を県内から安定的に調達することは不可能であること」について
 (ア)第1段落について
   関電工が事業主体であることは否認し,その余は不知。
   事業主体は前橋バイオマス燃料である。
   また,被告は,関電工による個別的発言について関知するものではない。
 (イ)第2段落について
   否認ないし争う。
 (ウ)第3段落乃至第5段落について
   原告らの本事業に対する評価や原告らの推測する事業主体らの主観については不知,その余は否認ないし争う。
 (エ)第6段落について
   否認ないし争う。
 (オ)第7段落について
   前橋バイオマス燃料及び同発電の恩恵を受ける地域住民は殆どいないに等しいことは否認ないし争い,その余は認める。
 (カ)第8段落について
   否認ないし争う。

<P6>

 カ(6)「事業主体の信頼性に瑕疵があること」
 (ア)第1段落について
   近隣住民への説明経過(甲8)の中に「反対意見は無し」と記載された箇所があることは認め,その余は不知。
 (イ)第2段落について
   否認ないし争う。
 (ウ)第3段落及び第4段落について
   『森林整備加速化・林業再生基金事業実施要領』の引用部分については認め,その余は否認ないし争う。
 キ(7)「放射能汚染対策に重大な不備があること」
   否認ないし争う。
 ク(8)「本事業主体の運営・技術面に係るレベルと実績等がお粗末であること」について
   株式会社卜-センが事業主体であることは否認し,その余は認否の必要性を認めない。
 ケ(9)「環境アセスメントを実施しないまま計画を脱法的に進めようとしていること」
   否認ないし争う。
(6)第10段落(12頁)について
  否認ないし争う。
                      以 上
**********

■これでは訴状のどこに対してどのような答弁をしているのかわかりにくいので、訴状と対比させてみましょう。

*****訴状との対比*****
            訴    状

                        平成29年12月26日

前橋地方裁判所 御中

         原告 〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
                  小  川     賢
                  電話090-5302-8312
         同  〒371-0244 群馬県前橋市鼻毛石町1991-42
                  羽  鳥  昌  行
                  電話090-1657-5358
         被告 〒371-8570 群馬県前橋市大手町一丁目1番1号
                  群馬県知事 大澤 正明

住民訴訟によるバイオマス補助金支払差止請求事件

訴訟物の価格   160万円(算定不能)
貼用印紙額    13,000円

第1 請求の要旨
1. 被告群馬県知事大澤正明は、平成27年9月4日に平成27年度9月補正予算案として計上した「事業名 木質バイオマス発電燃料製造施設等整備」に係る補助金480,000,000円を支出してはならない。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。

【被告の答弁】
1 本案前の答弁
 (1)原告の本件訴えを却下する。
 (2)訴訟費用は原告の負担とする。
2 本案の答弁
 (1)原告の請求を棄却する。
 (2)訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
【被告の本案前の主張】
  原告らは,平成28年7月15日に,本訴と同一の被告に対し,本訴と同一の請求の趣旨により訴訟を提起し,現在,御庁民事第2部合議係に係属している(平成28年(行ウ)第12号 住民訴訟によるバイオマス補助金取消し請求訴訟。以下「別件訴訟」という。)。
  したがって,本訴と別件訴訟とは,二重起訴禁止(民事訴訟法142条)に該当し,本訴は不適法却下されるべきである。

↑当会コメント:被告が自ら本案前の疑義として期間徒過を理由に裁判所に原告の提訴を無効だとねじ込んだくせに、よくもまあこんな主張ができるものだ。この件は3月10日の前橋地裁で民事第2部の裁判長から訴訟指揮が示されると考えられる。

第2 当事者
(1)原告らは群馬県の住民であり納税者である。
(2)被告は、群馬県知事であり、上記補助金を計上した者である。
(3)訴外 前橋バイオマス発電㈱、㈱前橋バイオマス燃料㈱、㈱トーセン、㈱関電工、群馬県森林組合連合会、群馬県素材生産流通協同組合

【被告の答弁】認める。

第3 住民監査請求
(1)平成28年9月23日、原告らは群馬県監査委員に、地方自治法第242条第1項により、「事業名 木質バイオマス発電燃料製造施設等整備」(以下、「本事業」という。)にかかる補助金(以下、「本補助金」という。)について措置請求(甲第1~9及び21~23号証)を行った。

【被告の答弁】認める。

(2)平成28年10月20日、原告らは群馬県監査委員に対して、地方自治法第242条第6項の規定に基づき、意見の陳述と証拠の提出(甲第24・25号証)を行った。

【被告の答弁】不知。

(3)平成28年11月30日、原告らは、請求棄却の監査結果(平成28年11月28日付、群監第202-86号)(甲第34号証)を受け取ったが不服である。

【被告の答弁】
 監査結果(群監第202-86)が平成28年11月28日付であることは認め,その余は不知。


第4 監査請求と監査結果に対する不服
(1)原告らは、群馬県監査委員に対し、「知事大澤に対し、本事業は補助金交付事業として不適格であるため、群馬県知事においては、本事業に対する補助金の交付を直ちに取り下げることが必要である。」との趣旨で、監査請求を申し立てた。(甲第1号証)

