■政府は2017年3月21日の閣議で、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を決定し、国会に提出しました。この改正案はテロなどの犯行を計画し、メンバーが現場の下見などの準備行為を行った段階で処罰できるようにするもので。過去には「共謀罪」の名称で3回も国会で廃案になっております。
**********ロイター 2017年3月21日22:51 JST
「共謀罪」法案、国会提出
↑「共謀罪」法案、国会提出↑
政府は21日、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を閣議決定し、衆院に提出した。2020年東京五輪・パラリンピックを見据えた「テロ対策」を掲げ、今国会の会期末(6月18日)までの成立を目指す。野党は捜査機関による乱用の危険があるとして対決姿勢を強めており、国会での激しい攻防は必至だ。
菅義偉官房長官は21日の記者会見で「テロを含む組織犯罪を未然に防止するための万全の態勢を整えることが必要だ」と改正案の意義を強調。民進党の大串博志政調会長は「権力の乱用の可能性を排除できない。徹底的に議論して廃案に追い込む」と述べた。
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この「テロ等準備罪」は、正式には「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画」が罪名です。対象犯罪は当初676でしたが、「多すぎる」との公明党の意見を踏まえ、組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される277に絞ったとされています。しかし、この法案成立に血道をあげている政府の対応を目の当たりにすればするほど、政府および捜査機関による恣意的な運用の懸念が高まります。
市民オンブズマン群馬としては、会員から先月2月19日の例会に共謀罪反対声明の動議がありました。その後、政府によるこの改正法案の審査の推移を見てきましたが、やはりオンブズマン活動への脅威となるこの改正法案には反対の意思を示すことが大切だということになり、3月19日の例会で参加者全員の満場一致の意見で、声明文を金田勝年・法務大臣あてに提出することが、当会の方針として決定されました。
そして本日、3月21日に次の内容の声明文を法務相に提出しました。
*****反対声明文*****PDF ⇒ 170321do.pdf
テロ等準備罪(共謀罪)反対声明
政府は、過去に3度廃案とされた共謀罪と同じ趣旨のテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案を3月21日に国会提出しました。その理由について政府は、国際組織犯罪防止条約(国連越境組織犯罪防止条約・TOC条約)の批准のためにテロ等準備罪(共謀罪)の新設が不可欠であり、2020年の東京五輪のテロ対策として必要であると、再三にわたり説明してきました。
しかし、TOC条約は本来マフィアなど国際的な組織犯罪の抑止が目的でテロ対策ではないこと、また、対象犯罪に越境性の条件がないことも理由としており、政府の思惑とは全く矛盾しています。そして何より既にテロ防止関連13条約を締結し国内法も整備されています。共謀罪の新設なしでTOC条約の締結が可能であることは、多くの法律家や刑法学者らが指摘しています。
日本の刑法では既遂犯を処罰することを原則としています。例外として殺人予備罪、爆発物取締罰則、破壊活動防止法などの重大犯罪に限っては、既遂の以前の準備(予備)、共謀(陰謀)の段階で処罰対象です。
こうした現況を一変させて、幅広く一般犯罪の話合い段階で処罰する共謀罪を新設することは、刑法体系の整合性を欠くことになりかねません。政府はこれまでにも、特定秘密保護法(2014年12月10日施行)、安保法制(2016年3月29日施行)、そして今年2017年2月6日に金田法相の指示で法務省が報道機関に配布した本法案に係る「国会提出後に法務委員会で議論すべき」とする立法府言論軽視文書の配布など、立憲主義や三権分立といった最高法規の日本国憲法が定めるルールを蔑ろにする暴挙をおこなっており、我々オンブズマンとして安倍政権の乱暴な政治手法について、大変憂慮しています。
とりわけ今回の共謀罪に関する政府説明では、「テロ等準備罪」の「等」が何をさすのか、対象となる「組織的犯罪集団」の定義、共謀「合意」の判断、「準備行為」の要件、それらすべてが曖昧です。これではテロと無縁な政治運動をはじめ、労働運動、平和・人権運動等を推進する健全な団体まで対象が及ぶ懸念を払拭することは困難です。
このことは、権力を監視し横暴や暴走に警鐘を鳴らすことを活動目的に掲げるオンブズマンや市民社会にとって重大な脅威となります。さらに我が国の市民社会が保持している健全な意識を歪め、公正で民主的な社会発展を阻害しかねない事態の発生が憂慮されます。
そして何よりも、幅広く話合うことさえも犯罪対象としてしまう共謀罪は、日本国憲法が保障する思想信条の自由、幸福追求、言論・表現や結社の自由など、現在と未来の国民に付与された基本的人権を、著しく侵害する怖れが濃厚です。プライバシー保護を差し置いて、通信傍受(盗聴)など将来の捜査手法の拡大を否定しない現状では、なおのこと権力濫用が危惧されるため、とうてい看過できません。
以上により、本会は共謀罪を新設する法案に断固反対します。
2017年3月21日
市民オンブズマン群馬 代表 小川 賢
会 員 一 同
