どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ゴハおじさん2・・エジプト

2025年02月01日 | 昔話(アフリカ)

     ゴハおじさんのゆかいなお話/千葉茂樹・訳/徳間書店/2010年初版

 

・むすこに世の中をおしえるゴハおじさん
 ゴハおじさんのむすこは、他の人が自分をどう思っているか気になってしかたがない。
 そこでおじさんは、ロバに乗って隣の村へ。
 ゴハおじさんがロバに乗って、息子があるいていると、茶店にいた男は、「おい、みろよ、なんて自分勝手なやつなんだ。自分はロバにふんぞりかえっているのに、かわいそうに、息子は歩いているよ」とささやく。
 そこで、今度は自分がロバをおりて、息子をロバにのせていく。こんどは、「あの子はひどいもんだ。おやじを歩かせているぞ。目上の者を敬わないなんて礼儀しらずもいいところだ」。
 つぎに二人がロバにのると、それを見た人が、ロバがかわいそうだという。
こんどは、二人でロバをかついでいくと、おかしな親子と大笑いされる。

 ここでゴハおじさんの教訓。
 全ての人に気に入られるのはそもそも無理。他の人がどう思うかくよくよ考えるのはやめなさい。

 これは他人の目をきにする、われわれにも教訓にとんだ話です。

・ゴハおじさんとくつ

 ゴハおじさんの友だちが、ゴハおじさんをからかってやろうと、家に押しかけ、昼ご飯にまねかれたからきた、とうそをいいました。ゴハおじさんは、まねいたおぼえなどありませんでしたが、そこは人のいいおじさん、みんなをまねきいれ、客間にとおしました。

 そして、おくさんに、昼ご飯を出してほしいと頼みましたが、「食べ物なんか何もない。あなたは、からかわれているのよ。客間で待たせておいたら、まちくたびれて、そのうちかえるでしょう」といわれ、友だちをほうっておくことにしました。

 友だちは、ゴハおじさんをうまくだましたつもりで、声をあげてわらっています。ゴハおじさんは、おかえしのいたずらをすることにしました。友だちの靴をぜんぶかきあつめ、大急ぎで市場にいき、靴をみんな売りとばしてしまい、売ったお金で食べ物を買ってかえりました。おくさんは、その食べ物で、昼ご飯をこしらえました。

 みんな、散々待たされ、おなかがぺこぺこだったので、よく食べること、食べること。ようやく食べ終わったみんなが、かえろうとすると、玄関には靴が一足もありません。みんながゴハおじさんにくってかかると、ゴハおじさんは、すずしい顔で答えました。

 「ああ、靴なら、ぜんぶ、きみらのおなかのなかだよ!」

・水あび

 うだるような暑い日、ゴハおじさんが、川で水遊びをして、もどってみると、土手に置いておいた服がありません。だれかがもっていってしまったのです。

 これにこりたゴハおじさんが、つぎに川遊びをするときは、服を着たままでおよぎました。それをみて、みんなは大笑い。シカシ、ゴハおじさんのいいぶんは・・

 「ぬれた服を自分できているほうがずっとましだよ。かわいた自分の服を、ほかのだれかがきているよりはね」

・ゴハおじさん、おふろ屋さんにいく

 ある日、ゴハおじさんは、おふろ屋さんに、いつものそまつなシャツとズボンででかけました。ゴハおじさんは、これまでいちども公衆浴場にいったことがありませんでした。

 おふろ屋さんの世話係の人は、ゴハおじさんのことを馬鹿にしたような目でみて、ちっぽけなせっけんと、ちいさなぼろぼろのタオルしかくれません。ふろあがりによくよく見ると、ほかの客は大きなふわふわのタオルにくるまって、ハチミツやナッツのたっぷりかかったケーキやお茶をもらっています。もらっていないのは、ゴハおじさんだけ。おもしろくなかったゴハおじさんでしたが、かえるとき世話係に金貨一枚づつチップとしてわたしました。

 つぎの週、ゴハおじさんがやってくると、世話係の人たちは、たくさんのチップを期待してうんと、もてなしました。いい香りのするせっけん、清潔でまっしろなタオルをわたしました。ふろあがりには、あついお茶と、お皿いっぱいのおいしいケーキも もってきました。

 ところが、ゴハおじさんが、かえるとき、やすい銅貨を世話係にわたしました。あてがはずれた世話係の人に、ゴハおじさんはいいました。

 「いいかね、その銅貨は、この前のひどいあつかいをしたときのぶんだよ。あのときあげた金貨は、きょうのすばらしいもてなしの分だ。まあ、人を見た目できめつけないことだな。」

 

 国がちがえば、おふろ屋さんも いろいろです。

・クマ狩りにいったゴハおじさん

 ゴハおじさんは、狩りが大嫌い。しかしえらい領主さまにさそわれて、いやいや おともしていきました。

 まる一日中領主さまのおともをして、クマ狩りをしたゴハおじさんでしたが、家にもどる途中、友だちに会ってこたえました。

 「クマ狩りはどうだった?」
 「ああ、うまくいったよ」
 「山ではクマを何頭、おいかけたんだい?」
 「一頭も」
 「じゃあ、クマを何頭、しとめたんだい?」
 「一頭も」
 「それなら、クマを何頭見たんだい?」
 「一頭も」
 「おいおい、クマを一頭も見ないで、どうして、うまくいったなんていうんだ?」
 「いいかね、クマ狩りっていうのは、クマなんぞ、一頭も見かけないのがいちばんなんだよ」

 

 ゴハおじさんは殺生がだいきらいのようです。