【被告の答弁】認める。

(2)ところが、監査委員が判断した結果は「本件措置請求において、請求人は、本件補助金の交付を含む平成27年度9月補正予算案を決定した群馬県議会平成27年第3回前期定例会における議決の撤回を求めていると解され、議会の行為は、住民監査請求の対象外であり、本件補助金を平成27年度補正予算から支出することを決めた措置の撤回を求めるとする部分は、不適法である」(甲第34号証。上から22~26行目)と勝手に解釈を被告の都合のよいように曲げて解釈し、一方的に論を展開している。
   さらにこう続く。「請求人は、本件補助金交付申請に基づく本件補助金の交付を差止めるよう求めているものと解される」(甲第34号証。上から27~28行目)と。しかし原告は、補助金交付事業として不適格であるから交付をしないよう求めているだけである。議会の議決云々の小さな議論をしているのではない。
 また、監査委員はこうも主張している。「本件補助金の交付は、県産木材における放射性物質の汚染状況のほか、燃料チップ製造施設に搬入される木材や発電事業によって発生する焼却灰等の管理方法も含めて、県議会において適法な手続のもとに審議され、政策的な判断として可決されたものである以上、財務会計行為の是非を問う住民監査請求においては、所論のような理由によって本件交付決定を違法又は不当とすることはできない」(甲第34号証。上から7~10行目)と。しかし、殆ど何の議論も無いまま、何のチェックも無いまま、書類だけで会計行為が行われたのだから大問題である。ここでの政策的判断とは何なのか。大企業優位の、経済優先の、現政権の人権無視の判断としか言いようがなく、その議論からは住民や環境問題などは全て蚊帳の外とされてしまっている。
 さらに、「被告は、本件発電事業に係る環境アセスメント手続の不備を主張するが、本件発電事業は、本件補助金の補助対象事業である本件施設整備事業とは別法人が行う事業であって、本件発電事業の実施に係る行政手続は、本件補助金交付決定の要件とは関わりがないから、これによって本件交付決定を違法又は不当とすることはできない」(甲第34号証。上から14~17行目)と、しかし、ここではっきりさせておかなければならないことは、燃料事業と発電事業は同一場所での実施が計画されており一体化としてみなすことができることである。発電事業がなければ燃料工場は成り立たず、その逆もまたしかしである。事実、両法人とも関電工とトーセンが主な出資者となっている。したがって、発電事業に瑕疵があるとしたら交付は許されるものではない。

【被告の答弁】
 群馬県監査委員会による監査結果通知(甲34)の引用部分は認め,その余は否認ないし争う。


第5 群馬県の損失
(1)本事業にかかる本補助金480,000,000円は、公金で負担すべき理由がなく、群馬県の損失である。

【被告の答弁】否認する。

第6 本件請求の要旨
 甲第2号証によれば、群馬県は、平成27年9月4日に平成27年度9月補正予算案として、次の本事業を後述する本補助金の対象事業として計上し、本事業は、同年9月14日から10月7日まで開催された群馬県議会第3回前期定例会に上程され承認された。
  事業名:(新規)木質バイオマス発電燃料製造施設等整備〔環境森林部林業振興課〕
  金 額:480,000千円
  説 明;・林業県ぐんまの実現に向け、未利用材の活用を推進するため、木質バイオマス発電燃料(チップ)の製造施設整備に対して補助。
・事業主体:前橋バイオマス燃料(株)
・補 助 率:6/10以内
 即ち上記の4億8000万円は、本事業費8億円に対する本件補助金で、国は50%、県が10%の補助率とされている。
 本事業は、関電工が、親会社である東京電力を主体とする赤城山麓にある電力中央研究所の敷地内に建設を計画中の木質バイオマス発電施設に併設される、同発電施設専用のチップ破砕施設やチップ加工施設貯蔵庫の整備を行うもので、発電用に使われるチップの年間生産量は7万トン、原料である間伐材等の受入量は8万4100トンであり、補助対象施設設備は、燃料乾燥施設、作業用建物兼燃料貯蔵庫、チップ製造機等とされている。
 また、本事業主体は、㈱トーセン、㈱関電工、群馬県森林組合連合会、群馬県素材生産流通協同組合の共同出資の「前橋バイオマス燃料㈱」とされている。

【被告の答弁】第1段落から第4段落は認める。

 しかし、本補助金が投入されることになる木質バイオマス発電用のチップ燃料の製造施設整備事業、および、同事業と同じ場所に立地される木質バイオマス発電施設は、未だに事業の内容について、不確定な情報が多く、事業者はもとより関連自治体など行政側においても、十分に説明責任が果たされているとは言えない。それにも関わらず、前橋バイオマス燃料株式会社(以下「前橋バイオマス燃料」という)は、平成28年6月28日、渋川森林事務所長に対して本件補助金交付申請書を提出し、同所長は、前橋バイオマス燃料に対して、同年7月4日、本件補助金交付決定を行った。(甲第25号証)

【被告の答弁】第5段落について
  前橋バイオマス燃料が平成28年6月28日に渋川森林事務所長に対して本件補助金交付申請書を提出し,同所長が前橋バイオマス燃料に対して,同年7月4日,本件補助金交付決定を行ったことは認め,その余は否認ないし争う。