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【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
**********ロイター 2017年3月21日22:51 JST
「共謀罪」法案、国会提出
↑「共謀罪」法案、国会提出↑
政府は21日、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を閣議決定し、衆院に提出した。2020年東京五輪・パラリンピックを見据えた「テロ対策」を掲げ、今国会の会期末(6月18日)までの成立を目指す。野党は捜査機関による乱用の危険があるとして対決姿勢を強めており、国会での激しい攻防は必至だ。
菅義偉官房長官は21日の記者会見で「テロを含む組織犯罪を未然に防止するための万全の態勢を整えることが必要だ」と改正案の意義を強調。民進党の大串博志政調会長は「権力の乱用の可能性を排除できない。徹底的に議論して廃案に追い込む」と述べた。
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この「テロ等準備罪」は、正式には「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画」が罪名です。対象犯罪は当初676でしたが、「多すぎる」との公明党の意見を踏まえ、組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される277に絞ったとされています。しかし、この法案成立に血道をあげている政府の対応を目の当たりにすればするほど、政府および捜査機関による恣意的な運用の懸念が高まります。
市民オンブズマン群馬としては、会員から先月2月19日の例会に共謀罪反対声明の動議がありました。その後、政府によるこの改正法案の審査の推移を見てきましたが、やはりオンブズマン活動への脅威となるこの改正法案には反対の意思を示すことが大切だということになり、3月19日の例会で参加者全員の満場一致の意見で、声明文を金田勝年・法務大臣あてに提出することが、当会の方針として決定されました。
そして本日、3月21日に次の内容の声明文を法務相に提出しました。
*****反対声明文*****PDF ⇒ 170321do.pdf
テロ等準備罪(共謀罪)反対声明
政府は、過去に3度廃案とされた共謀罪と同じ趣旨のテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案を3月21日に国会提出しました。その理由について政府は、国際組織犯罪防止条約(国連越境組織犯罪防止条約・TOC条約)の批准のためにテロ等準備罪(共謀罪)の新設が不可欠であり、2020年の東京五輪のテロ対策として必要であると、再三にわたり説明してきました。
しかし、TOC条約は本来マフィアなど国際的な組織犯罪の抑止が目的でテロ対策ではないこと、また、対象犯罪に越境性の条件がないことも理由としており、政府の思惑とは全く矛盾しています。そして何より既にテロ防止関連13条約を締結し国内法も整備されています。共謀罪の新設なしでTOC条約の締結が可能であることは、多くの法律家や刑法学者らが指摘しています。
日本の刑法では既遂犯を処罰することを原則としています。例外として殺人予備罪、爆発物取締罰則、破壊活動防止法などの重大犯罪に限っては、既遂の以前の準備(予備)、共謀(陰謀)の段階で処罰対象です。
こうした現況を一変させて、幅広く一般犯罪の話合い段階で処罰する共謀罪を新設することは、刑法体系の整合性を欠くことになりかねません。政府はこれまでにも、特定秘密保護法(2014年12月10日施行)、安保法制(2016年3月29日施行)、そして今年2017年2月6日に金田法相の指示で法務省が報道機関に配布した本法案に係る「国会提出後に法務委員会で議論すべき」とする立法府言論軽視文書の配布など、立憲主義や三権分立といった最高法規の日本国憲法が定めるルールを蔑ろにする暴挙をおこなっており、我々オンブズマンとして安倍政権の乱暴な政治手法について、大変憂慮しています。
とりわけ今回の共謀罪に関する政府説明では、「テロ等準備罪」の「等」が何をさすのか、対象となる「組織的犯罪集団」の定義、共謀「合意」の判断、「準備行為」の要件、それらすべてが曖昧です。これではテロと無縁な政治運動をはじめ、労働運動、平和・人権運動等を推進する健全な団体まで対象が及ぶ懸念を払拭することは困難です。
このことは、権力を監視し横暴や暴走に警鐘を鳴らすことを活動目的に掲げるオンブズマンや市民社会にとって重大な脅威となります。さらに我が国の市民社会が保持している健全な意識を歪め、公正で民主的な社会発展を阻害しかねない事態の発生が憂慮されます。
そして何よりも、幅広く話合うことさえも犯罪対象としてしまう共謀罪は、日本国憲法が保障する思想信条の自由、幸福追求、言論・表現や結社の自由など、現在と未来の国民に付与された基本的人権を、著しく侵害する怖れが濃厚です。プライバシー保護を差し置いて、通信傍受(盗聴)など将来の捜査手法の拡大を否定しない現状では、なおのこと権力濫用が危惧されるため、とうてい看過できません。
以上により、本会は共謀罪を新設する法案に断固反対します。
2017年3月21日
市民オンブズマン群馬 代表 小川 賢
会 員 一 同
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【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】