 本件補助金交付決定に基いて、前橋バイオマス燃料は、同年8月5日、渋川森林事務所長に対して概算払請求書を提出し、2億2230万円の支払いを請求し、これを受け、同所長は、同月16日、補助金概算払いとして、2億2230万円を支出したことは別訴(御庁事件番号「平成28年(行ウ)第12号」、乙第5号証)で明らかとなっている。同様に、前橋バイオマス燃料は、同月19日、1620万円の概算払い請求を行い(御庁事件番号「平成28年(行ウ)第12号」、乙第6号証)、渋川森林事務所長は、同月26日に、1620万円を概算払いとして支出した(御庁事件番号「平成28年(行ウ)第12号、乙第7号証)。以上のとおり、渋川森林事務所長は、同日までに、本件補助金交付決定額4億8000万円のうち、概算払いにより、合計2億3850万円を支出している。

【被告の答弁】第6段落について認める。

 本事業により燃料の供給を受ける関電工とトーセンが出資する前橋バイオマス発電㈱による木質バイオマス燃焼による発電事業では、放射能汚染された燃料を燃やすことにより、高濃度の放射性物資が濃縮され、それらが排ガスとして、あるいは燃焼灰として、さらには排水として、長年にわたり半恒久的な排出源となることから、その影響は地元及び周辺住民のみならずひろく群馬県に住む多くの県民に及ぶことになる。
 そのような危険性が指摘される中、住民らの不安要素が払しょくされないまま、木質バイオマス発電事業が進められているが、次に示す問題点により、本事業は補助金交付事業として不適格であるため、被告群馬県知事においては、本事業に対する補助金の交付を直ちに取り下げることが必要である。

【被告の答弁】第7段落及び第8段落について
  否認ないし争う。


 次にその理由を述べる。
(1)補助事業の目的から逸脱していること
 本事業は、次の補助事業によるものとされている。
群馬県は、前橋バイオマス燃料に森林整備加速化・林業再生費補助金及び森林整備加速化・林業再生整備費補助金により森林整備加速化・林業再生基金を造成し、4億8000万円を交付を決定し、一部開始しているが、『森林整備加速化・林業再生事業実施要綱』の趣旨によると、森林・林業・木材産業を取り巻く喫緊の課題の解決に向けた地域の創意工夫に基づく総合的な取組を支援するため、森林整備加速化・林業再生事業費補助金及び森林整備加速化・林業再生整備費補助金を都道府県に交付して、森林整備加速化・林業再生基金(以下「基金」という。)を造成し、この基金を財源として事業実施主体(以下「事業主体」という。)が行う事業(以下「基金事業」という。)を実施することにより、東日本大震災からの復興を着実に推進するとともに、森林の多面的機能を発揮しつつ林業の成長産業化を実現することとする。と明記されており、この森林整備加速化・林業再生事業の目的が、東日本大震災からの復興を着実な推進であり、基金事業により復興の推進が図られなければ、補助金の目的に反しており、復興推進に寄与しない事業には、交付してはならない。

【被告の答弁】第1段落及び第2段落について認める。

<森林整備加速化・林業再生総合対策事業>

【被告の答弁】第3段落について否認ないし争う。
↑当会注:段落の数え方がずさん。どこが第3段落なのか?????

 この補助事業は、「森林整備加速化・林業再生計画」と呼ばれており、実施要綱別記1の第1に定める森林整備加速化・林業再生計画(以下「再生計画」という。)は、都道府県が地域の特性を活かし、地域が主体となって林業の成長産業化を実現するために、森林整備加速化・林業再生交付金(以下「交付金」という。)を活用して行う事業(以下「交付金事業」という。)の実施により達成すべき目標及びその達成状況を客観的に評価できる内容並びにそれを実現するために必要となる内容をとりまとめた計画とする、とされている。

【被告の答弁】第4段落について認める。

 本事業は、放射能汚染のリスクがない地域においては有効であるが、東京電力福島第一原発事故により大量に外部に放出された放射性物質が風にのって、隣接の北関東の山間部に降り注いだことによる放射能汚染の被害を受けた群馬県や栃木県、茨城県等においては、リスクの増大に結びつく結果をもたらすことになる。
 よって、放射能の除染対策に手を付けられない群馬県やその周辺の森林からの間伐材を集積してチップ化して燃焼させることは、法令違反行為であり、森林整備や林業再生という次元よりさらに根本的な住民の生命や財産の安全のほうが重要であることから、補助対象事業には当たらないことは明らかである。

【被告の答弁】第5段落及び第6段落について
 否認ないし争う。


(2)補助金交付を受ける資格がないこと
 関電工は、福島第一原発事故の原因者である東京電力のグループ会社であり、本来、放射能汚染に苦しむ住民に対して、謝罪すべき立場にあるはずである。また、甲第3号証によれば、株式会社トーセンが平成26年2月28日に設立した㈱松井田バイオマスという法人が平成26年10月30日に看板を架け替えただけの㈱前橋バイオマスに対して、甲第4号証によれば、関電工は、本件事業で補助金交付に関して群馬県議会の平成27年第3回定例会議の最中の同年9月28日に、群馬県森林組合連合会、群馬県素材生産流通協同組合とともに、104株の出資参加をして、併せて、関電工の戦略事業本部開発事業部長の石塚浩が取締役として役員に就任している。

【被告の答弁】第1段落について
 株式会社松井田バイオマスが平成26年10月27日に「株式会社前橋バイオマス」に商号を変更したこと,及び,同社がさらに平成27年9月25日に「前橋バイオマス燃料株式会社」に商号を変更したことは認め,株式会社関電工のグループ関係,及び,株式会社松井田バイオマスの資本関係は不知,その余は認否の必要性を認めない。


 即ち、知事大澤が、平成27年9月4日に平成27年度9月補正予算案として、次の事業を後述する補助交付金の対象事業として計上し、同年9月14日から開始された群馬県議会の定例会期間中、9月25日(金)の県議会本会議、一般質問までは補助金交付を受けるための事業主体ではなかった。

【被告の答弁】第2段落について
 被告が平成27年度9月補正予算案として本補助金を計上したこと,同月14日から群馬県議会の定例会が開催されたこと,同月25剛こ県議会本会議で一般質問が行われたことは認め,その余は認否の必要性を認めない。


 また、甲第4号証によれば、㈱前橋バイオマスの定款には「間伐材・廃材等の森林資源を有効利用してのバイオマス発電燃料云々」と記されており、本来、㈱トーセンは、廃棄物中間処理の許可が必要な廃材や木くずなどを間伐材に紛れ込ませて発電燃料として受け入れることを想定していた。そして、平成27年9月28日に関電工らが出資参加した際、「間伐材等を有効利用してのバイオマス発電燃料云々」と定款を変更したが、依然として「間伐材“等”」というふうに表現しており、放射能汚染された木くずや廃材などを間伐材に紛れ込ませようとする意図が強く感じられる。
 さらに甲第6号証及び甲第7号証によれば、平成27年6月22日に関電工とトーセンによって設立された㈱前橋バイオマス発電では、定款で「間伐材・廃材等の森林資源を有効利用してのバイオマス発電燃料云々」と明記されており、㈱前橋バイオマスの定款のコピペであることがわかる。このことは、㈱前橋バイオマス燃料の現在の定款に記されている「間伐材等」の“等”の意味が、廃材も含む可能性を示唆しており、極めて危険である。
 このような行き当たりばったりで未成熟な事業にたいして、補助金の交付をすることは、「最少の経費で最大の効果を挙げる」ことを要請している地方自治法第2条第14項及び「経費は、その目的を達するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない」 とする地方財政法第4条第1項の各規定に違反するものである。

【被告の答弁】第3段落乃至第5段落について
 否認ないし争う。


(3)地元及び周辺住民への事業に関する周知が不徹底であること
 甲第10号証に示すように、本事業については、平成27年5月の連休中に、事業計画予定地の電力中央研究所の敷地に隣接している赤城ビュータウンの住民らが、関電工が施工主として密かに掘削作業をしていた騒音に驚き、原因を調べてはじめて本事業の存在が発覚した。その後も、関電工は、本事業に関して、近隣住民に対する個別説明方式にこだわり、現在でも、「赤城ビュータウン以外の住民は原則として事業説明の対象としない」とする立場を取り続けている。
 関電工による平成27年10月、12月、平成28年3月に開かれた地元住民説明会では、口コミで本事業の存在を知った赤城ビュータウン以外の参加住民らが、「放射能汚染された木質資源を燃やすという違法行為による広範囲の放射能汚染の拡散のリスク」をアピールして、県内に広く事業の周知徹底を要請する声を上げても、本事業主体のリーダーである関電工は「我関せず」という態度をとり続けている。
 こうした関電工による本事業に関する極めて消極的な説明責任を見るにつけ、地元及び周辺住民らは関電工など事業主体に対して、一層不信感を募らせざるを得なくなっている。
 さらに、同じく本事業の事業主体である㈱トーセンに至っては、住民らの強い出席要請にもかかわらず平成27年10月3日の第1回地元説明会や平成28年3月27日開催の第3回地元説明会には全く顔を出さず、唯一平成27年12月20日開催の第2回地元説明会に出席したが、本事業について一言も語ることはしなかった。このため、監査請求人らをふくむ住民らは、肝心の本事業に関わる木質燃料チップ工場の施設の内容についての説明を事業主体から受けられずにいる。

【被告の答弁】第1段落乃至第4段落について
 不知。
 被告は,個別の説明会における具体的な様子について関知するものではない。


 このような事業内容の不透明性と、情報開示への消極性は、本事業の目的である「都道府県が地域の特性を活かし、地域が主体となって林業の成長産業化を実現する」こととは、相容れない。したがって、そのような社会性に欠ける企業が進める本事業には、我々の血税である補助金という公金を支出することは絶対に許されない。

【被告の答弁】第5段落について
 否認ないし争う。


(4)事業主体の出資者である関電工の社是や環境方針と合致しないこと
 関電工は事あるごとに、環境への基本姿勢を強調しているが、これを遵守するためには、本事業はまったく馴染まない。だからただちに本事業を白紙撤回しなければならない。
 参考までに、関電工の環境方針を以下に示す。
 【関電工環境基本方針】
理念
株式会社関電工は、循環型経済社会の構成員として、豊かな人間環境づくりに取り組み、絶えざる自己革新によって、地球環境の保全活動に貢献します。 
行動方針
地球環境の保全活動を、経営の重要課題の一つとして位置づけ、環境マネジメントシステムの改善を図るとともに継続的向上に努めます。
省資源、省エネルギー、資源リサイクル、汚染防止を、目指した活動を展開するとともに、廃棄物の減量化を推進します。
法規制及び協定書を遵守するとともに、環境に関する自主基準を制定し、環境保全に取り組みます。
社員への環境教育を徹底し、環境保全意識の向上に努めます。
地域社会との協調連帯を図り、社会との調和に努めます。
 関電工の環境方針は絵空事であり、木質バイオマス燃料や発電の事業による環境破壊は免れないであろう。例えば、放射能に汚染されたチップは、トーセンが新開発をしたという世界初を標榜する巨大な木質チップ脱水用のプレス機(このような実績もない製品に補助金が支給されること自体、通常ではありえない)で脱水される計画(だが、その廃液は、放射能除去を一切せず、地下に垂れ流しされる計画となっている。推定するに、年間1万トン程度は地下に捨てられる。排ガスについては、バグフィルターで放射性物質は、多少気休め程度の除去は期待できるかもしれない。ちなみに、住民からバグフィルターに加えてさらに電気集塵機や、排ガス中の残留セシウムの除去に有効なスクラバーとよばれるガス水洗装置の増設要請が説明会で提案されたが関電工はこれも一顧だに検討せず、拒否していた。しかし、廃液については、全く意識が無く、第二の豊洲になることは間違いない。それは、放射能を土壌が溜め込み、あっという間に、その土壌は、特定廃棄物(8000ベクレル/kg以上)になってしまうからである。また、廃液の放射能除去は、上記のスクラバー装置のほか、ゼオライトやRO膜が有効とされている。だが、関電工はこうした放射能汚染防止技術の採用について、検討さえしようとしなかった。

【被告の答弁】
 認否の必要性を認めない。
 本訴訟は補助金交付決定の違法性を争うものであるところ,事業主体の出資者の社是や環境方針との不一致は,これ自体,同決定の違法性を根拠づけるものではないため,主張自体失当である。


(5)安全な間伐材を県内から安定的に調達することは不可能であること
 事業主体である関電工は、当初のうち群馬県内の間伐材を100%使用すると言いながら、まもなく、万が一足りなければ、近県の間伐材も入れることを可能性として仄めかす発言に転じている。このように、言っていることが最初に比べ、あれもこれも変わること自体、信用できない。

【被告の答弁】第1段落について
 関電工が事業主体であることは否認し,その余は不知。
 事業主体は前橋バイオマス燃料である。
 また,被告は,関電工による個別的発言について関知するものではない。

 本事業により発電用に使われるチップの年間生産量7万トン、原料である間伐材等の受入量8万4100トンの安定した確保が、事業実現の基本の一つであるが、群馬県内における森林バイオマスの賦存量の実態をみれば、年間間伐材等の受入量8万4100トンもの確保は到底現実的ではない。

【被告の答弁】第2段落について
 否認ないし争う。


 このため、事業主体は上述のとおり、群馬県以外の周辺の栃木県、長野県、埼玉県等から必要に応じて間伐材等を調達する必要があると認識しているのである。そうなると、福島県の製材所で保管されていた大量の放射能汚染木くず・バーク(樹皮)チップなどの特定廃棄物相当の産廃が、東電から依頼を受けた元官僚で自称コンサルタントの男により、福島県外に持ち出され、滋賀県の琵琶湖西岸に不法投棄された放射能汚染木くず・バークチップが、群馬県民のしらないうちに前橋市内の産廃中間処理業者の破砕施設に持ち込まれ、他の廃材等と眞挫合わされて、オガクズとして群馬県内外に販売された事件と同様な手口で、群馬県外から大量の危険な放射能汚染廃材等が持ち込まれる可能性が極めて高くなる。
 とりわけ、関電工は、絶対安全だとしていた福島第1原発の重大事故の責任を取らないまま、多額の税金を政府につぎ込ませても平然としている東京電力のグループ会社である。本事業が、東電の思惑で立案されたことは、こうした背景から容易に想像できる。
 もし、本事業に補助金が交付されると、東電の除染責任を我々の税金で尻拭いされることになる。東電の息のかかった関電工は、本事業へのこの補助金がないと、事業がなりたたないとしているが、そのような不採算事業を強引に推進する背景には、東電の思惑が見え隠れしているのである。つまり、発電という名の「壮大な除染事業」である。

【被告の答弁】第3段落乃至第5段落について
 原告らの本事業に対する評価や原告らの推測する事業主体らの主観については不知,その余は否認ないし争う


 群馬県は、群馬県森林・林業基本計画を中間年である平成27年3月に改定し、初めて皆伐という文言を明示し、その規模を、東京ドーム64個分の面積の森林の皆伐計画とした。つまり、燃やすことありきの皆伐計画であり、明らかに前橋バイオマス燃料及び発電のためだけの森林伐採である。このことを見ても、今回の事業で被告が事業のために用意しようとしている間伐材は森林を破壊しない限り、確保できないことを物語っている。

【被告の答弁】第6段落について
 否認ないし争う。


 本来の木質バイオマス発電は、間伐材のカスケード利用のはずである。つまり、木材から得られる産物はきわめて多様であり、見栄えのする建築部材や家具材を筆頭に、見えないところに使われる各種の構造用材があり、紙パルプやボード類の製造に使われる低質材、そして最後に燃料用の木質バイオマスがあるべきである。木材の使い方として理想的なのは、良いものから順々に取っていって、最後まで余すことなく使い尽すことが本来の形である。こうした使い方が木材の「カスケード利用」であり、このことにより、本事業に関係する全ての人が、また地域住民までがその恩恵を受けられることになる。木質バイオマス発電事業の理念は、地域住民にとって裨益をもたらすものでなければならないはずである。しかし、前橋バイオマス燃料や発電は、燃やしてしまうだけの間伐なので、その恩恵を受ける地域住民は殆どいないに等しい。

【被告の答弁】第7段落について
 前橋バイオマス燃料及び同発電の恩恵を受ける地域住民は殆どいないに等しいことは否認ないし争い,その余は認める。


 群馬県の誇る安心・安全な生活環境、営農環境、自然環境を厳守し、次世代に引き継ぐためにも本事業を助長する補助金の交付は、県民への裏切り行為であり、直ちに停止しならない。

【被告の答弁】第8段落について
 否認ないし争う。


(6)事業主体の信頼性に瑕疵があること
 群馬県に提出された事業計画を情報公開で入手したが、近隣住民への説明経過によると、甲第8号証により、「反対者ゼロ」などと事実と全くかけ離れた文言が続き、虚偽の記載をし、不正に補助金の支給を受けようとしている。

【被告の答弁】第1段落について
 近隣住民への説明経過(甲8)の中に「反対意見は無し」と記載された箇所があることは認め,その余は不知。


 また、同資料によると、「間伐材を乾燥させるのに9ヶ月を要するので、補助金交付を早めることが必要だ」などとする虚偽の記載がある。実際には、本事業における乾燥期間として2~3ヶ月程度が想定されているのである。しかも、計画には、自然乾燥ではなく、巨大なプレス機による強制乾燥方式で、これを使用すれば乾燥時間は殆どいらなくなるからである。仮に、このことについて群馬県が知っていたとすると、明らかに官業癒着のデキレースにもとづき、被告の代表者である大澤知事は査定したことになる。他方、被告がこのことについて知らなかったとするならば、関電工やトーセンら事業者による詐欺に近い虚偽である。

【被告の答弁】第2段落について
 否認ないし争う。


 さらに、『森林整備加速化・林業再生基金事業実施要領』には、第2の事業計画等の中の6で、都道府県知事は、全体事業計画及び年度事業計画を作成するに当たっては森林・林業基本法(昭和39年法律第161号)第11条第1項の規定に基づく森林・林業基本計画、森林法(昭和26年法律第249号)第4条に定める全国森林計画、同法第4条第5項に定める森林整備保全事業計画、同法第5条に定める地域森林計画、同法第10条の5に定める関係市町村の市町村森林整備計画、林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通等に関する暫定措置法(昭和54年法律第51号)第2条の2第2項の規定に基づく林業経営基盤の強化並びに木材の生産及び流通の合理化に関する事項についての基本構想、木材の安定供給の確保に関する特別措置法(平成18年法律第47号)第4条第3項の規定に基づく木材安定供給確保事業に関する計画、林業労働力の確保の促進に関する法律(平成8年法律第45号)第4条第1項の規定に基づく林業労働力の確保の促進に関する基本計画、関係する流域において策定されている流域林業活性化実施計画及び地域振興に関する基本的な計画又は方針との調和を図るとともに、関係行政機関、民間非営利団体及び地域住民等との必要な調整を図るものとする。と明記されているが、群馬県知事は全くその責任を果たしておらず、実施してはならないのではないか。早急に調査し、指導すべきである。
 また、第5の基金事業の実施の中で、「3 都道府県知事等及び事業主体は、地域の実情に鑑み、過剰と見られるような施設等の整備を排除する等、徹底した事業費の低減に努めるものとする」と明記されているが、これも本事業の実態を反映していない。例えば、関電工やトーセンらが出資する前橋バイオマス燃料は「世界初」を標榜する木質チップの乾燥期間短縮方法の導入を計画している。これはチップの乾燥のためにトーセンが世界に先駆けて開発したという大型プレス機による脱水設備であるが、この設備調達のための補助金が交付されるというのである。再生エネルギーの一環として位置づけられるバイオマス発電においては、できるかぎり自然エネルギーによるシステムの構築が優先されなければならない。そのため、世界的にみてもバイオマス燃料は自然乾燥による乾燥方式となっている。油圧プレスの稼働のために使用されるエネルギーとして、隣接するバイオマス発電施設で作られる電気の一部が無駄に費消されることは、バイオマス発電本来の理念から逸脱するものである。しかも、木質チップ中の水分を強制的に減少させる脱水設備はわが国ではまだ実績がない。こうした実績のない新規開発製品へ高額な補助金を野放図に交付することは地方自治法に定めた最小の費用で最大の効果を定めたルールに違反しており、脱水設備への交付は、即刻中止すべきである。

【被告の答弁】
第3段落及び第4段落について
 『森林整備加速化・林業再生基金事業実施要領』の引用部分については認め,その余は否認ないし争う。


(7)放射能汚染対策に重大な不備があること
 放射能対策が全く盛り込まれていないことは明らかである。放射能汚染物質対策の不備による放射性物質の流出が懸念される理由と、関連する施設の場所・工程を次の①~④に示す。
 ①事業主体の関電工は、地元説明会での配布資料(甲第9号証)では「間伐等を受入する際、トラックスケールで検査する」としているが、メーカーは技術面から「管理基準値(40ベクレル/㎏)は、到底できない」と発言している。その時のやり取りを次に示す。
(質問)走行しながらの測定ということで、トラック全体の総ベクレルが370kBqということではなく、ある一定の塊の線源が370kBq以上ないと測定不可能という解釈でよろしいでしょうか。
(回答)その通りです。【回答者:株式会社テック・デル高畑】
また、関電工自身も、3月26日の話し合いや3月27日の説明会の場で、住民からの質問に対して「できない」と答えている。したがって、放射能のかなり高い間伐材が持ち込まれても、その実態について全く把握できないということになり、それによる危害は甚大である。
つまり、その約1万分の一である40ベクレル/㎏など測定できるはずもない。
 ②貯木スペースは間伐材の乾燥のため野天に保管されるが、風等により放射性物質の敷地外への拡散防止策が講じられていない。また、雨等による放射性物質の排水口や敷地外への流出対策が講じられていない。
 ③チップ加工時の放射性物質の空気中への拡散防止策が講じられていない。
 ④チップの脱水時の排液を、放射性物質を未処理のまま地下浸透させてしまうことになり、関東平野の地下水資源に対する重大な脅威となる。
 以上のことより、近隣住民の生活保全環境はもとより、田畑への営農環境、河川への自然環境への放射性物質の流入による重大な環境破壊の危険性はかなりの確率で高くなることは必至である。

【被告の答弁】否認ないし争う。

(8)本事業主体の運営・技術面に係るレベルと実績等がお粗末であること
 事業主体のひとつである㈱トーセンは数年前に、製材工場で山火事を起こし、体育館などを全焼させた。にもかかわらず、今だに火災の原因は不明とされ、何の対策もとられていない。このままでは、本事業が行われる赤城山での山火事発生の危険性が大いに想定されるため、周辺住民の静観環境や財産保全に対して脅威となる。以下、㈱トーセンのホームページからの火災発生に関する記事を引用する。
トーセンのホームページのURL:
http://www.tohsen.net/news_topicsn.php?num=62&yr=2013
那珂川工場火災のお詫びとお礼
平成25年9月28日(土)午後10:00、県北木材協同組合 那珂川工場におきまして、火災が発生致しました。関係各位、地域住民の皆様には、多大なご心配、ご迷惑をお掛けいたしました。この場をお借りしまして、お詫びとご協力のお礼を申し上げます。
なお、旧体育館(加工棟)の全焼という事態となりましたが、地元消防団、消防署、行政の皆様のご協力により、消火は完了し、那珂川工場内の他の設備、隣接の発電施設建設地への影響はないことをご報告致します。

 これまで関係機関に再三火事の対策を訴えてきたが、ついに、群馬県において、平成28年12月14日の午前6時に近隣住民が出火していることを発見し、119番通報し、事務所と作業棟を全焼させてしまった(甲第35号証)。

【被告の答弁】
 株式会社卜-センが事業主体であることは否認し,その余は認否の必要性を認めない。


(9)環境アセスメントを実施しないまま計画を脱法的に進めようとしていること
 本事業では、年間8万トンの木質チップを発電用燃料として製造する計画だが、それを全量発電施設で使用した場合の排ガス量について、きちんとした計算手順と結果について、被告群馬県からも事業主体からも全く説明がなされていない。被告群馬県は当該木質バイオマス発電所の制度設計前の平成27年3月に総排気量が4万ⅿ³/hr以上あるかどうかの詳細審査を実施せず関電工に環境アセスメント対象外として事業者に通告しており、本事業は法令違反であることが明白である。その癒着の実態と根拠を原告らの見解とともに、以下に示す。

平成27年1月 群馬県と環境アセスメントの実施の必要性について協議を開始
 ⇒【原告らの見解】群馬県環境影響評価条例によれば協議の必要性はないのに、なぜ関電工は協議を求め、群馬県はそれに応じたのか?群馬県は、終始一貫して、環境アセスメントの実施の判断は、事業者に委ねられていると言っているが、だとしたら、なぜ、群馬県環境影響評価条例の運用を変更する必要があったのだろうか?
 平成27年3月 群馬県より環境アセスメント実施は不要との回答あり
  ⇒【原告らの見解】なぜ、結論が出るのに2ヶ月かかったのか。何が協議されたのか。また、実施前に、関電工だけが運用の変更を知らされるのは、違反行為である
平成27年3月31日決裁 群馬県環境影響評価条例の運用を変更し、木質バイオマスの排ガス量の計算を2割減とした(実施は同年4月1日)。
⇒【原告らの見解】しかし、本当に起案及び決裁日時に相違はないのか極めて疑問である。なぜならその後、次の経緯をたどっているからである。
 平成28年4月22日 原告小川賢が被告に対して、被告の主張する「環境アセスメントをしなくてもよい」という根拠を確かめるべく情報公開を求める
同年5月8日 被告から原告小川に不存在処分決定通知が発出される
同年9月13日 原告羽鳥昌行がこの件で別途、あらためて情報公開を求める
同年10月4日 被告から原告羽鳥に情報開示決定通知が発出される
 ⇒【原告らの見解】なぜ不存在だった書類が公開されたのか?・・・それは、同年5月8日以降、平成27年3月30日起案、同月31日決裁の書類をでっち上げた可能性が高いからだ。したがって、平成27年3月に関電工に対し、環境アセスメントの実施をしなくても良いという根拠は何もないということになる。
同年10月14日 原告羽鳥が被告に対して、同10月4日に情報公開された上記情報の電子文書に係る情報公開を求める
同年10月28日 被告から原告羽鳥に情報開示決定通知が発出される
 ⇒【原告らの見解】同年10月4日に公開された文書と、今回公開された文書は明らかに違う文書であり、同じ文書が2通あること自体が有り得ないことであり、しかも、作成日や印刷日が人為的に偽造されている。なぜ、被告群馬県は、ここまでしなければならないのか、それは、作成年月日を隠すためであり、関電工への環境アセスメントの実施をしなくてもよいという根拠を隠すためだけとしか想像できない。
なお、上記の一連の原告らによる情報開示請求に対して被告の不誠実な対応については、原告らは別途法的対応措置をとることにしている。

【被告の答弁】否認ないし争う。
(6)第10段落(12頁)について
  否認ないし争う。


 以上のさまざまな観点から、現在のところ森林内に隔離されている放射能汚染物質だが、本事業が実施されれば、これらの危険物質が人家の近くに大量に持ち込まれることになる。しかも焼却をすることにより、さらに放射線レベルが高くなり、一層危険度が増すことになる。この結果、放射能汚染の拡散と高レベルの放射能物質発生を招くという脅威に群馬県民がひろく晒されるのである。このため、憲法に定める多数の住民の生存権が脅かされているのであるから、被告知事大澤には、本事業に対する補助金の交付による財政支出を停止する措置をとる義務がある。

【被告の答弁】第10段落(12頁)について
 否認ないし争う。


              証 拠 方 法

甲第1号証 群馬県職員措置請求書
甲第2号証 (事実証明書1)平成27年度9月補正予算検討案(知事査定)
甲第3号証 (事実証明書2)㈱前橋バイオマスの履歴事項全部証明書(平成27年9月27日以前)
甲第4号証 (事実証明書3)㈱前橋バイオマスの定款(平成27年9月27日以前)
甲第5号証 (事実証明書4)㈱前橋バイオマス燃料の履歴全部証明書(平成27年9月28日以降)
甲第6号証 (事実証明書5)㈱前橋バイオマス発電の履歴全部証明書
甲第7号証 (事実証明書6)前橋バイオマス発電の定款
甲第8号証 (事実証明書7)近隣住民への説明経過(林業振興課 開示資料)
甲第9号証 (事実証明書8)地元説明会で関電工が配布した説明資料の一部「環境対策(放射能測定)」
甲第10号証 (事実証明書9)その他、事業主体の説明不足やルール違反の経緯等を示す証拠
甲第11号証 (事実証明書21)渋川森林事務所「平成27年度(繰越)群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業補助金の内報について」
甲第12号証 (事実証明書22)渋川森林事務所「平成27年度(繰越)群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業実施設計書について」
甲第13号証 (事実証明書23)渋川森林事務所「平成27年度(繰越)群馬県林業・木材 産業再生緊急対策事業補助金の内示について」
甲第14号証 群馬県職員措置請求書の補正書
甲第15号証 (事実証明書24)平成27年後(繰越)群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業補助金交付申請書
甲第16号証 (事実証明書25)平成27年度(繰越)群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業補助金の交付決定について(通知)
甲第17号証 陳述用原稿及び追加の証拠
甲第18号証 (事実証明書10)甲状腺がん異常多発津田論文と国際環境疫学会の書簡の意義
甲第19号証 (事実証明書11)明白な甲状腺がん異常多発と健康障害の進行
甲第20号証 (事実証明書12)小規模な木質バイオマス発電の推進について
甲第21号証 (事実証明書13)群馬県森林・林業基本計画
甲第22号証 (事実証明書14)森林整備加速化・林業再生事業費補助金等交付要綱
甲第23号証 (事実証明書15)森林整備加速化・林業再生事業実施要項
甲第24号証 (事実証明書16)森林整備加速化・林業再生基金事業実施要領
甲第25号証 (事実証明書17)前橋木質バイオマス発電事業計画について
甲第26号証 (事実証明書18)平成27年12月の関電工による説明会における説明用の提示資料
甲第27号証 (事実証明書19)群馬県とのメールのやりとりの綴り
甲第28号証 (事実証明書20)平成28年3月31日の環境政策課とのヒヤリングメモ
甲第29号証 (事実証明書26)平成27年3月30日付起案、翌31日飯塚幸生課長決裁の環境政策課内部文書
甲第30号証 (事実証明書27)平成28年5月22日付の公文書不存在決定通知書0
甲第31号証 (事実証明書28)林野庁・再生可能エネルギーを活用した地域活性化の手引き
甲第32号証 (事実証明書29)第3回信州しおじり木質バイオマス推進協議会・発電部会 調査結果報告(抜粋)
甲第33号証 (事実証明書30)関電工の平成28年3月期決算短信(抜粋)
甲第34号証 監査結果通知
甲第35号証 群馬県藤岡市にあるトーセンの木材工場で平成28年12月14日午前6時に発生した全焼火災を報じた上毛新聞記事
**********

■上記のとおり、群馬県は、我々県民の安全、安心な生活環境と暮らしを守る義務を完全に放棄し、群馬県のシンボルでもある赤城山のふもとに、さらなる放射能汚染施設を当選グループに作らせて、その安全担保責任を放棄していることが分かります。

 こうして、ようやく出直し裁判の第1回口頭弁論が2017年3月15日(水)午前10時30分に開催されることになりました。地裁が配慮してくれたように、前橋バイオマス発電施設を巡る群馬県環境影響評価条例に定めた排ガス量がこの東電グループの亡国事業にルール通りに適用されているかどうかを確認するための公文書が不存在とされた事件(平成28年(ワ)第24号 公文書不存在決定処分取消請求事件)とちょうど同じ日時のタイミングです。

 ぜひ県民の皆様には都合をつけて、来週3月15日(金)午前10時30分の10分ほど前に、前橋地裁本館2階の21号法廷の傍聴席においでいただきたいと存じます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告とお願い】

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